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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
15/47

15 少しマシな未来へ

改稿版

 屋敷についた悠弥一行。


「バカでけぇな。」


「そうですか?我が家はもう少し大きいです。悠弥殿には少し小さい気もするが。」


 驚いた悠弥にシイカが言う。


「ゲートの移動用だったら、もっと小さい家でいいだろ。」


「しかし、殿下と生活を共にされるならば、それだけの品格は求められるもの。この屋敷では十分とは言えない。」


「シイカ、よいのです。私は悠弥との婚姻により、王位継承争いからは除外され、兄上が王位を継承することになります。そんな私が品格や威厳を主張しては、邪魔になる事でしょう

。」


 オリビアは嬉しそうだ。

 門前には警備兵が2名立っている。


「悠弥様、オリビア様、シイカ様ですね。お通り下さい。」


 すでに連絡が来ていたためか、怪しまれることなく通過する。


 屋敷の中に入ると、執事と侍女が並び、彼らを迎え入れる。


「おかえりなさいませ。」


 全員が一斉に礼をする。


「出迎え、ご苦労様です。」


 どう対応しようか困る悠弥の後ろから、オリビアが慣れた態度で対応する。


「やっぱり姫さんなんだな。」


「当たり前です。王族の作法は一通り習得しております。」


 一人の老紳士がオリビアの前に出る。


「悠弥様とは初めてお会いいたします。私が執事を務めますグリムと申します。」


 グリムは静かに礼をする。


「グリムは王城での私の執事だったのです。悠弥もよろしくしてあげてください。」


「あぁ、今後ともによろしく頼む。」


 挨拶を済ませ、屋敷の中を見回る一行。


「よし、屋敷を見たところで、王城に行って、荷物を運ぶか。」



-王城・訓練場-


「家具はここにまとめろ。衣類はそっちだ。」


 ギルベルトが指揮を執り、訓練場に荷物が運ばれている。

 悠弥たちが訓練場に入って来た。


「これは、悠弥殿。久しぶりですな。」


 ギルベルトは笑顔で握手を交わす。


「体は大丈夫か?」


「えぇ、この通りです。」


 彼は腕を大きく振って見せた。

 準備も順調に終わり、訓練場から兵士たちが撤収し、静かになる。


「悠弥殿、王女殿下をよろしくお願いいたします。」


「あら、ギルベルト。私に何か不足があるのですか?」


「いや、そんなことは、、、」


 ギルベルトはタジタジだ。


「そりゃ、そうだろ。勝手に城を飛び出して、結婚までしちまうんだ。ギルベルトの心労も考えてやれよ。」


「悠弥まで!もう!!」


 オリビアがプンプン怒っている。


「本当に大きくなられた、、、幼き頃より剣術の稽古をつけさせていただいた私としは、、、」


 ギルベルトが涙を拭う。


「いつも大変迷惑を掛けたと思います。本当に感謝しています。」


 オリビアの気持ちにギルベルトは涙が止まらない。

 二人の時間に水を差すわけにもいかないと、悠弥は黙って、荷物の収納作業を行った。

 数分後、二人は話し終えたのか、オリビアが悠弥の傍に来る。


「悠弥、ありがとうございます。」


「いいさ。良くしてくれたんだろ?」


 オリビアは目を赤くしている。悠弥は彼女を頭をポンポンと撫で、その涙を拭う。


「全部入れ終えた。」


「悠弥殿、また手合わせ願えるかな?」


「喜んで。」


 ギルベルトと固く握手を交わし、悠弥たちは拠点へと戻る。



-悠弥拠点-


 リビングのソファでくつろぐ3人。


「帰って来たはいいが、王都からここまで一ヶ月か、、、狩りがてら、二人の鍛錬でもするか?」


「悠弥殿、私はまだ鍛錬は分かりますが、殿下は、、、」


 シイカはオリビアを見る。


「シイカ、私はもう王女ではありません。これからはあなたと同じように悠弥の妻として、力を合わせて頑張っていきましょう。」


「殿下、、、」


「オリビアと呼んでください。小さい頃はそう呼び合っていたでしょう。もう敬語も不要ですよ。」


「、、、わ、分かった。お、おり、オリビア。」


「はい。シイカ。」


 オリビアは笑顔で返すが、まだ不自然さは抜けない。


「なら、俺も悠弥でいい。」


「ゆ、ゆゆゆ、、悠弥、、、、(殿)」


 シイカは真っ赤になり、モジモジしている。


「それでいい。まだ最後に小さく聞こえたような気がするが、慣れるしかないな。」


「そういえば、悠弥。この前、おっしゃっていたあなたを召喚した存在ですが、神格を持つ存在であるなら、一度、教会で祈りを捧げてみてはいかがですか?」


「宗教関係は苦手なんだよな。」


「もしかすると、神託が得られるかもしれません。悠弥ほどの存在ならば、その可能性は高いかと思います。」


「信仰心なんて、持ち合わせてないぜ?」


「まだ彼女たちが拠点に到着するまでには時間があります。試しに行ってみましょう。」


 彼女の提案で、悠弥たちは王都の教会に行くことになった。



-王都・教会-


 屋敷までゲートで移動し、王都で一番大きい教会に到着した。


「屋敷から見えてた塔は、教会だったのか。でけぇな。」


「そうでしょう。ここは女神ミーシア様を祭る王都の総本山です。」


 入口を抜けると、教会の関係者らしき男が足早に寄ってくる。


「これは王女殿下、この度はご訪問、誠にありがとうございます。ご連絡いただけますれば、こちらから、お迎えにあがった次第で、、、」


「これは司教様。突然の訪問、お許しください。此度の訪問はこの方、悠弥様がどうしても女神ミーシア様に祈りを捧げたいと申しましたので、では是非にと大教会をご紹介させて頂いた次第です。公式の訪問ではございませんので、お気遣いなくお願いいたします。」


「それはそれは、ありがとうございます。それでは皆様に女神ミーシアの祝福があらんことを。」


 男は奥に消えていった。


「とりあえずやってみるか。」


 礼拝堂の長椅子に座り、瞑想する悠弥。

 意識が体から抜けていく感覚がある。


”やぁ、久しぶりだね。”


 声が聞こえる。そこは何もない真っ白な世界だった。


「俺をこの世界に送った存在だな?」


”そうだよ。この世界でもうまくやっているみたいだね。”


「オリビアを使って、教会に行くように仕向けただろ?」


”鋭いね。そうできる事でもないけれど、彼女の思考に少し干渉させてもらったよ。”


「もう少し方法はなかったのか?」


”僕たちも出来る事と出来ない事はあるからね。今回はたまたまうまくいったというだけさ。”


「で、俺をここに呼んだ理由はなんだ?まさか健康診断をするためってわけでもないだろ?」


”そうだね。君は話が早くて助かるよ。実は君を呼んだには理由があったんだ。僕たちはあるポイントまでの未来を知っている。それは確定された未来なんだ。”


「ややこしいな。簡単に言えよ。」


”分かったよ。僕たちは未来をいつも監視する役目があるんだけど、10年後の未来がとても許容できる結果にならなくてね。”


「神様でも未来を変えられないだって?」


”そうだね。僕たちは全知全能の神じゃない。そして、いつも未来を決めるのはその世界で生きるものたちだ。僕たちは最悪の未来にならないために、少し手を差し伸べるくらいさ。”


「それが俺って事か?」


”そう。いまから3年後に勇者召喚が行われるんだ。その勇者たちを止めて欲しい。”


「召喚を止めるんじゃなくて、勇者を止めるのか?」


”そうだね。今見える勇者召喚を阻止しても、違う形でまた勇者召喚は行われる。その時にはどのような規模で行われるかはまだ分からないんだ。確定した未来で起こる出来事を失くす事はできないんだ。しかし、最悪の結果にならないように経過を変える事はできる。”


「自由に生きろって言っておいて、自分たちの面倒事を押し付けるなよ。」


”騙すような事をして、すまないと思っている。だが、人は重い責任を課せられると判断に迷う時がある。君にはその力があるんだ。迷ってほしくなかった。”


「もうここまで来たんだ。乗ってやるよ。」


”助かるよ。3年後には勇者が召喚されるけど、彼らが行動を起こすまでは、静観してほしい。必ず転機となる事件が起こるはずだ。それを待ってから動いてもらいたい。”


「それで未来が変わるのか?」


”君は特異点だからね。すでに未来は良い方向に向かっている。”


「難しい事は分からねぇよ。」


 HUD:

 『特異点』

 ☆世界の理から外れた存在。

  歴史からの強制力に影響されない存在。

  運命値が特異点に収束した場合、放出される未来値は安定した法則性を失う。


「俺が関わると、未来が変わるって事か?」


”その認識で構わない。君はすでに僕たちの存在に近づいてきている。君がこの世界から影響を受けることはないよ。”


「今回だけだからな。」


”君のスローライフを実現するためにも、力を貸してほしい。よろしく頼んだよ”


 悠弥の意識が戻った。


「「悠弥!」」


 オリビアとシイカが心配そうに声をあげる。


「あぁ、大丈夫だ。心配ない。」


 二人の頭を優しく撫でる。


「どれくらい瞑想していた?」


「それほど多くの時間は経っていませんが、心配するほどには、、、」


「そうか。心配かけたな。あとで屋敷に帰ってから話がある。」


「それは先ほどの瞑想での件ですか?」


「あぁ、そうだ。」



-悠弥屋敷・執務室-


「それでお話と言うのは?」


 お茶とお菓子を嗜みながら、3人はテーブルを囲む。


「さっき教会で神のような存在に会った。」


 オリビアとシイカが腰を浮かせるほど、驚きを見せる。


「それは神託ではなく、邂逅を成したという事ですか?」


「それを何と呼ぶかは問題じゃない。そいつを仮に神とするが、奴が言うには3年後に勇者召喚が行われるらしい。」


 二人はさらに驚き、お茶を噴き出した。


「まさかブレイン聖国ですか?」


「そこまでは言って無かったが、前科があるならば、警戒するべきだろうな。」


「それでその存在は何と言っていたのですか?」


「勇者召喚によって、世界に最悪の未来が待っているらしい。」


「それはどのような未来なのだ?」


「そこまでは言っちゃくれなかった。ただ最悪の未来が待っているとだけだ。」


「それで、私たちは何をすれば良いのでしょうか?」


「勇者召喚は阻止しちゃダメらしい。召喚する事自体は結果として確定しているから、それを阻止すると、まだ確定していない勇者召喚が確定して、どういう未来に繋がるか分からないって話だ。」


「では、その勇者召喚を待って、勇者たちの行動を変えるという事ですか?」


「さすがはオリビアだな。必ず転機が訪れるらしいから、それを待って行動を起こせって事だ。」


 オリビアもシイカもお菓子を取る手が止まるほどの内容だった。


「では、それをすぐに各国に連絡すれば、良いのではないでしょうか?」


「どうやら、勇者たちを止めるのは、俺じゃないといけないらしい。俺は特別な存在で、今確定している特定の未来に関与しても、他の未来に影響を与える事がないんだと。」


「悠弥は使徒なのですか?」


「それは分からないな。神(仮)の言い様では、そんな感じは受けなかった。」


 オリビアは思考を巡らせる。


「では、悠弥。各国にゲートを繋げるのはどうでしょうか?」


「悪くない策かもしれないな。」


「何か起こった時にでも、すぐにその国へ移動できます。最初は旅になるでしょうが、それは仕方がありません。ゲートさえ繋げてしまえば、事態の対応も迅速に行えるでしょう。」


「よし、何をすればいいかなんて、スケールがデカすぎて分からねぇなら、自分たちに出来る事をやっていくしかねぇな。」


「そうです。では、出発はいつ頃しましょうか?」


「まだこっちの準備も終わってねぇんだ。最低でも一か月後にはなるだろう。」


「父上には報告しますか?」


「各国を見て回るくらいの事は言っておいたほうがいいだろうな。」


「分かりました。」


 ちょうど話が終わったところで伝玉が光る。


”移動の準備が整った。明朝、ギルベルト隊が出発する。ジャスタ”


「良いタイミングですね。」


「あぁ。結婚早々、こんな事を背負わせて、すまないな。」


「いえ、悠弥が普通でない事は承知しております。このような事態も覚悟致します。」


「私も悠弥の妻となったのだ。命を賭ける覚悟で臨んでいる。」


「命は大事にしてくれ。二人にはこれから強くなってもらう予定だからさ。」


 望むところですと二人は胸を張る。

読んでいただきありがとうございます。


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