第38話 神からの報酬、銀河の利権
「……本当に、戦わずに宇宙最高の災厄を『除菌・消滅』させちまった……」
護衛隊長のゴウが、自身の魔導大剣を床に落とし、戦慄した表情で俺の持つデッキブラシを見つめていた。
「入江の社長……あんた、人類の歴史どころか、宇宙の物理法則まで完璧に『大掃除』しちまったよ。もうあんたの前に跪かない生命体なんて、この宇宙に存在しねえぞ」
「私の最強の隠密スキルでも、あの完璧なクリーン空間の前には一ミリも隠れられないわね。入江さん、あなたはもう、本物の『お掃除の神様』よ」
リンも呆れたように笑いながら、俺に向かって深々と頭を下げた。
そして、静まり返る純白の空間に、パチン、と指を鳴らす音が響いた。
「ーー実に見事だ、入江 湊。私の想像を遥かに超える、完璧な『クリーンアウト』だったよ」
空間の奥から、無数の銀河や星々をその身に宿した、宇宙の根源神(迷宮の創り手)が、感動のあまりその瞳を潤ませながら姿を現した。神は俺の前に歩み寄ると、惜しみない拍手を送りながら、黄金に輝く一枚の『宇宙間利権書』を俺の手に握らせた。
「約束通り、報酬を授けよう。本日この瞬間から、君は『太陽系、および隣接する三つの銀河の絶対的所有権(利権)』を持つ、宇宙の絶対支配者の一員だ。君がIGE清掃グループの社長として発行するお掃除ライセンスは、全宇宙の共通通貨としてすべての星々で流通することになるだろう」
銀河の利権。地球という星そのものの価値を数億倍上回る、文字通り神の報酬が、俺のネット銀行のアプリの画面に【太陽系・三銀河の利権:所有】というあり得ないステータスとなって反映された。
「ありがとうございます、根源神さん。百億年分のゴミ屋敷、プロの清掃員として、これ以上ない最高にスッキリする現場でした。これで宇宙のインフラも、しばらくは目詰まりを起こさないでしょう」
俺が黄金のモップをスマートに担ぎ直して告げると、根源神は「フフ、君のようなプロフェッショナルがいてくれて、この宇宙も本当に救われたよ」と満足そうに微笑み、光の中に消えていった。
モニターの向こう側ーー地球の国連本部、ホワイトハウス、さらには全銀河の宇宙人たちの観測所では、数十億の生命体が一斉にスタンディングオベーションをしながら、驚愕と感動のあまり大号泣で拍手を送っていた。
「入江社長……! 本当にお疲れ様でした!」
副社長の神城さんが、その美しい目に涙を浮かべながら、俺の手を両手で強く、強く握り締めてきた。
「これで地球も、宇宙も、すべてが救われました。私たちは、世界最高の社長であるあなたに、一生ついていきます!」
「ああ、ありがとう。それじゃあ、地球へ帰ろうか。新本社のオフィスも、一ヶ月空けてるから少し埃が溜まってるかもしれないしな」
俺が不敵に笑うと、ゴウとリンは「宇宙を救った直後に本社の埃を気にするなんて、やっぱり旦那は筋金入りのプロだな!」と豪快に笑い声を上げた。
かつて月給二十万の薄給で酷使され、ゴミのように追放された戦闘力ゼロの清掃員。
その男が今や、宇宙の根源神すらもファンにし、数有る銀河の利権を手にした、名実ともに全宇宙の頂点たる『絶対の大富豪・社長』へと君臨した瞬間だった。
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