13 ゲート
改稿版
-王城・応接室-
悠弥は応接室に先に通され、ソファに座っている。
しばらくすると国王と宰相、王女に続き、シイカが入って来た。
「悠弥、この度は本当に迷惑を掛けた。私が甘やかした結果だ。」
「その話は済んだことだ。もう何も言う事はない。」
「今回の城の修繕についてだが、これほどの費用が掛かる。」
ジャスタが悠弥に書類を見せる。
「これは本当か?」
「概算でしか分からんが、これくらいあれば足りるだろうという計算だ。」
「俺は森で暮らしているから、金銭は持ってないんだ。売れるものなら山ほどあるんだがな。」
「それでは間に合わん。悠弥がセルザイン王国民でないとする以上、擁護するわけにもいかん。」
本当かどうかは分からないが、悠弥にも少し申し訳ないという気持ちはある。
それをバルフェルトは見逃さなかった。
「では、こちらから提案がある。国民になれとは言わん。この私が気を遣わなければならない程度になってくれれば構わん。」
「どういう事だ?」
「何かしらの手段で、その地位を手に入れればよい。一番簡単な方法としては、婚姻関係であるな。」
バルフェルトはオリビアに目くばせする。それに気付いた彼女は、
「そういう事でしたら、私が悠弥の妻となりいましょう。」
「ちょっと無理やりすぎないか?」
「なぜです?私では不満ですか?」
「そういう事を言ってるんじゃない。婚姻でチャラにできる理屈は分かるんだが、明らかに目的が違うだろ。」
「さすがに気づいておるか。」
これは政略結婚である。悠弥の能力を知った国王は、その繋がりを切りたくはなかった。城の修繕費など、国家を揺るがすほどの問題でもない。それは悠弥も気付いている。
それよりもこれより先、悠弥が他国に協力をした場合の事が心配だった。
それは各国のパワーバランスを崩しかねない事態に発展しかねないと読んだ。
悠弥のその能力を享受できないでも、それを他国に流されるくらいならば、自国の姫を妻として、差し出す事はそう高くない条件だと考えている。
「狸爺、何を言っているのか分かってるのか?」
「分かっておる。貴殿をそれほど買っているという事だ。」
「オリビアはどうなんだ?」
彼女は一息置いて、
「どうかと聞かれましても、そういうものだと納得しています。それが他国の王族や貴族なのか、悠弥なのかの違いだけです。」
「それでいいのか?俺は王族だとか貴族だとかは知識でしか知らないが、俺のいた世界では自由に恋愛をして、自由に相手を決められるのが常識なんだ。」
「あぁ、気持ちの問題をおっしゃっているのですね。それならば、問題ありません。悠弥は十分に素敵な男性だと思っております。シイカと同様にお慕いしております。」
シイカが巻き込まれた。
「殿下!私は、、、ゴニョゴニョ、、、」
「どうだ?娘もこう言っておる。今ならシイカ嬢も付いてくるぞ?」
「安売りみたいに、重大な要件を出してくるなよ。本人たちが納得しているなら、その策に乗ってやるよ。」
「あら、悠弥はまだ納得しておりませんか?」
オリビアが悠弥の隣に座り、肩を寄せる。
「分かった。分かったから、離れろ。」
「それは良かったです。これからお願いしますね。あ、な、た。」
バルフェルトはそれを見て、笑う。
「これからは悠弥と二人きりでの生活ですね。王族でもなくなりますので、護衛も不要となります。」
オリビアはシイカを見る。
「な、、、殿下、、、それはご無体ではございませんか?」
シイカがしどろもどろになる。
「先ほど機会を与えたではありませんか。シイカは悠弥と婚姻の意志はないと。どうしますか?」
オリビアは悠弥の首に腕を絡めながら、意地悪に言う。
「わ、私も悠弥殿をおおお、お慕いしております。」
顔がリンゴのように真っ赤なシイカは勢いで悠弥の首に飛びつく。
「最初から正直になりなさい。悠弥ほどの男性は世界を探しても見つかりませんわよ。」
ため息をこぼす悠弥をよそに、オリビアとシイカはガールズトークを繰り広げている。
「で、これから俺がしないといけない事はなんだ?」
「そうであるな。まずはオリビアをそちらに嫁がせるための準備と、王家への結納品の準備だな。シイカ嬢もベント家という貴族のため、それ相応の結納品が必要になろう。」
「それが準備出来次第か。」
「それはそうですが、私がそちらに行くとなると、悠弥の屋敷では広さが足りません。」
「どれくらいだ?」
「そうですね。戦乙女が60人と侍女や執事が100人程度が入る屋敷が必要です。」
「そんなにか?」
「そんなにです。むしろ少ないくらいです。」
悠弥は頭を抱える。
「分かった。こっちも準備が出来次第、連絡する。ただ屋敷は戦乙女たちに手伝ってもらう事になるが、頼めるか?」
「もちろんです。よい屋敷を作りましょう。」
話がまとまったところでバルフェルトが話を変える。
「ところで悠弥、オリビアとシイカ嬢に渡した短剣だが、あれは自身の作品か?」
「あぁ、そうだな。強そうな鉱石があったから、鍛冶の修行のために作った短剣だな。」
王族が興味を示した場合、そのほとんどが献上しろという意思表示なのだが、悠弥にその常識があるはずもない。
「なんだ、欲しいのか?」
そんな事を聞かずに差し出せばよかったのだが、常識がないために聞いてしまう。
「う、うむ。できれば、私にも一本融通してくれないか?」
バルフェルトも悠弥が転生者だと理解しているので、慣れないことではあるが、目をつぶる事にする。
悠弥はボックスから、長剣を取り出す。
「これは、、、」
バルフェルトが鞘から抜くと、その刃先は黒く輝き、剣身の大部分は白く輝いていた。
「ブレサイトとディバネイトのロングソードであるな。」
「そうだな。」
バルフェルトはその剣をマジマジと見つめる。
「これがどういうものが分かっていないようだな。」
「知ってるわけないだろ。転生者だぞ。」
「そうであったな。この剣は国宝してもよいほどの剣だ。美しさもそうだが、見ただけでこの剣が業物であると分かる。」
バルフェルトは鞘に納める。
「国宝としてよいか?」
「それは好きにしろよ。それなら、意匠をもう少し凝るか?」
「これだけでも十分だ。感謝する。」
「でも、普段使いしないなら、譲ったかいが無いな。」
悠弥はボックスからさらに剣を取り出す。
「国王はこれだと普段使いできるか?」
鞘から抜くと赤く発光している。
「剣身にイビルライトとブレサイトの合金を使っている。さっきの剣と比べると硬度は下がるが、切れ味はいいと思うぞ。」
バルフェルトに渡すと、彼はすぐに腰に携える。
「どうだ?似合っているか?」
「陛下、大変お似合いでございます。」
「いいのか。悠弥。」
「素材は余るほどあるからな。」
バルフェルトは満足しているようだ。
「じゃぁ、一旦俺は帰るぞ。森で結納できそうな素材でも見つけてくる。準備出来たら、すぐに来るから、この応接室を使わせてもらうぞ?」
「何を言っているのだ?普通に執事に伝言を頼めばよかろう。」
「あぁ、今から見せる魔法?は秘密にしてくれると助かる。」
(”ゲート”)
応接室に空間が開いた。
「こ、これはなんだ?」
「これは俺の拠点に繋がっている扉?って事になるのかな。”ゲート”と呼んでいる。」
「何を言っておるの分からん。」
「じゃぁ、俺と一緒にここを潜ってくれ。」
悠弥は、腰が引けているバルフェルトの腕を引っ張り、ゲートを潜る。
「な、、、どこだ、ここは、、、」
「どこって、俺の拠点。あんたたちの言う無知なる森だな。」
「悠弥、これがどういう魔法か分かっているのか?」
「分かってるよ。歩かなくていいから、楽だなって。」
「そうではない!!」
バルフェルトは激昂した。
「ほんとに分かってるよ。だから、秘密にしてほしいんだ。こんな魔法があると分かったら、戦争になるぞ。」
「分かっているならよい。心臓が止まるかと思ったぞ。」
「じゃぁ、戻るか。」
再び、応接室に戻る。
「陛下、お体に異変はございませんか?」
ジャスタが心配そうに駆け寄る。
「心配ない。ちょっと心臓が止まりそうになっただけだ。」
「そういう事だから、また応接室に来るから、よろしくな。」
悠弥はゲートを潜っていった。
「ジャスタよ。この件が片付くまで、この応接室は立入禁止とし、戦乙女を入り口の警護に当たらせよ。」
「かしこまりました。」
「しかし、オリビアよ。お前はとんでもない男を婿にしたものだ。ゲート以外なら、ただすごい能力の持ち主だと喜ぶだけだが、あの魔法はまずい。他国に知られれば、必ずや懐柔しようとする者が現れる。自国においてもそれは変わるまい。」
バルフェルトはソファに腰を下ろし、うなだれる。
「私の婿はすごいでしょう。道中も助けていただきました。決して、この能力を悪用しようとはしないでしょう。」
「シイカ嬢、貴公の目から見て、悠弥が王国に牙をむいた場合に、私に彼が斬れると思うか?はっきり申してよい。これは重大な要素だ。真実のみを述べよ。」
「、、、難しいと思います。」
「私の腕をもってしても無理か、、、ギルベルトならどうだ?」
「軍団長殿は先ほど廊下で、悠弥殿に負けたとの報告がありました。」
ジャスタが応える。
「彼の不況を買わぬよう立ち振る舞うしかないか。」
「その心配は無用かと思います。先ほどもまるで友人かのようにお話されていたではありませんか。」
オリビアは楽観的である。しかし、王となれば話は違ってくる。国益や安全、民の生活まで考えなければならない。例え、悠弥が自身を友人だと認めたとしても、その不安が拭われることはない。かといって、王としては、下手に出ることは悪手であることは明白である。
不幸中の幸いは、悠弥自身もゲートの有用性が世界のパワーバランスを一気に変化させる要因になる事を理解している点だ。
「それはゲート知るまでの事よ。今は震えている。あのような力を持つものに、条件を突き付け、娘を押し付けるような事までしてしまったのだからな。少し掛け違えば、私の明日はなかったかも知れないな。」
「父上、心配しすぎです。悠弥はそのような事は致しません。自分の生活に干渉しないのであれば、何もしないと彼自身がおっしゃっていましたから。」
「そうであると願おう。」
それでもバルフェルトの不安を払拭できるものではなかった。
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