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第34話 ブラックホール、吸引モードにハックされる


 宇宙船の外壁に降り立った俺の目の前には、すべてを飲み込もうとする圧倒的な暗黒のが広がっていた。

 地球上の全観測所、そして国連の最高幹部たちがモニターの前で「正気か!? あの日本の少年は、宇宙の物理法則に挑んで消滅する気か!」とパニックになり、頭を抱えたまさにその瞬間。


 俺は手元の『神聖迷宮再生のディバイン・ロッド』のモードを、最強の『天体級・逆転吸引モード』へとカチリと合わせた。


「宇宙系高密度歪み、および百億年分の時空油膜の成分分析完了。……神話級特製・次元界面活性剤、全方位散布コスモ・ミキシング


 ゴオォォォォォォォォォン!!!


 俺の背中の魔導タンクが、ビッグバンをも凌駕するほどの、目も眩むような純白の『超越クリーン波動』を大爆発させ、太陽系外縁部の暗黒の宇宙空間を真っ白に染め上げた。


 ノズルから解き放たれたのは、泡やミストなどという概念すら超えた、時空の歪みそのものをクリーンに書き換える『神の洗浄液』だ。


 シュババババババババババババッッッ!!!


 激しい閃光とともに放たれた純白のナノ泡の津波が、ブラックホールの漆黒の渦と正面から激突した。

 次の瞬間、NASAの科学者たちが椅子から転げ落ちた。


 光すらも捉えて離さなかったブラックホールの絶望的な破壊重力が、俺の放った泡に触れた瞬間にジュワジュワジュワ……と心地いい音を立てて、ただの『超強力な業務用掃除機の吸引力クリーン・サクション』へと、秒速でハックされていったのだ。


「よし、目詰まりを起こしていたバグデータの消去完了。排水口の詰まりが取れたなら、あとは周辺のゴミを全部吸い込ませるだけだ」


 俺は黄金に輝くモップの柄を両手で引き絞り、ブラックホールの中心に向かって、真っ直ぐに突き出した。

 ザーーーーッ!!!


【スキル発動:天体級・全宇宙強制吸引清掃ユニバース・クリーンアウト


 ピカァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!

 デッキブラシの毛先から放たれた黄金の光波が、ブラックホールの重力波と同調し、周囲数光年に広がっていた宇宙怪獣の死骸、怨念の煤煙、時空のシミを、凄まじい勢いでその漆黒の渦へと引きずり込んでいく。

 ブラックホールという宇宙最大のバグを、俺はただの『超巨大ルンバ』として手懐けてしまったのだ。


 数光年分の宇宙のゴミが、ブラックホールの強力な吸引力によって一分子残さず吸い込まれ、その内部で俺の特製洗剤と混ざり合うことで、純度100%のクリーンなエネルギーへと精製されていく。

 そして、周辺のすべての汚れが吸い尽くされ、ブラックホール自体も「完璧に清掃」されて不純物がゼロになった瞬間ーー。


 パリン、と美しい鈴の音が宇宙空間に響き渡った。

 光すら飲み込んでいた漆黒の天体は、眩い虹色の『銀河魔晶(神話級レア・換金価値:5,000億円)』へと姿を変え、ゴロゴロと宇宙空間に転がった。


「……ブラックホールの掃除、予想以上に実入りがいいな。ものの五分で五千億か」

 俺が平然とそれを宇宙船の回収アームでリュックに放り込む横で、ブリッジにいたゴウとリン、そして神城さんの三人は、完全に魂が抜けた顔で床に四つん這いになっていた。


「た、戦わずに……ブラックホールが、掃除機にハックされて宝石に変わった……?」


 リンがうわごとのように呟く。

「入江の社長……あんた、宇宙の物理法則まで『大掃除』しちまったよ……」

 ゴウが戦慄した表情で、俺の持つデッキブラシを見つめていた。


 地球の片隅の泥の中で無能どもが泣き叫んでいる頃、俺の【特殊清掃】スキルは、宇宙のバグすらも道具として手懐ける、完全なる『全宇宙のインフラの神』として、その名を銀河全体に轟かせるのだった。


読んでいただきありがとうございます!

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