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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
18/46

18 ブレイン聖国

 まず最初に向かったのが、ブレイン聖国だ。オリビア、シイカの話と、王立図書館の歴史書に記された勇者召喚を行った国。

 国王は、聖王と名乗り、教会のトップがそのまま国王となる。

 宗教は、ヒシム教。唯一神ヒシムを崇拝する。書物によると、600年前に新興した宗教だ。


 俺たちは、王都に立ち寄り、馬車を調達。ブレイン聖国に向けて、出発した。


「悠弥、ブレインでの注意だが、、、」


「他の宗教を名前は出すな、とかか?」


「そうだ。よく分かってる。さすが、悠弥。」


「大体、宗教がらみは、そうだろう。特に今回は、向こうにゲートを開くための旅だ。面倒は起こしたくない。」


「ここ最近の出来事は、各国の間者は掴んでいると思ったほうがいい。」


「そうだよな。ちょっかいを出してきてないところを見ると、まだ正体までは分かっていないか、想定を超えたせいで、対応に困っているのか。どちらにせよ、バレてると思って、行動する。」


「ですね。今はセルザイン国内なので、派手な動きは見せませんが、相手の土俵となると、少し不安もあります。」


「あれこれ考えても結局、出たとこ勝負になるな。」


 こうして、1か月後、俺たちはブレイン聖国に入国した。


「聖都までは、10日掛かるので、怪しまれないよう、どこかの村か町で、補給を兼ねた休憩を取ろうと考えているのだが、悠弥もそれでいいか?」


「そうだな。もう仮想敵国だからな。」


 入国から4日後、小さな宿場町についた。


「情報では、聞いていましたが、まさかブレイン国内が、これほど荒廃しているとは、思ってもいませんでした。」


 俺たちは、街並みを見て、絶句した。大通りには、浮浪者が両脇を固め、整備もされておらず、建物は崩れ落ちているものも見える。


「嫌な予感しかしねぇな。」


 そんな気持ちを抱えつつ、宿を探した。


「一泊銀貨30枚だ。馬車は、裏の厩舎に止めな。」


「たかっ、、、主人よ。価格を間違ってはいないか?」


「間違ってないよ。それが嫌なら、野宿でも何でもしな。こっちだって、商売なんだ。」


 俺たちは、顔を見合わせる。


「しょうがない、1泊で3部屋頼む。」


「はい、毎度。」


「悠弥、2部屋でいいじゃないか?私たちは夫婦だろ?それとも、私では不服か?」


「お前、その聞き方は卑怯だぜ。2部屋で頼む。」


「はいよ。これがカギだ。」


 俺たちは、部屋に入った。


「一度、家に帰ろうと思ったんだが、、、これは、どうするか、、、」


「悠弥、どうした?」


「たぶん、囲まれてる。この町に入った時から、一定間隔で付いてくる気配があるとは思っていたんだが、戦乙女だけでも返すか。相手がどう出るか分からん。俺とシイカは同じ部屋だから大丈夫だが、戦乙女とあいつらの実力差がはっきりしない以上、リスクは減らすべきだな。」


「分かった。彼女らを呼んでくる。」


 彼女たちを、拠点に戻し、俺とシイカは、常に二人で行動しながら、夜を待った。


-ぎぃぃぃ-


 部屋の扉が開く。


(正面から来るのか)


 暗い部屋の中、俺たちは身構える。


「悠弥様でいらっしゃいますか?」


 その男は言った。殺気はない。


「だったら、なんだ?」


「これは失礼。私は、ブレイン聖国の大司教級貴族コール様より、命を賜り、お迎えにあがった次第でございます。」


 随分と大物が出てきたな。


「用件は何だ?」


「我が主は、あなた様に一度、御目通り願えないかと思っております。どうか、ご一考ください。」


 シイカを見ると、小さく頷いた。


「茶菓子はうまいんだろうな?妻は甘いものには、少々うるさいぞ。」


「ありがとうございます。最上級のものをご用意いたします。では、ご案内いたしますので、ご同行願います。」


「敵じゃないみたいだな。敵意や殺気は感じない。」


 俺はシイカに耳打ちをする。


「私もそう思う。朧気ではあるが、コールと言う名に聞き覚えがある。」


「分かった。行こうか。」


 俺たちは、3日掛けて、貴族が待つ屋敷に到着した。


 応接室と思われる部屋に通される。少しして、その人物は現れた。


「いやぁ、来てもらえて、嬉しいよ。」


 それは20代後半くらいと思われる青年だった。


「僕が、ザイナー家当主のコールだ。よろしく頼むよ。」


 気さくそうな男だ。


「さっそく本題に入りたいんだけど、いいかな?」


「良くないな。」


 約束が違う。


「貴様!ご当主様からのお言葉に、異を唱えるとは、何事か!」


 コールの後ろにいた屈強な男が、声を荒げる。それを見たコールが、”あっ!”という顔見せる。


「よい。彼は、礼儀の話をしている。悠弥殿、これは失礼した。」


 彼は、2回手を叩くと、執事と思われる男が、茶菓子を持ってきた。


「これでお話させてもらえるかな?」


「あぁ、いいお茶だ。これで妻も満足させられる。じゃあ、話を聞こうか?」


 屈強な男は、何か言いたそうだったが、コールが止めていた。


「悠弥殿のお噂は、この国にも届いています。何やら、無知の森にお住まいとか?」


「あぁ、だが、今の話に関係ない話は必要ない。俺とあんたの間には、まだ何も成していない。」


「そうですね。あなたは、権力とか財力とかに興味は無さそうです。では、率直に申し上げると、我々と手を組みませんか?」


「断る。」


 俺は間髪入れずに答えた。


「言い方がまずかった。ザイナー家と手を組んでいただきたい。」


「なぜだ?」


「ここに来られるまでに、町を1つ、この町も含めれば、2つをご覧になったと思います。」


「あぁ、酷い有様だった。」


「今の教皇猊下になってから、この国の経済は下落の一途を辿っています。」


「おいおい、まさかクーデターでも起こそうってんじゃないだろうな?」


「まさか、、、そこまでは考えておりません。ただ、私の憶測ではありますが、悠弥殿は、召喚者とお見受けいたします。今の時代、”魔王討伐”など意味なき事。ならば、その使命は何か?世界の変革ではないかと、愚考した次第です。」


 中々に鋭いが、


「世界を変えようなんて、思っちゃいない。俺は、俺の邪魔をする者を許さないだけだ。」


「でしたら、今のブレイン聖国は、きっと貴方のためにならない事と思います。」


 こういう交渉事は、苦手だ。バルフェルトの時は、自分の力を誇示した上での、ごり押しだったが、そもそも前世でも、人付き合いは得意だったほうじゃない。精一杯やるしかない。


「あんたと組むメリットは?」


「そうですね。現在、セルザインから送られてくる間者を見逃します。これでも私、教会では偉いんですよ。」


「シイカ、どう見る?」


「コール殿、いったん持ち帰ってもよろしいか?」


「どれほどお時間が必要でしょう?」


「1週間ほど。」


「分かりました。では、よいお返事をお待ちしております。」


 俺たちが部屋を出ようとした時、


「悠弥殿、我々はあなたの味方ですが、他の者はそういうわけには参りません。私の教会での信用のために、一芝居打たせていただきます。ご対応お願いします。」


「貸しだ。」


 俺の言葉に、コールは一礼し、俺たちは宿に戻った。


「さて、とりあえず変な事になったが、今からイブリスに向かう前に、ブレイン聖国に絡まれる。シイカは、どうする?」


「私は、悠弥と共に戦う。」


「そうか。戦乙女は、こっちに呼び寄せない方向でいく。シイカも、装備である程度は、強化されているが、油断はするなよ。」


「分かっている。私も、ずっと訓練を続けてきたのだ。その辺の雑兵などにやられるものか。」


 翌日、町の出入り口付近にて、


「そこの男と女、止まれ。」


 行きにはいなかった兵士に止められた。


「なんでしょうか?」


 シイカが対応してくれる。


「悠弥とシイカ・ベントだな?」


「そうですが、何か?」


「枢機卿が、お待ちである。ご同行願おう。」


 出た。教皇じゃなくて、”枢機卿”ね。きな臭くなってきたな。俺が出るべきだな。


「嫌だと言ったら?」


「こちらも手荒な真似はしたくない。速やかに準備せよ。」


「俺は、自由なんだ。別にどこかの臣民でも信徒でもない。枢機卿だか大司教だか知らんが、用があるなら、そっちから来い。」


「貴様!反抗すると言うのか!」


 周囲の兵たちが武器を構える。


「シイカ、何人いける?」


「4人なら。」


「十分だ。残りは任せろ。」


 俺たちは武器を持つ。もちろん、鞘からは抜いていない。


「抵抗する意志を見せたな!捕縛する!かかれ!」


 兵士が一斉に飛び掛かってくる。が、相手にならない。横薙ぎ一閃、ほとんどの兵士をなぎ倒した。

 シイカも4人なら、と言っていた割りに、多くを倒していた。


「4人じゃなかったのか?」


「思っていたより、私は強くなっているようだ。悠弥には、感謝しかない。」


「俺のおかげじゃねぇよ。シイカが頑張った結果だ。」


 俺たちは武器を納め、他の兵士が固まっている中、「じゃぁ、枢機卿によろしく。」と、町の外に出たところで、


「これだけの数を前に、荒野のごとく進みますか。あなたは、魔王か何かなのですか?」


 立派な衣装を身に纏う男が現れた。


「誰だ?」


「申し遅れました。私は、フライスと申します。教会では、司教を務めさせて頂いております。」


「で、その司教さんが何か用か?」


「どうもあなた方には、信仰心が足りていないとお見受けし、私が少し説教をしてさしあげようかと。そうすれば、枢機卿と会う気になっていただけるかと。」


 これだから、やってられない。


「信仰心で、腹は膨れないんでな。他所でやってくれ。」


「なんと、神が悲しんでおられる。これはいけません。」


 HUDが反応する”法力増大”。ん?魔力とは違うのか?


 フライスが、天を仰ぐと、昼間でも分かるほどの光が差し、何かが降りてくる。


「悠弥、まずい。あれは執行者エンフォーサーだ。聖国の司祭以上が使えるスキルだと言われている。」


 天使みたいなもんか?


「で、シイカは勝てる相手か?」


「前の私では、相打ち覚悟なら、、、しかし、あれはスキルだ。やつと相打ちしたとて、また復活する。」


「そうか。シイカと相打ちなら、そこまでか。」


「複雑だが、悠弥なら、ぎりぎり勝てるのではないかと思う。」


 シイカの俺の強さの見立ては、その程度かと、少しがっかりしつつ、


「さぁ、説教を始めましょう!」


 俺は、刀を一振り、居合のように抜いた。


-チンー


 と、刀が鞘に当たる音だけが響いた。


「どうしたのです!執行者よ!奴を拘束するのです。」


 フライスが、それを見た時、真っ二つに割れる。


「バカな!!私の執行者は、ハイクラスですよ?それがこんな、、、」


 またHUDが”法力増大”を表示、執行者が出現するが、俺はそれを無情に斬る。


「そんなバカな!バカな!バカな!こんな事があってはならないのです!」


 俺がフライスに近づくと、「ひぃっ!」と、尻餅をつく。


「あのな、俺は敵対する気はない。ちょっかいさえ掛けなければ、俺たちから何かをする気はない。」


 フライスは、必死にうんうんと頷いた。


「じゃぁ、そういう事だから、俺たちは行くぞ。その枢機卿とやらに、よろしく伝えといてくれ。」


 こうして、俺たちは聖都を経由し、次の国へ旅を続ける。

読んでいただきありがとうございます。


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