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第31話 宇宙の根源神、現る


「ーー入江社長。NASA、および国連の宇宙開発局から、緊急の感謝状と新たな要請が届いています」

 全面ガラス張りの超高層メガタワー、『株式会社・入江グローバル環境再生(IGE)』の社長室。

 副社長の神城かみしろさんが、ホログラムディスプレイに宇宙空間の美しい映像を映し出した。

そこには、数日前に我が社の特殊重機と俺のスキルによって、チリ一つなく完璧に清掃された、地球の軌道上の映像が広がっていた。


「これまで人類が半世紀以上かけて排出し、誰も片付けられなかった数百万個の『宇宙ゴミ(スペースデブリ)』ですが……入江社長が一振りされただけで、すべて純度100%の超希少金属へと精製・回収されました。世界の宇宙開発は、あなたの手によって百年前進したと大騒ぎです」

「はは、ただの『そらの大掃除』ですよ。放置されたゴミは、衛星にぶつかったら危ないですからね」

 俺はふかふかの社長椅子に座り、優雅にコーヒーを口に含んだ。


 地球上の全ダンジョンを綺麗にし、一兆円の資産を手に入れ、世界の頂点に君臨した俺の次の仕事は、地球の外の世界ーー宇宙のインフラ清掃だった。

 今や我が社の売上高は一国の国家予算を遥かに超え、世界のパワーバランスの頂点に『IGE清掃グループ』が君臨している。


 だが、その有意義な時間を打ち破るように、突如として社長室の空間が、ガラスが割れるような音を立てて『静止』した。


 時計の針が止まり、窓の外の東京の街並みがモノクロームの色に染まる。

 世界最強の魔導士である神城さんも、ソファでくつろいでいたゴウやリンも、まるで彫刻のように完全にその場で動きを止めていた。


「ーーお見事。まさか、私が地球という星に配置した『バグ』を、これほど見事に、かつ美しく片付けてしまう人類が現れるとはね」


 社長室の中央、何もない空間から、目も眩むような純白の光を放つ『存在』が姿を現した。

 それは、人間の形をしているようでいて、その輪郭には無数の銀河や星々が渦巻いている、言葉を失うほどに神聖な姿だった。

 固有スキル【特殊清掃】が、目の前の存在のステータスを脳内に強制表示する。 

だが、そこに並んでいたのは、人類の常識を遥かに超越した、ただ一言の記述だった。


【種族:宇宙の根源神(迷宮の創り手)】


「……あなたが、十年前から地球に『ダンジョン』を生み出し続けていた張本人ですか」


 俺が平然と問いかけると、宇宙の神は驚いたようにその星々の瞳を細め、クスクスと気品高く笑った。


「時の静止の中で、私の威圧に耐え、平然と問いかけてくるか。やはり君は面白い。そう、私がシステムを作り、モンスターという名の『世界の汚れ』を地球へ排出し続けていた神だ。本来なら、人間どもが互いに争い、星を汚して自滅するはずだったのだが……君がすべて、綺麗サッパリと除菌・洗濯してしまった」


 神は優雅な所作で俺のデスクへと歩み寄り、その白銀の手を俺の前に差し出した。


「入江 湊。地球を綺麗にしすぎた君に、私から『最後の特大依頼』を授けよう。……君のそのデッキブラシで、今度は『宇宙全体』を大掃除してくれないかい?」


読んでいただきありがとうございます!

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