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第40話 デッキブラシは世界を、未来を輝かせる


 株式会社・入江グローバル環境再生(IGE)のメガタワー最上階、総帥室。

 俺はふかふかの高級社長椅子に深く腰掛け、窓の外に広がる、澄み渡った東京の美しい青空を眺めていた。

 かつては不気味な紫色の毒ガスや黒い汚泥が溢れ出ていたダンジョンの裂け目たちも、今や我が社の『全自動一括クリーンシステム』によって完全にハックされ、街全体に清浄な酸素と、心地いいラベンダーの香りを供給する「超巨大な空気清浄機」へと生まれ変わっている。


「総帥、こちらが本日の、全宇宙のドロップ報酬および清掃ボーナスの買い取り明細になります」

 神城さんが優雅な所作で、俺のデスクの上に最新のホログラム書類を展開した。

 そこに並んでいた数字は、もはや国家予算どころか、銀河系の総資産を毎分ごとに塗り替えるほどの、天文学的な額の資産データだった。


・全地球ダンジョン一括定期除菌ボーナス:3,000億円

・太陽系外縁部ブラックホール定期吸引利権:1兆5,000億円

・根源神直属・銀河系環境維持報酬:太陽系・三銀河の絶対利権より、毎秒ごとに無限加算


「……うん、相変わらずお掃除チートのバグ性能は、実入りが良すぎて笑えてくるな。ものの数分でこれだけの富が転がり込んでくるんだから」


 俺がスマホの画面を眺めながら呟くと、ソファで高級なお茶菓子を食べていたゴウとリンが、感心したようにため息をついた。


「ガハハ! 旦那が床を磨けば磨くほど、世界中の銀行のシステムが悲鳴を上げて札束を吐き出すんだから、誰も戦闘なんてしなくなるわけだぜ!」


「今や世界中の子供たちの将来の夢、第一位が『IGE公認のプロ清掃員』だものね。戦うだけの古い探索者なんて、もう歴史の教科書の中にしかいないわ」


 リンの言う通り、かつて俺を「戦えないゴミ」と見下して追放した元ギルドの連中や、傲慢に笑っていた戦闘職たちは、今や全員が、我が社の発行するお掃除ライセンスを取得するために、必死になって床を磨く基礎訓練に明け暮れている。

自分の使った現場を汚したまま逃げ出すような無能に、これからの新世界を生きる資格は、一ミリも残されていないのだ。


「総帥。NASA、およびアンドロメダ異星人連盟から、次の現場への出動要請が正式に届いております」

 神城さんが画面を切り替えると、そこには、宇宙の彼方で新たな時空の歪みを起こし、不衛生な汚れを溜め込みつつある、未踏の超巨大銀河の映像が映し出されていた。


「よし、それじゃあ仕事・ ・ ・に行こうか。どれだけ強大で禍々しい名前がついていようが、俺にとっては、ただの長年放置された頑固なゴミ屋敷に過ぎないからね。プロの意地と最高の技術で、チリ一つないクリーンルームに変えてやろう」


 俺は立ち上がり、黄金に輝くモップ『神聖迷宮再生のディバイン・ロッド』を力強く、そしてスマートに握り締めた。


 戦闘力は完全なるゼロ。攻撃魔法も使えなければ、剣を振るう筋力もない。

 だからこそ、誰よりも現場の泥に塗れ、プロとしての誇りを持って床を磨き続けた。

 その結果が、地球を救い、宇宙の理をひっくり返し、全次元の頂点たる『絶対の大富豪・総帥』への、前代未聞の成り上がり劇だった。


「どこまでも、あなたと共にお伴いたします、入江総帥」

 神城さんが美しく微笑み、俺の隣に並ぶ。ゴウとリンも、誇らしげな笑顔でそれぞれのブラシのヘッドをカチリとセットした。


 世界に、そして宇宙の最果てに「汚れ」がある限り。

 俺の持つ究極のデッキブラシは、これからも全次元のバグを洗い流し、輝かしい未来の光を、どこまでもピカピカに照らし続けていくのだった。




今まで読んでいただきありがとうございます。

高評価と感想をお待ちしています!

この作品はこれで最終話となりますが、別の作品も投稿しているので、ぜひ御覧ください。

それではまた、別の作品でお会いしましょう!

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