最初の説明会
十二月も終わりに近づいた夕方
空は朝から重たい雲に覆われていた
午後四時を過ぎた頃 白いものが一つ
また一つと静かに舞い始める
今年初めて見る本格的な雪だった
雨実村公民館へ続く坂道には
吐く息を白くしながら歩く住民の姿が続く
肩にも積もる雪を払いながら玄関へ入り
「寒いな」「積もるかもしれんな」と
言葉を交わす
館内では暖房が入れられているものの
外から入り込む冷たい空気が
冬の訪れを感じさせていた
窓の外では 街灯の灯りに照らされた雪が
音もなく降り続いていた
説明会が始まる少し前
公民会の後方には数人の高校生の姿もあった
冬休みで帰省していた生徒や
村から高校へ通う三年生たちである
先生から
「将来の村の話だから
一度聞いてみるといい」と勧められ
自分から足を運んできた者もいた
最前列に座る大人たちとは少し距離を置き
後方の席へ静かに腰を下ろす
菫は受付をしながら その姿に気づいた
あの子たちが この村の次の世代なんだ
前方にはスクリーン
壇上には
古川村長
新田博課長
小川菫主任
総務課職員が並ぶ
村長は最初に短く挨拶します
「今日は何かを決める場ではありません
現在
どのような話し合いが行われているのかを
皆さんに知っていただくための説明会です」
其の後 新田が研究会の経過を説明する
説明が始まると高校生たちは私語一つなく
資料へ目を落とし
ときおり顔を上げて壇上を見つめる
人口推計 財政状況
医療 公共交通
そして最後に
「研究会では 将来の選択肢の一つとして
合併も含めて検討することが望ましい
という報告がまとめられました」
会場は静か 菫は住民の表情を見渡します
腕を組む男性
真剣に資料へ目を落とす女性
何度も頷く高齢者
質疑応答では
「もう決まっとるんか」
「村はなくなるんか
「役場はどうなる」
「税金は」
「学校は」
様々な質問が出る
しかし 新田は一つ一つ丁寧に答えていく
「まだ何も決まっておりません」
「合併すると決まったわけではありません」
「住民の皆さんに十分情報をお伝えしながら
進めていきます」
一方で 若い世代は黙って聞いている
賛成とも反対とも言わない
ただ 大人たちが交わす一つ一つの言葉を
静かに胸へ刻み込むように聞いていた
最後に古川村長が立つ
誰も大声で賛成も反対も言わない
ただ
「考えんといけんな」
そんな空気だけが 公民館を包みこむ




