第33話 宇宙最悪の巨大バグ、ブラックホール
「ーー見えてきました、入江社長。あれが宇宙開発局が指定した、太陽系外縁部に位置する超巨大ブラックホール『タイタン・ヴォイド』です」
宇宙の根源神と契約を交わした翌日。
俺たちは国連と『創世』が国家予算を数年分つぎ込んで建造した最新鋭の超時空環境再生船『クリーン・エデン号』のブリッジにいた。
副社長の神城さんが操作するメインモニターに映し出されていたのは、光すらも歪めてすべてを飲み込む、漆黒の絶望的な暗黒の天体だった。
その周囲には、過去に戦闘系宇宙探索者たちが撃破した宇宙怪獣の残骸や、数億年分の時空のシミ、そして歪んだ次元のバグがどす黒い渦となって渦巻いている。
宇宙が百億年かけて溜め込んできた、文字通り『宇宙最大のゴミ溜め』だった。
「ひええ……、近くで見る 暴走したブラックホールは、迫力が違いすぎるぜ。旦那、あんなものに近づいたら、俺たちの船なんて一瞬で分子レベルに分解されて吸い込まれちまうぞ!」
護衛隊長のゴウが、冷や汗を流しながら窓の外の暗黒を見つめる。
「私の影移動のスキルでも、あの重力からは逃れられない。入江さん、本当にこれを『掃除』するなんて可能なの……?」
リンも二振りの短剣を握りしめ、いつになく緊張した面持ちで俺を見た。
「大丈夫ですよ、二人とも。プロの清掃員として言わせてもらえば、ブラックホールなんてのは、宇宙のインフラが目詰まりを起こして発生した、ただの『巨大な排水口の詰まり』に過ぎません」
俺はふっと不敵な笑みを浮かべると、肩に担いだ神のモップ『神聖迷宮再生の柄』のロッドを強く握り直した。
これまでの地球上の常識では、ブラックホールは近づいてはならない死の天体だった。
だが、固有スキル【特殊清掃】が神話級・超越スキルへと進化した今の俺には、あの暗黒の天体が放つ重力波の正体が、ただの「未処理の汚染魔力」が引き起こしているバグデータに過ぎないことが一目で分かっていた。
「神城さん、船をブラックホールのイベント・ホライズン(事象の地平線)の限界まで接近させてください」
「承知いたしました、入江社長。クリーン・エデン号、最大推力で前進します!」
神城さんの毅然とした号令とともに、宇宙船が漆黒の渦へと突入していく。
キィィィン……! と船体が凄まじい重力で軋み、アラートが鳴り響く。
「よし、仕事の時間だ。百億年分の宇宙の詰まり、一気にするりと開通させてやろうか」
俺は宇宙服のヘルメットをロックし、神のモップを構えて、宇宙船の外壁へとテレポートした。
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