第4話汚れの裏に眠る山
ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ!
俺が完璧なストロークで床をこするたび、ブラシの毛先から【特殊清掃】の魔力が弾け、黄金の波動が部屋全体へ波紋のように広がっていく。
【スキル発動:環境再生】
煤煙で真っ暗だった視界が、一瞬にして晴れ渡る。
壁の焦げ付きは消え去り、床にへばりついていた魔獣の血痕も、まるで最初から何もなかったかのように完全に消滅した。
ただ綺麗なだけじゃない。ダンジョンが生成された当時の、あの神聖さすら感じるほどに澄んだ空気が、部屋の隅々まで満ちていく。
わずか十五分。
『天穿』の連中がめちゃくちゃに荒らしたボス部屋は、新築マンションの内見会場ばりにピカピカの空間へと生まれ変わっていた。
『ピコーン!』
待ってましたと言わんばかりに、脳内にシステムメッセージが連打される。
【ボス部屋の完全環境再生を達成しました】
【清掃報酬:マッド・コングの剛毛(最高級防具素材)×5を入手しました】
【清掃報酬:大容量の魔力結晶(特大)×1を入手しました】
【隠された汚れの除去に成功:レア宝箱が出現します】
「……おいおい、マジかよ」
ピカピカになった部屋の中央。
何もない空間から、ボコォン!と音を立てて、豪華な装飾が施された金色の宝箱が出現した。
これこそが、俺のスキルの真の壊れ(バグ)性能だ。
ダンジョンは、不衛生な汚れを極端に嫌う。逆に、完璧に清掃して環境を再生すると、システムが「ボーナス」として、通常の討伐では絶対に手に入らない特殊な報酬や、隠されたレア宝箱を吐き出す仕様になっているのだ。
パカリ、と宝箱を開ける。
中に入っていたのは、眩い光を放つ一本の短剣だった。
「これ……『身体強化の魔刃』じゃねえか。市場に出れば、軽く一千万円は値がつくヴィンテージ級のアーティファクトだぞ」
天穿の連中が必死にボスを倒して手に入れたのは、せいぜい数百万円程度の素材だけだったはずだ。
彼らが「汚い」「面倒だ」と放置したゴミを片付けただけで、その数倍の価値がある国宝級のお宝が、俺の手元に転がり込んできた。
「あいつら、俺を追放して『コストカットだ』なんて喜んでたみたいだけど……」
もし俺が掃除をしなければ、ダンジョンは汚染され、次のモンスターが異常に強化される『変異』が起きる。おまけに、こんな極上のお宝が出るチャンスを、彼らは自らドブに捨て続けているわけだ。
本当の無能がどちらなのか、そろそろ思い知る頃だろう。
「さてと。これだけの素材と魔刃だ。ギルドの換金所に持っていけば、受付の姉ちゃんがどんな顔をするか見ものだな」
俺は一千万円の短剣を無造作にリュックへ放り込むと、一本のデッキブラシをスマートに担ぎ、鼻歌を交じりにダンジョンの出口へと歩き出した。
戦闘力ゼロの清掃員が、世界を札束で殴り倒す無双劇。
その快進撃のスピードは、ここからさらに加速していくことになる。
鼻歌交じりにその場を後にした。
読んでいただきありがとうございます!
評価と、ブックマークおねがいします!
次回もお楽しみに!




