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第29話 世界一の清掃会社の誕生



 地球全域のダンジョン汚染を統括していた最凶の災厄『ワールド・ポルーション』を、モップの一振りで完璧に「消滅クリーンアウト」させてから一ヶ月。

 世界を滅ぼしかけていた紫色の毒ガスや黒い汚泥は嘘のように消え去り、地球の空気はダンジョン出現前よりも遥かに清浄なものへと生まれ変わっていた。


 国連から約束通り『報酬:1兆円』が口座へ一括で振り込まれ、地球環境の全権を委任された俺は、日本へ帰国してある巨大なプロジェクトを立ち上げていた。


「ーー入江様、こちらが本日設立された、我が社の新本社のビルになります」

 東京の超一等地、かつて大手ギルドが軒を連ねていたエリアの中心にそびえ立つ、全面ガラス張りの超高層メガタワー。

 その最上階の社長室で、俺の秘書兼副社長となった神城かみしろさんが、誇らしげに窓の外の景色を指差した。


 ビルのエントランスに掲げられたゴールドの社名はーー『株式会社・入江グローバル環境再生(IGE)』。

 戦闘力ゼロの元薄給清掃員だった俺が、たった一人で立ち上げた、今や世界中の国家や国連すらも逆らえない、地球最大のインフラ企業である。


「いやあ、本当に凄いビルだな、旦那! 毎日ここに出勤できるなんて、夢みたいだぜ!」

「社内のセキュリティも完璧。私の短剣を使う機会なんて、もう二度と来ないかもしれないわね」

 社長室のふかふかの高級ソファに座り、お気に入りのコーヒーを飲みながら笑っているのは、我が社の「エリート警備・兼お掃除サポート部隊」の隊長となったゴウとリンだ。

 彼らのようなSランク探索者たちが、今や俺の会社で働くことを最高のステータスとして、喜んでデッキブラシを握ってくれている。


「神城さん、本日の求人の応募状況はどうなっていますか?」

 俺がデスクに座りながら尋ねると、神城さんは嬉しい悲鳴を上げながら、タブレットに表示された驚異的な数字を見せてくれた。


「はい、入社希望の応募ですが、本日だけで世界中から【十万人】を超えております。アメリカのトップギルド『自由の盾』のリーダーだったブラッドさんからも、『どんな過酷な現場でもいい、モップの替え糸持ちからでもいいから雇ってくれ!』と、涙ながらの国際電話が何度もかかってきています」

「ブラッドがモップ持ち、か。まぁ、真面目に床を磨くなら、不採用にする理由もないけどね」


 俺がクスリと笑う。

 これまでの世界では、剣を振り回し、魔法を放つ「戦闘職」こそが花形であり、正義だった。

 だが、俺がその常識を完全に破壊した。

 ダンジョンを正しく掃除し、環境を再生する「清掃員」こそが、莫大なお宝と富を引き出す真の勝者であり、世界で最も価値のある『神職』なのだと、全人類が骨の髄まで理解したのだ。


 今や、世界中のエリート探索者たちが、戦闘を捨ててこぞって我が社の「お掃除ライセンス」を取得しようと必死になっている。

 かつて俺を「戦えないゴミ」と見下して追放した、すべての無能どもに見せてやりたいほどの、圧倒的な成り上がりの光景だった。


読んでいただきありがとうございます!

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