第19話世界を震撼させた除菌のニュース
国内最難関のS級ダンジョン『黄泉の門』が、戦闘を一切行わずに「完璧な除菌と清掃」だけで攻略されたーー。
この前代未聞のニュースは、瞬く間に世界中のインターネット、テレビ、そして各国の政府機関へと駆け巡り、地球規模の特大の地殻変動を引き起こしていた。
『速報:日本の探索者ギルド「創世」、戦闘による負傷者ゼロでS級迷宮を完全攻略!』
『謎のキーワードは「特殊清掃」!? 諸悪の根源である冥王を消滅させた純白のミストの正体とは!?』
ニュース番組のキャスターたちが興奮気味に絶叫し、SNSのトレンドワードは上位から下位まで「入江湊」「特殊清掃」「神のモップ」という言葉で完全に埋め尽くされていた。
これまでの人類の常識では、ダンジョン攻略とは「命を賭した血みどろの戦争」だった。
強力な武器を構え、強大な魔法を放ち、多くの犠牲を払いながらモンスターの肉体を破壊する。それが唯一の正解だと誰もが信じて疑わなかったのだ。
だが、俺が証明してしまった。
ダンジョンの主とは、迷宮に蓄積された「汚れ」や「バグ」の塊に過ぎない。正しく成分を分析し、完璧に中和して除菌すれば、戦闘力など一ミリもなくても、無傷のまま資源へと還元できるという冷酷な事実を。
「ーーというわけで、入江様。我がギルドのサーバーは、あなた宛てのメッセージで完全にパンク状態でして……」
都内にあるSSSランクギルド『創世』の本部、最上階の総帥室。
代表の神城さんは、嬉しい悲鳴を上げながら、目の前の空間に数百枚ものホログラムウィンドウを展開してみせた。そこに並んでいるのは、世界各国の元首や、誰もが知る超巨大企業のCEOたちからの直筆の依頼書だった。
「アメリカ政府から、数年間放置されてホワイトハウスの地下まで汚染が広がりつつあるSS級ダンジョン『ペンタゴン・ゲート』の緊急清掃依頼。費用は言い値で、最低でも【100億円】からとのことです。他にも、中東の石油王からは『不衛生で暴走しかけている砂漠の迷宮を掃除してくれたら、油田の利権を一つ譲る』という破格のオファーが届いています」
「おいおい、油田の利権って……」
ソファの隣に座っているゴウが、呆然としながら頭をかいた。
「入江の旦那、もう一国の国家予算並みの資産家になっちまうな。俺たちSランク探索者が一生かけて稼ぐ金を、一日で軽く超えてやがる」
「当然よ。入江さんの【特殊清掃】は、世界のパワーバランスを根底から変える唯一無二の神業なんだから」
リンも自慢げに胸を張る。彼女たちはすでに、俺の専属護衛としての誇りを持ってくれているようだった。
「神城さん、アメリカの件、引き受けましょう。ちょうど、あの神のモップの新しい機能も試したかったところですし」
俺が静かに告げると、神城さんは「ありがとうございます!」と満面の笑みを浮かべた。
元所属ギルドの無能どもが、月給四十万の奴隷契約で俺を縛ろうと企んでいた裏で、俺のステージはすでに、地球上のあらゆる大富豪や国家すらも顧客にする、異次元の領域へと到達していた。
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