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24/50

帰る場所

年末

道の駅には県外ナンバーの車が増え始める

大阪 神戸 京都 

名古屋 東京

道の駅では普段見かけない若い顔が並ぶ

「久しぶり」

「あれ 帰っとったん」

そんな声が飛び交う

菫はその様子を見ながら この人たちも

村をでた若者名簿に載っている人たちなんだ

と感じていた


一月三日 朝

まだ冷え込みの残る公民館では

成人式の準備が着々と進められていた

壇上には紅白幕が張られ

村の旗と国旗が整えられる

受付では小川菫が名簿を確認しながら

記念品を一つずつ並べていく

「新田さん この席順で大丈夫ですか」

「うん 来賓席もこれで問題ないと思う」

二人は何度も式次第を見直し

司会台のマイクや音響設備を確認する

開始まであと三十分

晴れ着姿の新成人が一人 また一人と

集まり始める

久しぶりに再会した友人同士が笑顔で

手を振り合い 公民館は少しずつ華やかな

空気に包まれていく

菫は受付を終えた新成人へ笑顔で声をかける

「成人 おめでとうございます」

その一言に

「ありがとうございました」

少し照れくさそうな返事が返ってくる

新田は舞台袖から時計を見つめ

静かに深呼吸

「それじゃあ そろそろ始めましょう」

その合図で会場の照明が少し落とされ

司会席へ向かった菫が

落ち着いた声で開会を告げる

「ただいまより 令和〇年

雨実村成人式を開会いたします」


古川村長はいつも通り挨拶する

「新成人の皆さん おめでとうございます

村の外で学び 働き 

其々の道を歩んでいることを嬉しく思います

雨実村は 皆さんがいつ帰ってきても

『帰る場所』であり続けたいと願っています」

派手な言葉はありません

しかし 新成人たちは静かに耳を傾ける


夜

温泉旅館では恒例の同窓会

料理が並び 笑い声が響く

「大阪どうなん」

「東京の電車 まだ慣れへんわ」

「就職決まった?」

「結婚したん?」

話題は尽きません

そこへ古川村長が顔を出す

「楽しんどるか?」

「村長!」

「久しぶりです!」

村長は一人一人と軽く言葉を交わす

仕事の話はしない 合併の話もしない

「元気そうで安心した」

「身体に気を付けて頑張れ」

「また帰ってこい」

それだけ

最後に旅館を出るとき 

村長は夜空を見上げる

旅館からは若者たちの

笑い声が聞こえてくる

その声を聞きながら小さく呟く

「村を離れても 

この子らは雨実村の子じゃ」

そして静かに家路についた

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