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第23話ペンタゴン最深部、大統領の生中継


 神のモップ『神聖迷宮再生のディバイン・ロッド』の力を得た俺にとって、SS級ダンジョンの道中など、ただの『少し広い廊下のお掃除』に過ぎなかった。

 地下二階から最下層の地下八階まで、俺はただ鼻歌を交じりに黄金のモップを一振りし、特製洗剤を噴射していった。そのたびに、アメリカ政府が数年間頭を悩ませてきた有害汚染物質がシュワシュワと心地いい音を立てて消滅し、後には高級ホテルのようなピカピカの空間と、数億円単位の超レア素材の山が残された。


「入江の旦那、マジで歩く国家予算だな……」

「アメリカのトップパーティが後ろで荷物持ちをしてる光景なんて、一生拝めないと思ってたわ」

 護衛のゴウとリンが呆然と呟く。彼らの言う通り、俺たちの後ろには、さっきまで俺を「ホウキ持ちのガキ」と見下していたアメリカ最高のギルド『自由の盾』の精鋭たちが、言葉を失ったまま俺の回収した素材の詰まった重いリュックを、顔を真っ赤にして運んでいた。プライドを完全に粉砕されたブラッドは、もはや借りてきた猫のように大人しく、俺の指示通りにモップの替え糸を持って控えている。


「ーー入江様、ここが最深部。ボスの部屋です」

 神城かみしろさんが、重厚なチタン合金のゲートの前で足を止めた。

 そのゲートの上部には、多数の監視カメラが設置されている。

「現在、このカメラの映像は、ホワイトハウスの大統領執務室、そしてペンタゴンの統合参謀本部の最高幹部たちへリアルタイムで生中継されています。世界中の重鎮たちが、今、あなたの『お掃除』を息を呑んで見つめています」


「大統領が生中継、ですか。まあ、やることはいつもと同じですよ」

 俺は平然と答えると、チタン合金のゲートをゆっくりと押し開けた。

 プシューーーー……と冷たい風が吹き抜ける。


 その部屋の光景は、まさに『世界の終わり』を体現していた。

 広大な格納庫のようなステージの中央に鎮座していたのは、ドロドロとした緑色の腐食液と、ドス黒い重油のような液体が絡み合って形成された、全長十五メートルを超える巨大な不定形魔獣ーーSS級ダンジョンの主、『デス・ケミカル』だった。

 それは息をするだけで、周囲の鉄鋼をボロボロに溶かすほどの『超高濃度複合酸ガス』を放出している。かつてアメリカのトップ探索者たちが数百人規模で挑み、防具をすべて溶かされて全滅しかけたという、世界最悪の化学兵器の化身だ。


『オガァァァァァァァァァァッッッ!!!』

 デス・ケミカルが俺たちの侵入を検知し、耳を劈くような金属摩擦音のような咆哮を上げた。と同時に、部屋の床一面から、触れるだけで骨まで一瞬で融解させる猛毒の化学汚泥が、巨大な津波となって俺たちに向かって押し寄せてきた。


「危ない! 全員、最大出力の複合魔導シールドをーー!」

 ブラッドたちがパニックになりながら叫んだ。だが、その絶望の津波の前に、俺は一人、静かに一歩を踏み出した。


「ーーお待たせしました。これより、頑固な油汚れの『特別集中洗浄』を開始します」

 俺は黄金に輝くモップを掲げ、不敵に微笑んだ。


読んでいただきありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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