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第39話 全宇宙の総帥へ


 宇宙の最果てに眠っていた百億年分の汚部屋を完璧にクリーンアウトし、宇宙の根源神から『太陽系および隣接する三つの銀河の絶対的所有権(利権)』を授かった俺たちは、超時空環境再生船『クリーン・エデン号』で地球へと凱旋帰国を果たした。


空港の滑走路。

輸送機のタラップを降りた俺を待っていたのは、人類の歴史上、いかなる国王や大統領も受けたことのないような、文字通り国家を超越した特大の歓迎セレモニーだった。

 赤絨毯が敷かれた滑走路の左右には、国連の全加盟国の国旗がたなびき、数千人の報道陣のフラッシュが真昼の太陽のように激しく炸裂している。


「ーーおかえりなさいませ、入江湊総帥! 地球、そして全宇宙をバグによる崩壊から救った、我ら人類の救世主よ!」


 国連の最高幹部たちが一斉に最敬礼で俺を迎え、周囲の自衛隊やアメリカ軍の儀仗隊が、空に向かって一斉に祝砲の銃声を響かせた。


 その群衆の片隅で、泥水に塗れ、汚物まみれになって警察の連中に引きずられていく、かつて俺を「戦闘力ゴミの役立たず」と追放したクレイの、みじめな泣き叫ぶ声が風に乗って聞こえてきたが、俺はもう、彼に一瞥をくれる価値すら感じなかった。

 月給二十万で俺を酷使し、傲慢に笑っていた無能たちは、すでに自分たちの犯した罪の重さの前に、歴史の闇へと消え去ったのだ。


「入江社長……いえ、これからは『全宇宙環境再生連盟』の初代総帥、ですね」


 俺の隣にぴったりと寄り添う、副社長の神城かみしろさんが、美しい真紅の瞳に深い尊敬と愛情を宿して微笑んだ。


「本日をもって、地球上のすべての探索者ギルド、および他星系の異星人連盟は、我が『IGEグループ』の傘下に正式に加わりました。これからの新時代、剣を振るう戦闘職はすべて、あなたのライセンスの下で『お掃除の裏方』として働くことになります」



「ハハ、戦闘力自慢の筋肉ダルマどもが、こぞってデッキブラシの持ち方の講習会に参加してる光景は、いつ見ても笑えるぜ!」


 後ろで我が社の最高級エリート警備隊長となったゴウが、豪快に笑い声を上げる。


「私の隠密スキルも、今やダンジョンのゴミを誰よりも早く回収するための『爆速ポイ捨て取り締まりスキル』に進化しちゃったわ。入江総帥、これからの指示をお願いね」


 リンも二振りの短剣をスマートに鞘に収め、誇らしげに胸を張った。


 俺が変えたのは、地球の環境だけではない。

 「モンスターを倒して暴れる戦闘職こそが至高」という、十年間にわたり人類を支配していた歪んだ常識を、一本のデッキブラシによって根底から覆したのだ。

 使った場所を綺麗にし、インフラを再生する『清掃員』こそが、世界の、そして宇宙の頂点に君臨する真の絶対強者なのだと、全人類が骨の髄まで理解した瞬間だった。


「よし、みんな。歓迎セレモニーはこれくらいにして、さっそくIGE本社の最高層オフィスに戻ろう。全宇宙のインフラの全権を委任されたんだ、これからやるべき大掃除の計画書が、山積みになっているはずだからね」


 俺が黄金に輝くモップ『神聖迷宮再生のディバイン・ロッド』をスマートに肩に担ぎ直し、不敵な笑みを浮かべると、数千人の群衆から、再び地鳴りのような特大の喝采が巻き起こった。


読んでいただきありがとうございます!

評価とブックマークをおねがいします!

次回最終話!お楽しみに!

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