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勇気を出してSOS

久しぶりの更新です


登場人物紹介

・近藤 由美

いじめられっ子の体験を追体験中。

今回、大きな動きが……。


・由美の母

いじめられている由美を陰ながら心配していた。


・由美の兄?

一人っ子のはずの由美だが、この世界では兄の存在が追加されていた。


・マスター

黒幕。

最後にちょっと彼視点で話が締められる。


・赤松 レイ、零、メインスレイブ00

形だけの地獄王。

マスターの傀儡。


・川口 美咲

由美が虐めてた子。

私がこの偽物の世界に来て早くも三ヶ月が経つ。


その間、私はかつて川口が味わったいじめられっ子の記憶の追体験ということで、数多の暴力に苦しんだ。


机で寝ていたら後ろから首輪を付けられて教室を四つん這いで歩かされる、体育の時間はテニスの壁当ての壁役にされ、給食の時間は残飯を口から容赦なく流される。


下校中は野外で犬のように片足上げて小便するよう強要されたり、野良犬と戦わされたりもした。


ゲームの世界に閉じ込められ、そこではゲームキャラとして戦わされるし、家の風呂を熱湯しか出ないように細工された。


花火大会の時は、花火として空に打ち上げられ、私は空のど真ん中で爆散する様を晒されてた。 体育祭では玉入れと称して、身体の至る所に玉を突っ込まれたりもしたなぁ……。


地獄流にアレンジされたいじめを受けた私は、当然何度も死んでは再生を繰り返した。


そして昨日は唯一、学校内で味方をしてくれていた彼氏の赤松君と別れることを強要され、別れることになった……。 もっともこれは別れる少し前に彼の本性を知ってしまったからなんとも思わないかな……。


そして今は私のいじめられっ子生活四ヶ月目が始まった。


———


二限目が終わり休み時間に入るその時だった。


私の脳内に誰かが語りかける声がする。


『今日……して……に…めの…を言……』


何? 声が小さすぎてよく聞き取れない。


集中してもう一度……。


『今日早退して母親にいじめの事を言え…』


今更……。


そう、今更……。


実はこの三ヶ月間、私は川口の役だからって、黙っていじめられるつもりはなかった。


その間、先生、友人、そして親……頼ることができそうな親に助けを求めようとした。


何度も何度も……。


でもこの世界がそれを許さなかった。


私が誰かにいじめの事実を公言した時、この世界の時間は止まり、目の前に居た物は化け物へと豹変し、私を殺した。


そしてその後、この世界は1日前に時間を巻き戻され、私はその直前の一日をやり直す事となった。


それも川口が今日まで皆にいじめの事実を誰にも喋る事なくただただ我慢していたと言うことだから…… そして私はその台本に沿った範囲でしか行動しかできない……。


それが今更になって親に言う事になるとは……、嫌な予感しかない。


「先生すみません、体調が悪いので今日は早退します……」


でもまぁ、台本に従うしかないからやるしかないんだけどね。


「わかった、気をつけて帰るんだぞ」


「……はい」


川口達が私の行動を不審がっていたが、この際どうでもいい。


今は台本通りにしなくっちゃ……。


———


学校を後にし私は家へと戻った。


「由美、先生から連絡あったけど大丈夫? 体調が悪いならゆっくり休みなさいよ」


お母さんは私の頭を優しくポンポンしながら言った。


……あれ?


うっ、目が……。


眼頭が熱い。 今になって今までの学校生活で味わった辛さ、悲しみ、悔しさ……その全てが溢れ出そうだ。


いや、もうダメだ。 我慢出来そうにない。


あっ、そうか……多分そうだ。


台本が指示した親にいじめの事実を話すタイミング……。


「お母さん……あのね?」


「ん? どうしたの?」


話を切り出した瞬間、ダムが決壊したかのように涙が勢いよく溢れ出す。


「あぐっ……あのね、うぐっ……あっ、わっ……う……うわぁぁぁぁぁ!」


お母さんはおろおろとして困った様子。


そりゃそうよね。 中学生にもなる娘がいきなり小さな子供みたいに大泣きするんだもん……。


そういえば、この世界に来て最初の日もこんなだったな……。


あの時は地獄から帰ることが出来たと勘違いして……。


そうそう……この包み込んでくれている感じ。


暖かい……。


あっ。


気づけばお母さんは泣きじゃくる私を力強く抱きしめてくれていた。


大丈夫、大丈夫だからと安心させてくれた。


ここは偽物の世界、だけどこの瞬間だけは……それを忘れ、私は思い切りお母さんに甘えた。


———


私が泣き出してから二時間ほど経つ。


ようやく落ち着いたので、台本に従いいじめの事実を打ち明ける事にした。


「お母さん、あのね。 私、今まで学校でいじめられていたの」


それを聞いたお母さんは……。


「そう……」


あまり驚いた様子ではなかった。


「なんとなく気づいては居たわ。 由美、あなた毎日服や鞄が凄く汚れていたでしょ? よく教科書だって無くしてたしね。 この前、家の水道から熱湯しか出なくなってたのだって……」


「うん……」


隠し通していたつもりでも、全部お見通しだったんだ……。


「ごめんね、ここまで気づいていて助けてあげられなかったよ……由美が毎日元気に学校に行く様子を見たら言うに言えなくて……」


そうなんだ……。


「とりあえず由美、明日学校に言いにいきましょう? いじめの隠蔽とか心配だけど、まずは先生に言わないとね。 大丈夫、もしダメだったらお母さん、どんな手段を使ってでもあなたを守るから……。 その時は学校も無理して行かなくていい。 もう由美を苦しませない。 だからこれからは一緒に頑張っていこ?」


「うん、私もう少し頑張ってみる」


口だけの赤松君とは違う、しっかりした安心感がお母さんからはひしひしと伝わる。


これでいじめの問題はなんらかの決着がつくかも……。


いや、なんとかしてみせるんだ!


ついさっきまでの大泣きが嘘のよう。 私は再び気合いを入れ直した。


その時、二階から足音がして……。


「おいおい、騒がしいね。 どしたの?」


ボサボサの頭にダサい服、顔は悪くないのにどうにも残念な風貌をしたこの男は……。


「あーっ!」


元の世界で私が川口の家に行った時、一度だけ会ったことがある。


この青年は川口のお兄さん!?


「どうしたどうした俺の顔を見て酷く驚いてんのなー、由美……。 俺が独り立ちして中々会えなくなったからってちょっと冷たいんじゃないかな?」


そっか、今は私と川口が入れ替わってるから私のお兄さんってことかな?


でもお母さんや家は元の世界と一緒だし……。


あれかな、元々お兄さんが居た川口が私の役に当てられて一人っ子になって、穴埋めとして、かわりに川口の役になった私の元に来たとか?


ダメだ、なんか言っててややこしくなってきた。


「ねぇねぇ、久しぶりにお兄さんとお話ししよーよー」


うーん、なんだこいつ……べったりしてきてキモいぞ?


『……創一……』


ん? 脳内に何かが語りかけてくる。


『川口 創一、川口 美咲の兄。 この世界では川口 美咲が近藤 由美に置き換えられているため、その兄、川口 創一を近藤 創一と変換する』


なるほど、今は間違いなくこの男が私のお兄さんなようだ……。


———


〜現実世界・とある高層ビルの上層部にある機械室


「マスター、近藤 由美の所在の座標が判明。 同時にステータスも判明! 現在の近藤 由美の罪(シンズ)ポイントは3。 浄化完了寸前です」


バンッ! バキッ!


しまった、またモニタを殴っちまった……。


「クソッ、クソッ、クソがっー! なんでだよ、このまあじゃせっかくの罰が終わっちまうじゃないか! こんなのアリかよ! そんなのってねーよ、こんなに簡単に罰が終わっちまったら妹の……美咲の魂が浮かばれねーじゃないか!」


「引き続き近藤 由美をささ、ささ、さ」


ガッ!


零が……メインスレイブ00が壊れてきた……。


モニタを殴ったのもあるが、無理な処理を命令させ過ぎたな。


チッ!


「くそっ、役にたたねぇな赤松 レイ! 仕方がない、奥の手だ……俺の残りの寿命の9割を使って赤松 レイ、零の操作権を完全に俺に移す!」


創った世界の中に直接干渉するのは、相応のコスト(寿命)が必要だ。


今まではコスト故に干渉は避けていたが、こうなってはなりふり構っていられない。


「わかりました……マスター、今からマスターの幽体をプログラムとして私の中にインストールします」


待っていろ、近藤 由美。 お前の罪は絶対に終わらせないからなっ!





完結に向けて走り出したせいか、由美にあまり罰を与えられてない気が……。


また近いうちに更新したいです。

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