第2話お掃除チートの真価
「よし、ベースの中和は終わり。次は、この空間にこびりついたしつこい異臭(呪い)だ」
湊は戦闘用防護服のブーツで床をしっかりと踏み締め、デッキブラシを両手で強く握り直した。そして、長年の現場経験で培った完璧なフォームで、床の染みを激しくこすり始める。
ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ!
【スキル発動:怨念消去】
プロの卓越した清掃技術と、スキルの魔力が完全に噛み合った瞬間、ブラシの毛先から目も眩むような黄金の光が弾けた。
通路を満たし、Aランク探索者たちを悶絶させたあのドブのような悪臭が、まるで最初から存在しなかったかのように、一瞬にして爽やかな『高級森林の香り』へと書き換えられていく。
「ふぅ。よし、仕上げの高圧洗浄だ」
一気に水を噴射して汚れを洗い流す。
数分前まで「立ち入り禁止の最凶事故物件」だった暗い通路は、今や高級ホテルのエントランス並みに、いや、それ以上にピカピカと美しく輝いていた。
『ピコーン!』
その時、湊の脳内に小気味いいシステム音が響き渡る。
【ダンジョン環境の劇的改善を検知しました】
【清掃報酬:アシッド・スライムの核(超高純度レア魔石)×3個を自動回収しました】
【清掃経験値を大量に獲得。プレイヤーのレベルが上昇しました】
「お、ラッキー。天穿の連中、お宝の魔石まで汚物だと思って置いていきやがったな。この純度なら、換金所に持っていけば1個50万円は下らない。……ものの十分の掃除で150万の儲けか。最高だな」
そう、湊の【特殊清掃】は、単に部屋を綺麗にするボランティアではない。
ダンジョンを綺麗にすればするほど、普通の探索者が命がけでボスを倒して手に入れる以上の『極上のお宝』が、汚物の裏からザクザクと自動回収される、とんでもないバグスキルだったのだ。
魔物の体液や死骸は、正しく洗浄・分解されることで、超高純度の資源へと精製される。
戦闘職の連中が「汚物だ」「呪いだ」と嫌悪して捨てていくゴミの山こそが、湊にとっては宝の山だった。
「さて、このままギルドの換金所に直行してもいいが……」
湊は綺麗になった通路の先、さらに深くへと続く重々しい扉を見つめた。
あの先は、さっき逃げ出した『天穿』の精鋭たちが今まさに攻略しているはずの、地下三階のボス部屋だ。
「あいつら、派手に大魔法をぶっ放してたからな。あっちのほうがもっと酷い汚れ(・ ・ ・ ・)になってそうだ」
戦闘力自慢の連中が通った後は、いつも悲惨だ。
周囲の環境のことなどお構いなしに火を放ち、雷を落とし、魔物の血肉を撒き散らす。そして、その不衛生な環境が原因で、ダンジョンそのものが「変異」を起こすことすらあるというのに。
「元所属ギルドの尻拭いをする義理はないが……まぁ、落ちてるお宝を拾うのは俺の自由だからな」
湊はデッキブラシを肩に担ぎ直すと、不敵な笑みを浮かべてボス部屋の扉へと手をかけた。
元ギルドから「戦闘力ゴミの役立たず」と追放された男が、その圧倒的なお掃除技術だけで、ダンジョンの裏環境と利権をすべて支配していく物語。
世界を揺るがすその伝説の幕が、今、静かに上がろうとしていた。
読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思ったら、評価とブックマークおねがいします!
次回もお楽しみに!




