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第22話星条旗の前で、ナノ洗浄



「うわっ!? 全員、魔導結界を展開しろ! 毒霧を吸うな!」

 隔離壁が開いた瞬間、ブラッドが慌てて絶叫した。アメリカの精鋭たちが一斉に呪文を唱え、何重もの強力な魔法の防壁を張り巡らせる。

 彼らの張った結界の表面が、押し寄せる深緑色の毒霧に触れた瞬間、ジュワジュワと激しい音を立てて、見る見るうちに酸で腐食されていった。


「おい、見たか! これがSS級の汚染だ! 国家最高の結界ですら数分も持たねえ! こんな地獄、ホウキやモップでどうにかできるわけがーー」

 ブラッドが勝ち誇ったように俺を振り返り、その言葉の途中で、完全に声を失った。


 俺は、彼らが命がけで防いでいる毒霧の濁流の中に向かって、防護服のマスク越しに平然と歩みを進めていた。

 ガガガガガッ! と、手元のセンサーが限界突破の数値を叩き出しているが、俺の心は波一つ立っていない。


「なるほど、軍事用化学物質と魔獣の体液の複合汚染か。こびりつき度はかなり高いな。……だが、俺の新しい道具の敵じゃない」

 俺は肩に担いだ神のモップ『神聖迷宮再生のディバイン・ロッド』を真っ直ぐに構えた。

 神話級アーティファクトの魔力が、俺の固有スキル【特殊清掃】と同調し、体内から無限の黄金の輝きとなって溢れ出す。


「成分分析完了。強酸および神経毒素の一括中和。……洗剤配合、神話級最大出力ハイパー・ミキシング

 ゴオォォォン!!!

 背中の新型魔導タンクが、まるで太陽が爆発したかのような、圧倒的な純白の閃光を放ち、周囲の空間を昼間のように照らし出した。


 プシューーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!

 特製ノズルから放たれたのは、現代の科学力を遥かに凌駕する、超微細な『神聖ナノ発泡洗剤』の津波だ。


 ドボワァァァァァァァァァッッッ!!!

 純白の泡の津波が、神殿の通路を埋め尽くしていた深緑色の毒霧と正面から激突する。

 次の瞬間、アメリカのエリートたちが数年間怯え続けていた死の毒ガスが、泡に触れた瞬間にシュワシュワと小気味いい音を立てて、ただの『甘いバニラの香りがするクリーンな空気』へと、秒速で書き換えられていった。


「は……? え……?」

 結界の中で、ブラッドが信じられないものを見る目で口を半開きにしている。


「よし、ベースの中和は終わりだ。あとはこの壁にへばりついた、数年ものの頑固な油汚れを落とす」

 俺は黄金に輝くモップの柄を両手でしっかりと握り、黒ずんだ大理石の床と壁に向かって、大きく一閃した。

 ザーーッ!!


【スキル発動:世界環境強制再生ガイア・クリーンアップ


 ピカァァァァァァァァァッッッ!!!

 デッキブラシの毛先から、部屋全体を丸ごと飲み込むほどの黄金の光波が炸裂した。

 効果範囲十倍、スピード百倍に超強化されたお掃除チート。その圧倒的な光の波は、SS級ダンジョンの第一エリアの隅々まで一瞬で駆け抜け、こびりついていたすべての猛毒液、焦げ、魔獣の血痕を、分子レベルで「完全消滅」させていく。


 わずか一振り。

 時間にして、たったの三秒。

 アメリカの国家最高戦力が「人類の立ち入れない死の禁域」と匙を投げたSS級迷宮は、ホワイトハウスの晩餐会会場よりもピカピカに輝く、超クリーンな神殿へと姿を変えていた。

 空気は澄み渡り、心地いいミントの香りがロビー全体を満たしている。


『ピコーン! ピコーン! ピコーン!』

【SS級ダンジョン『ペンタゴン・ゲート』の完全環境再生を達成しました】

【清掃報酬:星条の魔晶(特級神話レア・換金価値:5億円)×3を自動回収しました】

【環境の劇的改善により、アメリカ国家秘宝『自由の聖剣』が出現します】


 大理石の床が眩しく発光し、中央に、星の輝きを宿した伝説の聖剣が、ボコォンと出現した。


「……星条の魔晶が3個に、自由の聖剣、か。アメリカのダンジョンは、ボーナスもアメリカンサイズだな」

 俺が平然とそれをリュックに回収する横で、ブラッドをはじめとするアメリカのエリート探索者たちは、全員が恐怖でカタカタと震えながら、その場に膝をついてガタガタと震えていた。


「バ、バカな……。俺たちが数年間、何百人の犠牲を出しても一歩も進めなかった死のエリアが……たった一振りで、ピカピカの安全地帯になっただと……?」

 ブラッドがうわごとのように呟く。


「ブラッドさん。これが、あなた方が『ただのホウキ持ち』と見下した、日本の特殊清掃員の仕事ですよ」

 俺がデッキブラシをスマートに担ぎ直して冷たく言い放つと、神城さんたちが誇らしげにクスリと笑った。


 日本の枠を飛び越え、星条旗の国アメリカでも、俺の【特殊清掃】スキルは完全に世界の常識を破壊した。

 百億円の報酬を手にし、国家の秘宝すらもボランティア感覚で回収していく、俺の『地球規模のお掃除無双』は、ここからさらに世界を震撼させていくことになる。


呼んでいただき、ありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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