第6話ものの数十分で一千万
「ちょっと待ってください! 査定、すぐに専門の鑑定士を呼びますから!!」
パニックになった佐藤さんが奥の部屋へと駆け込んでいく。
待っている間、周囲の探索者たちからの視線が痛いほど刺さるが、俺は気にせずスマホで今日の清掃日誌をつけていた。
数分後、奥からギルドのベテラン鑑定士が血相を変えて飛び出してきた。
彼は震える手でルーペを覗き込み、短剣や素材を一通りチェックすると、額の汗を拭いながら俺を見た。
「間違いない……すべて本物、それも過去最高クラスの品質だ。入江殿、これらをどこで……いや、ギルドの規定上、入手経路は問わんな。……査定額が出たぞ」
鑑定士が提示したタブレットの画面には、信じられない数字が並んでいた。
・アシッド・スライムの核(超高純度):50万円 × 3 = 150万円
・マッド・コングの剛毛(最高級):30万円 × 5 = 150万円
・身体強化の魔刃:1,200万円
【合計査定額:1,500万円】
「合計で、一千五百万円になります……。すぐに口座へ振り込みますが、よろしいでしょうか?」
「うん、それでお願い」
俺が淡々と頷くと、周囲の探索者たちが「一千五百万……!?」と白目を剥いて卒倒しかけていた。
Aランクのトップ探索者でさえ、数日間の命がけの遠征でようやく稼げるかどうかの大金だ。それを、防護服を着ただけの戦闘力ゼロの男が、ものの数十分の『お掃除』で稼ぎ出してしまったのだから無理もない。
チン、とスマホが鳴る。
画面には、ネット銀行の残高が一瞬で【15,000,000円】増えた通知が表示されていた。
「これまではギルド『天穿』の月給20万円で、お宝の分け前も全部搾取されてたからな。……やっぱり独立して大正解だった」
天穿のリーダーは、俺を追放するとき「お前みたいな戦闘力ゴミの清掃員を雇っておくのはコストの無駄だ。これからは俺たちの手でダンジョンを最速攻略して、もっと稼ぎまくってやる!」と大見栄を切っていた。
だが、彼らは致命的な勘違いをしている。
俺が掃除をサボったダンジョンが、どれほど恐ろしい「地獄」へと変貌していくのかを。そして、清掃員を失った彼らのギルドが、ここからどれほど悲惨な転落を遂げるのかを。
「さて、資金もできたし、明日はもっと強力なプロ用の洗剤と、最新の高圧洗浄機を買いに行こうか」
俺はホクホクの口座残高を眺めながら、これからの『お掃除無双』に胸を躍らせ、堂々と換金所を後にした。
その頃、俺を追放したギルド『天穿』のメンバーたちは、自分たちの足元へじわじわと迫る『最悪の異臭と呪い』の恐怖に、まだ気づいていなかった―
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