↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/35

リセット&リスタート

今回はファスト(アインス)→サアド(ドライ)→川口 創一→由美の順番で視点が変わります。


登場人物紹介

・近藤 由美

中学三年生。 外見は茶髪ポニーテールでつり目気味の女子。

幾多の苦痛を乗り越えすっかり浄化された。

ちなみに地獄から脱出したことにより、不死身では無くなった。

しかし地獄に居た頃の影響は残っており、今は感覚がかなり狂っているらしい。


・川口 創一

由美が虐めていた川口 美咲の兄。 外見は髪ボサボサで身体は中肉中背。

地獄のマスターとして凶悪すぎる暴力で由美に罰を与えていた。


・川口 美咲

由美に虐められていた女子。 故人。


・ファスト→アインス

獄卒長だったが、世界がもとに戻ったことにより、名前と地位を取り戻した。

元の世界では王。 本来(アインスとして)の見た目は長身で整った顔をした銀髪の30代くらいの男。

争いの絶えない世界の統治を目指す。

種族は人間。


・サアド→ドライ

獄卒長→守護女神。

本来の姿は水色の長髪に碧い眼。 スレンダー体型の20代女性。

アインス達を見守っている。 種族は神族


・他の元獄卒長

我の強すぎるセコンド以外は一度死んだ後、強制転生され地獄王の完全な支配下に堕ちていた。

セコンド→ツヴァイ 人間、アインスの弟。

シィ→獄卒総長フォース→フィーア 女、人間の剣士。 金髪。

ゴウ→地獄将フィフス→フュン 男、妖精と人間のハーフで子供。

ロク→地獄副将シークス→ゼクス オネエ、筋骨隆々な赤い巨人。

ナナ→地獄将セブンス→イーヘン 女、人間の魔法使い。 銀髪

ハチ→地獄大将エイス→アハト 男、黒い狼の獣人。


・超常現象の説明書

創一が創造力を会得する前から脳内に語りかけていた。

能力(創造力)の一部としてプログラムされていたものらしい。


・赤松 レイ→地獄王零→赤松 レイ

嗜虐趣味を持つ変態。

女の子が嫌がる姿を見るのが大好き。

創一に捕獲され地獄王にされていた。





〜かつて地獄だった異世界〜


近藤 由美が地獄から姿を消してから一週間……。


かつて地獄王を名乗るものに乗っ取られて居た世界は既に本来の姿を取り戻していた。


獄卒長だった私も本来の名前、姿、立場を取り戻し平穏な日常を送って居た。


「アインス様、今日は北の区域で巨人と竜人が抗争しており緊張状態です。 如何なされますか?」


平穏……ではないな。 いや、だが私の世界ではこれが普通なのだ。


地獄王が私達の記憶を改竄したのは、種族間の抗争が激しく統率が取りづらかったのも一因だろうな。


アインスというのは私の本来の名前で、地獄ではファストと呼ばれて居た。 そして獄卒長として支配されて居た私は再び王の座に戻り世界を統率している。 可能な限りだが……。


ちなみに我々、一番個体数が多い種族は獄卒鬼族という地獄王支配下の種族だったが、元の世界における私達は「人間」だ。 随所で姿を見せた獄卒以外の存在はというと記憶の一部を都合よく改竄されただけで、元の姿のままだったようだ。


万能に見えた地獄王の力も、一世界全ての生命を完全に掌握できる程の全能性は無かったみたいだ。


「兄者、何をしているのです」


ツヴァイ……。


「早く巨人達を止めないと周辺の街が壊滅してしまうわ……」


フィーアまで……。


私を呼びに側近達が来たようだ。


彼らも私と同じ獄卒長だった者達……。 そして一部は途中で地獄王に存在を上書きされ完全なる支配下に堕ちた者も居たな。


さて、こんな事をしてる場合ではなかったな。 早急に争いを収めないと……。


セコンド、シィ、ゴウ、ロク、ナナ、ハチ……いやツヴァイ、フィーア、フュン、ゼクス、イーヘン、アハト……死んだと思っていた皆が生きていて本当によかった。


「すまないな、ちょっと考え事をしてたんだ」


「だいじょーぶ?」


「フュンは優しいな。 大丈夫だよ……。 それじゃ行こうか」


こうして私は側近や部下達を引き連れ、争いの鎮静に向かった。


———


やれやれ、アインスも早速大忙しですね。


せっかく地獄王及びそのマスターの川口 創一から解放されたのに……。


案外彼の能力で支配されてた方が統率が取れていて平和だったのかも……。


……って冗談ですよ。 仮にも世界を見守る守護女神の身でそのような事を言ってはいけませんね。


ちなみに私、ドライは以前、獄卒長サアドとしてこの世界の救済に一役買いました。 近藤 由美へ課した追体験ですね。


仮にも神、簡単な空間なら創造出来ますし、異界の侵略者(地獄王)の目を欺くことならお手の物です。


それはさて置き……この世界は全て元通りになりました。 それは死んだ方達も……。


凄いですね。 死者が蘇生してるのですから……。 先程アインスが呟いていた通り、川口 創一の力は全能ではありませんでしたが、限りなくそれに近いのだと思い知らされました。


蘇りが彼の如何いった能力で発動したのでしょうか……。


世界をまんま元通りに巻き戻された? 違います、だって私もアインスも獄卒長の時の記憶が残っています。


川口 創一の創った地獄は近藤 由美の罪を罰によって浄化する場所……。


しかし本当は彼女の罪という概念が浄化どころか、綺麗さっぱり取り除かれて無かったことになっていたとしたら……。


もしかしたら近藤 由美が元の世界で罪を……虐めをする事なく日常を過ごしていたという風に改変されているのかも。


だから彼女の罪によって引き起こされた全ての事象は無かったことになって、地獄で死んだものは蘇ったのかもしれませんね。


なら、近藤 由美がいた元の世界でも死んだはずのある人物が生きているのかも……。


———


〜元の世界〜


ジジジジジジジー!


夜が明け朝が来る。 けたたましく鳴り響く目覚まし時計は実家に帰って長期休暇を満喫している俺にも容赦しない。


「う、うぅーん……んに……朝……か」


俺は川口 創一……妹を虐めで亡くしたショックで引きこもりがちの社会人。


そんな俺もかつては偶然ながら特別な力を手に入れ、異世界を掌握した支配者だった。


それもこれも、妹を虐めた張本人に復讐するためだ。


最初こそ、異世界に閉じ込めたアイツがそこで酷い目に遭う様を見てスッキリした。 泣き叫んで許しを乞うても出してやるもんかと次々に凶悪な罰を課した。 しかし、次第に反省し心を入れ替えるアイツを見て復讐が意味があるものなのか分からなくなった。


罪を自覚し認めた奴は俺に必死に謝ろうとし、地獄の痛みすら完全に受け入れようとした。


だからって許す気は毛頭なかった。


奴が苦しむ姿を見るために創った地獄なのに肝心の奴が、痛みを受け入れ無抵抗になったんじゃ、なんかもう逆に疲れるだけだと思った。


結局、俺は奴を返し、復讐の果てに得たものは何もなかった。 実に虚無な結果だ。


本当にダメな男だよ、俺は……。


部屋に篭ってそんなことしてる暇があったら妹の墓参りくらいすれば良かったんだ。


なんで実の妹を放っておいて、しょうもない復讐に時間を割いたんだろう……。


「…………ふっ」


笑えてくる。


「はは……ははは……」


泣けてくる。


「はーっはは、ハハハ、ヒヒーハハッ!」


俺はダメな兄だよ。 ゴメンな、美咲……寂しかったよな。 でも大丈夫……兄ちゃんもすぐそっちに行くから……。


どうせ能力の過剰使用で寿命も殆ど残ってないんだ。 そんな短時間じゃ何もできやしない。 なら1分でも早く行ってあげる方が美咲も喜ぶに違いない。


…………ゴソゴソ。


「あった、これこれ」


ガタン……ギシッギシィ、ギュッ……。


「よいしょっとー……これでよし……」


俺は昨日通販で買った、頑丈なロープで輪を作り、それを天井に吊るした。


そう、これから俺は首を吊る。


これで全てが終わる。


「……行くぞ、美咲」


自暴自棄になって命を捨てようとした、その時だった。


コンコン……。


部屋の外でノックの音がした。


母さん? いや違う。 母さんはさっきゴミ出しに行ったから家には俺しかいないはず。


なのに……誰が?


ドアの方を静かに見ているとゆっくりドアが開き……。


「兄ちゃん……?」


な……なっ!? そんなことって……あり得るのか?


俺はこの時紛れもない奇跡を目の当たりにしていた。


———


〜時を同じく、近藤家〜


「ち、遅刻する。 朝ごはんはいいから、行ってきまーす」


「由美、気をつけて行ってらしゃい」


見送る母を後に、全力疾走で学校へと向かう。


久しぶりの日常、当たり前にあったものが今はとても尊く感じる。


本当に元の世界に戻ってこられるなんて……。


ビュゥゥゥゥ……。


「キャッ!」


暖かくも激しい風邪が吹く。


スカートがめくれ上がりあられもない姿に……。


いや、それはどうでもいいわ。 この暖かい風邪ってまるで春一番みたい。


今ってたしか7月入ったくらいよね。 地獄に行く前の夜だってエアコンガンガンにして寝たし……。


帰ってからあまり暑くないと感じでは居た。 でもそれは溶岩で満ち溢れている地獄に居たから感覚が狂ってんのかな、なんて思ってたけど……もしかして気のせいじゃない!?


……ないないない。


非日常に慣れすぎて私ったらおかしくなってるだけよね。


さすがに人知れず季節がズレるなんて超常現象、ありえない。


さっきの風だって偶然ね。


———


〜学校、朝礼前〜


「おはよー」


「あぁ、雅美おはよー」


学校懐かしいなぁ。 今まで普通に登校してたけど今はそんな日常がありがたく思える。


さて、と……カバンをロッカーに片付けて……。


「えっ!?」


驚いた。 ロッカーの近くにあったカレンダーが目に入ったんだけど、それが示していた日付が明らかにおかしい。


「4月……14日……?」


あれ、あれあれ? 今って夏じゃないの?


さっきは気のせいと思ってたけど、もしかして本当に季節が……日付が……操作されている?


川口兄と同じ超常現象を操る人間が居るとか?


いやいやいや、そんな王道ストーリーみたいな新展開があるわけないよ。


仮にそんな人が居たとして私に関わる意味がわからないし……。


じゃあ、私がおかしい?


仮に地獄に居た分時間が進んだとしたら、家族が私に驚くなり何らかの反応を示すからないよね。


それに時間が進んで春になったら卒業してるもんね。 中3だし……。


なら時間が巻き戻ったしか考えられない。


誰が何のためにー


「やだ、やめ……やめてぇぇぇ」


大きな声だ。 廊下の方からする。


「ちょっと行ってみよう……」


———


「おい、川口! お前、私が赤松君と付き合ってるの知ってて彼の告白を受け入れてるのか?」


「ち、違う……違うよ、そんなの知らないし、赤松君……しつこかったから……」


あれは死んだはずの川口さんと……隣のクラスの子?


あの子が赤松と付き合ってて、川口さんがその子から奪った……?


川口さんが生きていることも不思議だけど……。


この光景、まるっきり私がいじめを始めたその日じゃない!


その時、私の頭を様々な記憶が駆け巡る。


追体験したいじめの辛い記憶、自殺する前の絶望感に満ちた川口さんの顔、自殺した川口さんの変わり果てた姿、その彼女を見つけた時の川口兄の憎悪に満ちた顔……。


状況がうまく飲み込めい……けど!


「やめなさい、川口さんを話しなさいっ!」


見過ごせない。 もうあんな凄惨な出来事を私の近くで起こさせない!


「なによアンタ。 この泥棒猫の味方するってわけ?」


隣のクラスの女は威嚇するかのように私を激しく睨む。


でも負けない。 よく分からないけど川口さんを助けなきゃ!


「する!」


辺りがシーンとした。 どうやら皆、私が隣のクラスの女に歯向かうとは思わなかったみたい。


その時だ、頭の中に声が流れた。


『近藤 由美、お前は川口 美咲を守る選択をした。 これにより、これから卒業までお前は川口 美咲と共にあの女のいじめと戦わなければならなくなった』


この声は一体……。


『説明がまだだったな。 私は川口 創一の放った超常現象(創造力)の説明書みたいなものだ。 今、お前が居る時間は元々お前が川口 美咲をいじめ始めた日だ』


じゃあ、時間は巻き戻された? でもこの女はどこから来たの? この問題は私と川口さんの話じゃ……。


『地獄で罪が浄化したことにより、お前のいじめが原因で引き起こされた事象は全て無かったことになり、適合性を合わせるため世界は改変をなされた上でリセット、リスタートされた。 だから日付はお前がいじめをする直前に戻ったし、川口 美咲は生きている。 尚、地獄だった異世界の住人も元どおりだ。 死んだ獄卒長5名もな』


リセット……そんなことまで……。


『なんてことはない。 超常現象は世界の外から干渉する力、クリエイターみたいなものだ。 書き込まれた世界の歴史を一部書き換えるだけだ。 プログラムを組み替える感覚でな……。 それよりお前の罪は今、この時をもって完全に浄化された。 今の起こっている出来事はお前が本当に罪を認め、新たな一歩を踏み出せるか試した……いわば地獄の卒業試験だ。 ここでお前が川口 美咲を助けなければ浄化未完了となり地獄に送り返されていたところだ。 つまり落第だな』


なる程、わかった。 これから大変になるわね。


でも、大丈夫!


私は一人じゃない、川口さんも一人じゃない。


私と川口さん、二人が一緒ならいじめの辛さも半分。


なら耐えられる。 そもそも地獄の苦しみに比べれば屁でもない。


『その粋だ、お前は一人じゃない。 お前は強くなった。 今更いじめに屈する心配もないだろう。 それに味方は他にも居る。 お前の両親、そしてお前の宿敵だった川口 創一……彼もお前の味方だ。 困れば彼らを頼るといい。 では健闘を祈る』


うん、私頑張る。


「川口さん……」


私は川口さんに手を差し伸べる。


「一緒にがんばろ」


川口さんは涙を浮かべながら私の手を取った。


「うん!」


この時、私は新たな一歩を踏み出した。

最終話の予定でしたが次エピローグをして終わろうと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。