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私の過去の罪は……

登場人物紹介

・近藤 由美

追体験を経て過去の罪を自覚するに至る。


・川口 美咲

いじめられっ子。

いじめを苦に……。


・近藤 創一→川口 創一

追体験で由美の兄をしていた男で、川口 美咲の実の兄。

由美にただならぬ憎しみを抱くことに。


・サアド

衆合麗人の異名を持つ獄卒長。

追体験に使われた世界を創った。

獄卒長ファストと同じく、地獄王に不信感を持っている。

スレンダーで銀髪碧眼の女性の姿をしている。

兄の乱入から2時間が経った頃……。


不良達の溜まり場だった廃屋は静まり返っていた。


兄は私を救うために必死に戦ってくれたけど、相手は喧嘩した不良が複数人だ。 いくらバットを持ったところで圧倒的な戦力差がひっくり返ることはなかった。


結果、兄は不良達に囲まれてされるがままリンチを受け、更に卑劣な不良供は私を兄の目の前で心身共に汚した……。


痛かった、怖かった、絶望した。


私の知らない場所でもいじめは続いていたんだね……。


私、最低だ……。


川口、いや川口さん……ごめんなさい。


私はこの時初めて自分の行いを恥じ、悔やみ、後悔した。


地獄に堕ちたからとかそういう事じゃない。


自分の行いが如何に非道なものだったかを身をもって理解したから……。


あれ、身体が……。


気づけば私の身体は宙に浮いていて下を見下ろしていた。


さっきまで私が倒れていた場所に居るのは、気を失っている川口とその兄……。


それじゃ、今浮いている私は一体……。


「お疲れ様です……」


浮遊している私に何者かが後ろから声をかけて来た。


「私は獄卒長のサアド、衆合麗人って呼ばれていますが……まぁそれは置いておいて……。 近藤 由美さん、貴方はこれまでの責め苦やこの偽物の世界での追体験で自分の罪の深さを理解したみたいですね」


獄卒長サアド、彼、いや彼女はスラっとした体系で髪は銀髪短髪、吸い込まれるような青の瞳をした麗しい感じの女性の姿をしていた。


サアドは倒れている兄妹を指差す。


「追体験の責め苦の仕上げとして、彼女の最期を見届けて下さい。 いじめられっ子、川口 美咲の最期を知る義務が貴方にはあります」


「川口……さんの最期? えっ、川口さんは死んだの?」


「…………」


サアドは黙って見ているように視線を送っている。 とりあえず今は言われた通りにしよう。 いや、しなくちゃいけないよね。


川口さんが立ち上がる。 気を失っている兄に背を向け建物から出て行く。


不良達の汚らわしい原始的な欲望をぶつけられ、フラフラの川口さんの目には光はない。 それでも彼女は何かを目指して前進する。


建物を出て、裏路地を脱出……夜の街の中をフラフラ、力なく歩いていく。


前方に歩道橋が見えた。


川口さんは歩道橋の階段をゆっくり、手すりを持ちながら登る。


歩道橋のてっぺん、その通路の真ん中で彼女は真下を眺めていた。


まさか……。


ん? 反対側から誰かが歩いてくる。 当時の私だ……。


「えっ、川口?」


「…………!」


川口さんは当時の私の声に反応したようにも見えるが、無視して真下の道路を眺めている。


「ちょ、川口! 何してるの!?」


当時の私は血相をかいて川口さんに駆け寄る。


それもそうだ。 彼女は過去の私の目の前で歩道橋から飛び降りようとしていたんだ。


さすがのいじめっ子だった私も反射的に止めに入っていた。


「邪魔しないで! もう嫌なの。 もう疲れたの……。 もう耐えられない、我慢できない、苦しい辛い悲しい悔しい!!」


川口さんは先ほどまでの精気のない顔から一変、鬼のような形相で、抑える過去の私を振り切ろうと暴れる。


「離せ! 離せ離せ離せ離せ離せ離せ離せ、くそぉぁぁぁぁぁぁ!」


ドン!


ついに暴れる彼女を抑えきれなくなった過去の私は真後ろに突き飛ばされた。


突き飛ばされて頭を打った過去の私はついカッとして川口さんに最低の一言を言った。


「あー、もういい勝手にすれば? 大体元はと言えばお前が私の彼氏を奪ったからこうなったんだしぃ? そう私は悪くない、逆に私は被害者だ! お前は罰で私達の玩具になっているのに、その罰を放棄してあの世に逃げるっていうんだからね。 お前が逃げることで私は玩具を失うんだ、お前の行為によって……お前のせいでだ。 最低だ、クズ、ゴミ、飛び降りるなら飛び降りろよ。 知らない知らない私は悪くない、全部お前が悪い!」


改めて過去の私を見て、私は恥ずかしくなった……。 本当にクズなのはどうみても私だ。


「うっ……あ、ぁぁ…………ぅ……」


いざ飛び降りるとなると怖いのだろう。 川口さんは歩道橋の下を見ながら硬直していた。 膝もガクガク震えている。


その様子を見た過去の私はというと……。


「なんだよ、はよ死ねよ。 このヘタレ! お前の最期は私が見届けてやるっつてんだ、いつまでも待たせんなよ! 私達から逃げたいんだろ? それじゃ早くくたばって楽になれよ。 まぁ、お前みたいなクズはあの世でも虐められるだろうけどな。 てことはだ……お前の死後は地獄行きってわけじゃん? はっ、クズにはお似合いだな。 だから早く逝けよ、私はこの後見たい番組があるからお前に構ってられねぇよ。 だから……早く……早く! 早く! 早く死ね!」


マシンガンのように暴言を発していた。


それでも川口さんが飛び降りる様子はない。


その様子に痺れを切らした過去の私は彼女に背を向けて……。


「はーっ、つっまんねぇ! もういいわ、死ぬ死ぬ詐欺かよ。 こういうの腹立つよ。 悲劇のヒロインぶんなってんだよ。 私帰るわ。 また明日から可愛がってやるから楽しみにしてろよ」


捨て台詞を吐きながら歩道橋を降りていった。


…………。


………………グシャッ!!


過去の私が歩道橋から見えない位置まで行ったそのとき、彼女は飛び降りた。


川口さん……死んだんだ。 私が殺したんだ……。


先程の様子を見て私は激しい自己嫌悪に陥った。


しかし過去にしたことは変えられない、私は一生この罪を忘れずに後悔しつづけなきゃ……。


例え地獄から帰還出来たとしても。


「近藤 由美さん、まだ終わっていません。 ほら、川口さんが飛び降りた先を見てみなさい」


サアドは歩道橋の下を指差す。


そこにあったのは、少し前みで川口さんだった何か……つまり肉塊だ。


「あの後、飛び降りた彼女は頭を地面に打ちつけて即死。 しかし死体はしばらくそのまま……最初に轢いた車、それもトラックです。 そしてそのドライバーは無責任にも轢き逃げをし、死体を放置。 それから各部位に細かく別れた身体は朝まで次々と通過する車に轢かれ続け、原型を失ってしまいました」


ひ、ひどい……。


「そして彼女を最初に発見したのは……」


バラバラに散った死体を集めている人がいる。


「この人は……もしかして」


「川口 美咲の兄、川口 創一です。 その後、彼は原型を失った彼女の身体を抱えて帰るのですが、血塗れになった姿を沢山の人々に見られることになります。 そして彼は川口 美咲の殺害を警察に疑われます。 もっとも疑いは監視カメラや最初に死体を轢き逃げしたトラックのドライバーによって晴れることになりますが……」


「そんな……」


「この件がきっかけとなり彼は貴方を激しく憎むこととなり、今回の出来事。 貴方が地獄に堕ちることになりました」


「川口さんのお兄さんと地獄にどんな関係があるの?」


そうだ、いくら憎んでいたとして普通の人間がこんな摩訶不思議な異世界に人を送り込むことができるはずがない。


「それは……彼女が死んで自暴自棄になった彼の意味不明な狂った行動がトリガーとなり、偶発的にこの世界にバグ……即ち超常現象が引き起こされたのです」


「それってつまり、この世界は本当の地獄じゃないってこと?」


「はい、この世界は彼の憎しみが様々なものを巻き込んだ結果構成された、貴方を痛めつけるためだけに作られた異世界なのです」



ここまで読んでくれてる人、ありがとうございます。

稚拙な文章ですが、もう少しで終わるので最後までお付き合い頂けると嬉しく思います。

後、リョナ書けなかった。

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