02 異世界サバイバル
改稿版
うっすらと意識はあった。
地面に触れている体に、冷たさが伝わる。
少しずつ視界が開ける。
(意識はある。だが、まだ体が動かない。)
悠弥は意識を取り戻した。感覚的に体が存在する事は確認できたが、まだ動かすことはできない。
彼はゆっくりと体の各部位を動かそうと努力し、少しずつ手足が動くようになってきた。
(もう少しだ。まだ動かしづらい。)
そうこうしているうちに、慣れてきたのか体は感覚を取り戻す。
(マジか、、、)
開いた目に飛び込んできたのは、緑深い森だった。
「どうして、異世界ものって、転生場所とかを安全な場所にしないのかね。」
彼は服についた埃を払いながら、愚痴を言う。
(さて、文句ばっかり言っても仕方ない。まずは現状確認からだな。)
「ステータス、、、」
何も出なかった。
「異世界の定番じゃないのかよ。魔法とかないのか?」
彼は鑑定やら、魔法やらと色々と試したが、ステータスが表示される事もなく、魔法も発現しなかった。
「どうやって、その恩恵が出るんだよ。」
時間を無駄に浪費していると、近くの茂みから、音が聞こえる。
「!?」
(モンスターか?なんだ?)
警戒していると、頭の中に単語が浮かんでくる。
『気配察知』
☆生物の気配を察知できる。種別は認識不可。
『危険察知』
☆本人に向けられる殺気や少し先の危機を感じ取る。
(気配察知に、危険察知?なんだこりゃ?)
その情報が頭に流れ込み、理解できる。さらに続けて、『脳内辞書』という単語が浮かぶ。
『脳内辞書』
☆前世と異世界の知識を閲覧可能。ただし、既知の情報のみ閲覧できる。
(このスキルのおかげか、便利なスキルだ。このこのピリピリした感覚が危険察知か。)
そのスキルのおかげで、おおまかな位置と敵意が感じられた。
(敵意むき出しだな。どうする、、、何かないのか?)
『魔法創造』
☆イメージした現象を現実に具現化させる。ただし、理解出来ていない現象は具現化できない。
『全魔法適性』
☆魔法の威力を上昇させる。
彼の脳裏に思い浮かぶ。
(魔法きた!イメージで魔法を作り出せるのか、ぶっつけ本番か)
彼は頭の中で炎の魔法をイメージすると、頭上に魔法陣が形成される。
(いける!)
魔法陣から、放射状に炎の弾が飛び出し、気配へと飛んで行った。
「キャイン!」
犬に似た鳴き声が聞こえ、気配が消えた。
悠弥が恐る恐る茂みを覗くと、そこには灰色の獣が焦げて倒れていた。
『灰色狼』
☆肉食。獰猛。群れで狩りをする狼型モンスター。
牙と爪、毛皮は素材になる。
食用可。美味しくない。
「見つめると詳細が分かるのか。便利だけど、もっと何とかならねぇか。」
彼は考えた。
「あれ、なんだっけ、、、ヘッドアップディスプレイ!そうだ。魔法創造でできないか。」
しばらく試行錯誤するうちに、頭に『HUD』と浮かんできた。
さっきのグレイハウンドを見ると、視覚的に情報が表示される。
「できた。魔法創造すげぇな。」
その後、HUDに項目を追加していく。
「時間、、、いけるのか。温度は無理か。方角、、、も無理。時間だけかぁ。これは体感の時間だよなぁ。」
魔法を習得できた悠弥だったが、生き残るためのサバイバルが終わったわけではない。
サバイバルの基本は水、食料、安全の確保だ。
「まずは水、次に食料か。」
どこかの漫画で見た知識で、水が最優先である事は分かっていたが、キャンプ程度の知識しか持たない彼にそれを探す手段は無かった。
木の幹に石で印をつけながら、さまよう悠弥。
「ここは、さっきも通ったか、、、」
地図も何もない、方角も分からない。
(考えが甘かった。森だから、すぐに食料とか見つかると思ってたけど、こんなに何もないのか。)
数時間彷徨い、体力的にも精神的にも疲労の蓄積が彼を追い詰めている。
「せめて、水、、、」
思考も回らない。辺りは夕暮れを迎え、歩く気力でさえ、底を尽きようとしている。
もう無理だと、木の根元に大きな空洞を見つけ、休憩を取る。
(疲れた。日本でもこんなに歩いたことなかったかもな。)
もう思考は回らなかった。眠気も襲ってくる。
(ここ、安全かな。いや、眠い、、、腹減った、、、)
HUD:
『清浄なる木』
☆モンスターが嫌う成分を放出している。とても堅い。加工が難しい。食用不可。
(もういいって、、、)
彼は眠りについた。
「!?」
彼は飛び起きた。HUDは8時を表示している。
「寝てたのか、、、」
背中から冷や汗が出る。
「運が良かっただけだ。油断するな。ここは異世界だぞ。森の中だぞ。」
自分を戒めるように何度もつぶやく。
「何か食いたい。喉が渇いた。」
それでも腹は減る。
彼は昨夜の事を思い出す。
「そういえば、何か表示されたな。」
じっと一点を見つめた。
HUD:
『雑草』
☆この世界で名前のない草。詳細不明
「鑑定?にしては、大雑把な説明だな。」
HUD:
『脳内辞書』
☆前世と異世界の知識を閲覧可能。ただし、既知の情報のみ閲覧できる。
「そういう事か。鑑定じゃなく、図鑑や辞書と同じって事だな。便利なようで、不便だな。」
文句を言っても仕方ないと、手あたり次第に草木の詳細を調べる。
「ねぇ、、、食料も水も見つからない。せめて、果物とか水分が多いものがあれば、、、」
1日中探し回ったが、何も見つからない。
うなだれるように木に幹にもたれかかる。
「さすがに3日目は、、、」
少し諦めにも似た感情を抱いた時、
HUD:
『生存戦略』
☆食料・水分が無くてもある程度の期間は、生存可能
耐熱・耐寒・耐毒も含まれる。
生命活動維持のために不要な身体機能を一時的に低下させる。
外部から栄養を摂取することで機能は回復する。
「説明が長いな。水と食料が無くても、ある程度は生きられるって事か。まだ死ぬなってか。これはいよいよだな。」
疲労の限界が来ていた彼は、前回の事も踏まえ、清浄なる木を探し、木の上で眠りにつく。
翌朝、目が覚めるとすぐに彼は行動に移る。
「まずは地図だ。脳内辞書が既知の知識なら、この世界の地図情報も持っているはず。どうすれば、手に入る。」
彼は試行錯誤する。
今は拠点にしている木の幹から見える範囲で探索していたが、もう少し足を延ばしてみたり、地面にこの辺りの地図を書いたりした。
「無理か、、、」
悠弥は焦っていた。しばらくは生存戦略のおかげで大丈夫だろうが、説明を読んだ限り、有限であることは明白だった。
翌日も彼は探索し、地面に地図を描く。
「うまくはいかないもんだ。それとも今の俺には必要ないって事なのか?」
だが、今日は収穫があった。
HUD:
『クズイモの蔓』
☆食用可。この世界で広く流通している根菜の蔓。
根っこ部分が可食部として、広く食べられている。
いわゆる芋である。
「芋!まじか。やっと見つけた。」
異世界に転生して、3日目にようやく食料を見つけた。それからは今までが嘘だったかと思うほど、野菜などが見つかる。その他に縄の代わりになりそうな蔓なども見つける。
「俺の探し方が悪かったんだな。ちゃんと注視しないと、他の物まで鑑定に入ってしまうのか。慣れるしかないんだろうな。」
とりあえず、火魔法で芋に火を通し、ベイクドポテトのようなものを作り、腹の足しにするが、
「やっぱり水が無いと、喉を通りにくいな。」
彼はのどの渇きのせいで、イライラする。
少しの腹ごしらえも済んだので、探索を再開する。
「おっ、これは大木だな。」
蔓の先に石を結び、枝に引っ掛ける。
「よし、これで登れそうだ。」
HUD:
『神樹』
☆悠久とも言える年月を生きた木に与えられる名称。
それ以外は普通の木と大差ない。
枝でさえも人が立てるような木を順調に登っていき、森の木々が邪魔にならない高さまで来た。
「うぉ~。なんだこの景色。」
それはどこまでも広がる森。背中側にはそびえ立つ山脈。
HUD:
『ヘイルズ山脈』
☆神々が住むとされている山々。
強力なモンスターが生息しているため、越えようとする者はほとんどいない。
龍の領域である。
「見なかった事にしよう。それにしても、広いな。」
少し心が癒されるような気分になっていた。
HUD:
『世界地図』
☆地図を表示する。本人が認識すると更新されていく。
「はぁ?もしかして、これが条件か?」
悠弥がマップを思い浮かべると、HUDに地図が表示される。
「良かった。何とかなったか。おっ、川があるな、、、あっちの方角か。こっからじゃ見えないか。距離があるのか。」
木から降りた悠弥は、その方向に歩き出す。
「ここが拠点にしてた大木で、ここがさっき登った木だとすると、この川らしきもんは、、、はぁ、、、」
ため息が出た。地図の縮尺は分からないものの、目測で見ても相当な距離があることが分かる。
だが、水の確保が最優先事項のため、行くしかなかった。
地図の上を北と仮定して、西の方角だった。
ここは異世界。前世の日本のように息をしていれば、平穏無事に生きていける世界ではない。
彼はそれをここ数日で実感していた。
生きるため、生き残るためにはもっと自分の出来る事を増やし、自分を磨き続けるしかない。
悠弥は川に向かうまでの間、自分が獲得したスキルを思い返す。
「自分のステータスとかは、確認できないのか。」
異世界によくあるステータス表示がない事は既に分かっているが、鑑定(仮)でもそれを見る事はできなかった。だが、取得しているスキルの一覧は確認できた。
HUD:
『脳内辞書』
『魔法創造』
『全魔法適性』
『気配察知』
『危険察知』
『世界地図』
『生存戦略』
悠弥は考える。
すでに魔法創造とかいうやばそうなスキルがある時点で、自分の能力はチートなのだろう。
だが、神(仮)が言っていた突出した能力は、こんなものではないという予感はあった。
ただ、そのスキルが必要になる場面でないと取得できないのは、何とも不便であったが、そこは我慢しようと思っている。
「魔法創造って事は”火”だけじゃなくて、他の属性も作れるよな。」
彼は想像する。無数に飛び交う真空の刃を。これは比較的想像しやすかった。漫画やアニメでもよく見る魔法や剣の技だからだ。
悠弥が風の魔法をイメージすると、”ザンッ”と音を立て、周囲の木々が倒れる。
「うぉ!、、、そりゃそうだ。漫画やアニメじゃないんだ。真空の刃が見えるわけないか。ソロだからいいけど、パーティだったら、考えないといけない魔法だな。」
それを何度か繰り返し、分かったことがあった。
「ん~、なんか威力が安定しねぇなぁ。」
そう、魔法を発動する際に、イメージにバラツキがあった。
「イメージは漫画とかアニメが元になってるんだから、言葉でイメージを固定しやすくすれば、、、」
ものは試しだと、必殺技のように言葉にする。
「”風刃”」
何も出なかったっぽい。
「難しいな。”風刃”」
何度か繰り返している内に魔法陣が展開され、”ドンッ”と音が鳴る。木が切れるまではいかなかったが、当たるような音はした。
「もう少しか。魔法陣が展開されると発動するんだな。」
何度も挑戦するとその時は来た。
「”風刃”」
先程までとは違い、綺麗に輝く魔法陣が展開され、ターゲットにしていた木がザンッと切れた。
HUD:
『詠唱魔法』
☆創造した魔法を言語化し、現象を固定化する。速度、威力は変更可能。
異世界の魔法体系ではない。
「これもスキルなのか。この世界の魔法は全てイメージで出すのか?」
剣と魔法の世界と聞いていたが、魔法は重宝されていないのか、まだ発展途上なのか。
その真偽は定かではない。
ただ、脳内辞書がこれを表示したという事は、”無い知識”ではないという事だ。
そして、詠唱魔法が出来たなら、やはりやることは、かっこよく無詠唱だろうと彼は考えている。
”風刃”
HUD:
『無詠唱魔法』
☆詠唱魔法を無詠唱化する。
これは簡単に出来た。やはりスキルだったと、ドヤ顔の悠弥だった。
水場に向かう間に、”炎弾”、”水弾”、”石弾”を創造する。
そうこうしている内に川辺に到着した。
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