15 少しマシな未来へ
改稿版
屋敷についた悠弥一行。
「バカでけぇな。」
「そうですか?我が家はもう少し大きいです。悠弥殿には少し小さい気もするが。」
驚いた悠弥にシイカが言う。
「ゲートの移動用だったら、もっと小さい家でいいだろ。」
「しかし、殿下と生活を共にされるならば、それだけの品格は求められるもの。この屋敷では十分とは言えない。」
「シイカ、よいのです。私は悠弥との婚姻により、王位継承争いからは除外され、兄上が王位を継承することになります。そんな私が品格や威厳を主張しては、邪魔になる事でしょう
。」
オリビアは嬉しそうだ。
門前には警備兵が2名立っている。
「悠弥様、オリビア様、シイカ様ですね。お通り下さい。」
すでに連絡が来ていたためか、怪しまれることなく通過する。
屋敷の中に入ると、執事と侍女が並び、彼らを迎え入れる。
「おかえりなさいませ。」
全員が一斉に礼をする。
「出迎え、ご苦労様です。」
どう対応しようか困る悠弥の後ろから、オリビアが慣れた態度で対応する。
「やっぱり姫さんなんだな。」
「当たり前です。王族の作法は一通り習得しております。」
一人の老紳士がオリビアの前に出る。
「悠弥様とは初めてお会いいたします。私が執事を務めますグリムと申します。」
グリムは静かに礼をする。
「グリムは王城での私の執事だったのです。悠弥もよろしくしてあげてください。」
「あぁ、今後ともによろしく頼む。」
挨拶を済ませ、屋敷の中を見回る一行。
「よし、屋敷を見たところで、王城に行って、荷物を運ぶか。」
-王城・訓練場-
「家具はここにまとめろ。衣類はそっちだ。」
ギルベルトが指揮を執り、訓練場に荷物が運ばれている。
悠弥たちが訓練場に入って来た。
「これは、悠弥殿。久しぶりですな。」
ギルベルトは笑顔で握手を交わす。
「体は大丈夫か?」
「えぇ、この通りです。」
彼は腕を大きく振って見せた。
準備も順調に終わり、訓練場から兵士たちが撤収し、静かになる。
「悠弥殿、王女殿下をよろしくお願いいたします。」
「あら、ギルベルト。私に何か不足があるのですか?」
「いや、そんなことは、、、」
ギルベルトはタジタジだ。
「そりゃ、そうだろ。勝手に城を飛び出して、結婚までしちまうんだ。ギルベルトの心労も考えてやれよ。」
「悠弥まで!もう!!」
オリビアがプンプン怒っている。
「本当に大きくなられた、、、幼き頃より剣術の稽古をつけさせていただいた私としは、、、」
ギルベルトが涙を拭う。
「いつも大変迷惑を掛けたと思います。本当に感謝しています。」
オリビアの気持ちにギルベルトは涙が止まらない。
二人の時間に水を差すわけにもいかないと、悠弥は黙って、荷物の収納作業を行った。
数分後、二人は話し終えたのか、オリビアが悠弥の傍に来る。
「悠弥、ありがとうございます。」
「いいさ。良くしてくれたんだろ?」
オリビアは目を赤くしている。悠弥は彼女を頭をポンポンと撫で、その涙を拭う。
「全部入れ終えた。」
「悠弥殿、また手合わせ願えるかな?」
「喜んで。」
ギルベルトと固く握手を交わし、悠弥たちは拠点へと戻る。
-悠弥拠点-
リビングのソファでくつろぐ3人。
「帰って来たはいいが、王都からここまで一ヶ月か、、、狩りがてら、二人の鍛錬でもするか?」
「悠弥殿、私はまだ鍛錬は分かりますが、殿下は、、、」
シイカはオリビアを見る。
「シイカ、私はもう王女ではありません。これからはあなたと同じように悠弥の妻として、力を合わせて頑張っていきましょう。」
「殿下、、、」
「オリビアと呼んでください。小さい頃はそう呼び合っていたでしょう。もう敬語も不要ですよ。」
「、、、わ、分かった。お、おり、オリビア。」
「はい。シイカ。」
オリビアは笑顔で返すが、まだ不自然さは抜けない。
「なら、俺も悠弥でいい。」
「ゆ、ゆゆゆ、、悠弥、、、、(殿)」
シイカは真っ赤になり、モジモジしている。
「それでいい。まだ最後に小さく聞こえたような気がするが、慣れるしかないな。」
「そういえば、悠弥。この前、おっしゃっていたあなたを召喚した存在ですが、神格を持つ存在であるなら、一度、教会で祈りを捧げてみてはいかがですか?」
「宗教関係は苦手なんだよな。」
「もしかすると、神託が得られるかもしれません。悠弥ほどの存在ならば、その可能性は高いかと思います。」
「信仰心なんて、持ち合わせてないぜ?」
「まだ彼女たちが拠点に到着するまでには時間があります。試しに行ってみましょう。」
彼女の提案で、悠弥たちは王都の教会に行くことになった。
-王都・教会-
屋敷までゲートで移動し、王都で一番大きい教会に到着した。
「屋敷から見えてた塔は、教会だったのか。でけぇな。」
「そうでしょう。ここは女神ミーシア様を祭る王都の総本山です。」
入口を抜けると、教会の関係者らしき男が足早に寄ってくる。
「これは王女殿下、この度はご訪問、誠にありがとうございます。ご連絡いただけますれば、こちらから、お迎えにあがった次第で、、、」
「これは司教様。突然の訪問、お許しください。此度の訪問はこの方、悠弥様がどうしても女神ミーシア様に祈りを捧げたいと申しましたので、では是非にと大教会をご紹介させて頂いた次第です。公式の訪問ではございませんので、お気遣いなくお願いいたします。」
「それはそれは、ありがとうございます。それでは皆様に女神ミーシアの祝福があらんことを。」
男は奥に消えていった。
「とりあえずやってみるか。」
礼拝堂の長椅子に座り、瞑想する悠弥。
意識が体から抜けていく感覚がある。
”やぁ、久しぶりだね。”
声が聞こえる。そこは何もない真っ白な世界だった。
「俺をこの世界に送った存在だな?」
”そうだよ。この世界でもうまくやっているみたいだね。”
「オリビアを使って、教会に行くように仕向けただろ?」
”鋭いね。そうできる事でもないけれど、彼女の思考に少し干渉させてもらったよ。”
「もう少し方法はなかったのか?」
”僕たちも出来る事と出来ない事はあるからね。今回はたまたまうまくいったというだけさ。”
「で、俺をここに呼んだ理由はなんだ?まさか健康診断をするためってわけでもないだろ?」
”そうだね。君は話が早くて助かるよ。実は君を呼んだには理由があったんだ。僕たちはあるポイントまでの未来を知っている。それは確定された未来なんだ。”
「ややこしいな。簡単に言えよ。」
”分かったよ。僕たちは未来をいつも監視する役目があるんだけど、10年後の未来がとても許容できる結果にならなくてね。”
「神様でも未来を変えられないだって?」
”そうだね。僕たちは全知全能の神じゃない。そして、いつも未来を決めるのはその世界で生きるものたちだ。僕たちは最悪の未来にならないために、少し手を差し伸べるくらいさ。”
「それが俺って事か?」
”そう。いまから3年後に勇者召喚が行われるんだ。その勇者たちを止めて欲しい。”
「召喚を止めるんじゃなくて、勇者を止めるのか?」
”そうだね。今見える勇者召喚を阻止しても、違う形でまた勇者召喚は行われる。その時にはどのような規模で行われるかはまだ分からないんだ。確定した未来で起こる出来事を失くす事はできないんだ。しかし、最悪の結果にならないように経過を変える事はできる。”
「自由に生きろって言っておいて、自分たちの面倒事を押し付けるなよ。」
”騙すような事をして、すまないと思っている。だが、人は重い責任を課せられると判断に迷う時がある。君にはその力があるんだ。迷ってほしくなかった。”
「もうここまで来たんだ。乗ってやるよ。」
”助かるよ。3年後には勇者が召喚されるけど、彼らが行動を起こすまでは、静観してほしい。必ず転機となる事件が起こるはずだ。それを待ってから動いてもらいたい。”
「それで未来が変わるのか?」
”君は特異点だからね。すでに未来は良い方向に向かっている。”
「難しい事は分からねぇよ。」
HUD:
『特異点』
☆世界の理から外れた存在。
歴史からの強制力に影響されない存在。
運命値が特異点に収束した場合、放出される未来値は安定した法則性を失う。
「俺が関わると、未来が変わるって事か?」
”その認識で構わない。君はすでに僕たちの存在に近づいてきている。君がこの世界から影響を受けることはないよ。”
「今回だけだからな。」
”君のスローライフを実現するためにも、力を貸してほしい。よろしく頼んだよ”
悠弥の意識が戻った。
「「悠弥!」」
オリビアとシイカが心配そうに声をあげる。
「あぁ、大丈夫だ。心配ない。」
二人の頭を優しく撫でる。
「どれくらい瞑想していた?」
「それほど多くの時間は経っていませんが、心配するほどには、、、」
「そうか。心配かけたな。あとで屋敷に帰ってから話がある。」
「それは先ほどの瞑想での件ですか?」
「あぁ、そうだ。」
-悠弥屋敷・執務室-
「それでお話と言うのは?」
お茶とお菓子を嗜みながら、3人はテーブルを囲む。
「さっき教会で神のような存在に会った。」
オリビアとシイカが腰を浮かせるほど、驚きを見せる。
「それは神託ではなく、邂逅を成したという事ですか?」
「それを何と呼ぶかは問題じゃない。そいつを仮に神とするが、奴が言うには3年後に勇者召喚が行われるらしい。」
二人はさらに驚き、お茶を噴き出した。
「まさかブレイン聖国ですか?」
「そこまでは言って無かったが、前科があるならば、警戒するべきだろうな。」
「それでその存在は何と言っていたのですか?」
「勇者召喚によって、世界に最悪の未来が待っているらしい。」
「それはどのような未来なのだ?」
「そこまでは言っちゃくれなかった。ただ最悪の未来が待っているとだけだ。」
「それで、私たちは何をすれば良いのでしょうか?」
「勇者召喚は阻止しちゃダメらしい。召喚する事自体は結果として確定しているから、それを阻止すると、まだ確定していない勇者召喚が確定して、どういう未来に繋がるか分からないって話だ。」
「では、その勇者召喚を待って、勇者たちの行動を変えるという事ですか?」
「さすがはオリビアだな。必ず転機が訪れるらしいから、それを待って行動を起こせって事だ。」
オリビアもシイカもお菓子を取る手が止まるほどの内容だった。
「では、それをすぐに各国に連絡すれば、良いのではないでしょうか?」
「どうやら、勇者たちを止めるのは、俺じゃないといけないらしい。俺は特別な存在で、今確定している特定の未来に関与しても、他の未来に影響を与える事がないんだと。」
「悠弥は使徒なのですか?」
「それは分からないな。神(仮)の言い様では、そんな感じは受けなかった。」
オリビアは思考を巡らせる。
「では、悠弥。各国にゲートを繋げるのはどうでしょうか?」
「悪くない策かもしれないな。」
「何か起こった時にでも、すぐにその国へ移動できます。最初は旅になるでしょうが、それは仕方がありません。ゲートさえ繋げてしまえば、事態の対応も迅速に行えるでしょう。」
「よし、何をすればいいかなんて、スケールがデカすぎて分からねぇなら、自分たちに出来る事をやっていくしかねぇな。」
「そうです。では、出発はいつ頃しましょうか?」
「まだこっちの準備も終わってねぇんだ。最低でも一か月後にはなるだろう。」
「父上には報告しますか?」
「各国を見て回るくらいの事は言っておいたほうがいいだろうな。」
「分かりました。」
ちょうど話が終わったところで伝玉が光る。
”移動の準備が整った。明朝、ギルベルト隊が出発する。ジャスタ”
「良いタイミングですね。」
「あぁ。結婚早々、こんな事を背負わせて、すまないな。」
「いえ、悠弥が普通でない事は承知しております。このような事態も覚悟致します。」
「私も悠弥の妻となったのだ。命を賭ける覚悟で臨んでいる。」
「命は大事にしてくれ。二人にはこれから強くなってもらう予定だからさ。」
望むところですと二人は胸を張る。
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