第32話神の依頼、報酬は『銀河の利権』
「宇宙全体の大掃除、ですか」
俺の言葉に、星々の身体を持つ宇宙の根源神は、深く深く頷いた。
「そうだ。この宇宙が誕生して百億年余り。数多の星々の知的生命体が、私と同じように『手抜き攻略』を続け、宇宙のあちこちに処理しきれない膨大な負の遺産。
ーー数次元規模の汚染物質や、暗黒のバグ『ブラックホール』を放置し続けてきた。その結果、宇宙全体のインフラは今、君たちの言葉で言えば『超絶ブラックな汚部屋』と化しているのだよ」
神が手をかざすと、社長室の空間に、ドス黒い闇に侵食され、崩壊しかけている何百もの銀河の映像がホログラムとなって浮かび上がった。
「戦闘力自慢の宇宙の英雄どもは、悪を滅ぼすことしか頭にない。だが、その後に残された数光年規模の『怨念の煤煙』や『時空のシミ』を放置する。そのせいで、宇宙の寿命そのものがバグで縮まりつつある。……入江 湊、これを完璧にクリーンにできるのは、全宇宙、全次元を探しても、神話級超越スキルを持つ君しかいないんだ」
神は真剣な眼差しで俺を見つめ、神々しい黄金に輝く一通の『宇宙間契約書』を俺の前に差し出した。
「国連の提示した1兆円など、私から見ればただのチリだ。もしこの依頼を引き受けてくれるなら、報酬として……君に『太陽系、および隣接する三つの銀河の絶対的所有権(利権)』を授けよう。君は名実ともに、宇宙を支配する神の一員となる」
銀河の利権。一国の国家予算どころか、地球という星そのものの価値を数億倍上回る、文字通り神の報酬だった。
俺はふっと不敵な笑みを浮かべ、愛用の黄金のモップ『神聖迷宮再生の柄』をしっかりと握り直した。
「いいですよ。百億年分の宇宙のゴミ溜め、プロの清掃員として、これ以上ないやり甲斐のある現場です。まとめて綺麗に『全自動・強制洗浄』してやりましょう」
「素晴らしい! 契約成立だ!」
神が嬉しそうに指を鳴らした瞬間、パチン、と音が響き、止まっていた世界の時間が再び激しく動き出した。
「ーーハッ!? 入江社長、今、何かが……!?」
神城さんがハッと息を呑み、即座に魔法の杖を構える。ゴウとリンも、社長室の空気が一瞬にして『宇宙の深淵』のような神聖なエネルギーで満たされたことに気づき、驚愕の表情で周囲を見回していた。
だが、さっきまでそこにいた根源神の姿はすでに消えており、俺のデスクの上には、太陽のように眩く輝く、神の契約書だけが残されていた。
「神城さん、ゴウ、リン。急に申し訳ないんだけど……明日からの仕事の予定、すべて変更で」
俺が契約書をスマートにリュックへ放り込みながら告げると、三人はポカンと口を開けた。
「ええと……入江社長、次はどこのダンジョンへ……?」
「いや、次はダンジョンじゃないよ。明日からは、創世グローバル環境再生(IGE)の『宇宙・全銀河大掃除ツアー』の開始だ。まずは、あの宇宙で一番汚れているバグーー『ブラックホール』の徹底吸引と除菌から始めようか」
俺が不敵に笑うと、ゴウは「ブラックホールを掃除ぃ!?」と椅子から転げ落ち、リンは「もうこの社長についていくなら、驚くだけ無駄ね……」と呆れたように笑った。
元ギルドの無能どもが、地球の片隅の泥の中で泣き叫んで消え去っていった裏で。
戦闘力ゼロの最強清掃員は、ついに神の依頼を受け、宇宙全体の汚れを消し去るための、前代未聞の『星間お仕事無双』へと旅立つ。
世界の、いや、宇宙の理すらもピカピカに塗り替える伝説が、いま、始まる。
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