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第14話世界を洗浄する黄金の光


「よし、まずはこの空間を埋め尽くす『呪詛の霧』から片付ける。リンさん、ゴウさん、ちょっと下がっててください。……迷宮環境、成分分析完了」

 俺の脳内に、S級特有の極めて複雑な汚染データが流れ込んでくる。だが、今の俺のスキルレベルなら、この程度のバグデータを処理するのは赤子の手をひねるより簡単だ。


「怨念の酸化、および猛毒タンパク質の複合汚れ。……洗剤配合、最大出力マックスミキシング

 ゴオォォォン! と、俺の背中のタンクが、神聖な青い魔力の光を放って激しく振動を始めた。

 5,000万円の基本報酬をつぎ込んで、昨日新調したばかりの特注魔導洗剤。あらゆる高密度呪詛を細胞レベルで分解・消滅させる、俺だけの『究極の環境再生洗剤』だ。


 プシューーーーーーーーーーーッッ!!!

 魔導高圧洗浄機のノズルから、純白のナノ高密度炭酸泡が、怒涛の勢いで神殿の通路へと噴射された。


 ジュボワァァァァァァァッッ!!

 泡が灰色の霧に触れた瞬間、爆発的な化学反応が起きた。空間を埋め尽くしていた呪いの霧が、まるで熱したフライパンに落とした氷のように、凄まじい音を立てて一瞬で蒸発し、ただのクリーンな酸素へと還元されていく。


「なっ……何だこれ!? 霧が、消えていく……!?」

「バカな、ギルドの特級聖魔術師が十人がかりで結界を張っても、数センチしか薄められなかった呪詛の霧が、たった一吹きで……っ!」

 後ろで見ていたSランクの二人が、驚愕のあまり完全に顎を突き出していた。あの神城さんでさえ、美しい目を見開いて言葉を失っている。


「驚くのはまだ早いですよ。ここからがプロの掃除です」

 俺は両手でがっしりとデッキブラシを握り締めると、壁や柱にこびりついた、数年ものの頑固な猛毒液のシミに向かって、一気にブラシを突き立てた。

 ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ、ゴシ!!


【スキル発動:極大環境再生ワールド・クリーンアップ


 ズドォォォォン!!

 俺のプロのストロークに呼応して、デッキブラシの毛先から、神の御業かと思うほどの圧倒的な黄金の光が爆発した。

 その光の波紋は、神殿の通路を、壁を、天井を爆速で駆け抜け、数年間蓄積されていたすべての油汚れ、魔獣の血痕、こびりついた毒素を、文字通りチリ一つ残さず「完全消滅」させていく。


 ほんの十分。

 世界中の探索者が「絶対に立ち入れない死の禁域」と恐れたS級ダンジョンの第一エリアは、まるで今朝建てられたばかりの、真っ白な大理石が美しく輝く神聖な神殿へと姿を変えていた。

 空気はひんやりと澄み渡り、そこらの高級避暑地よりも圧倒的に心地いい清涼感が漂っている。


『ピコーン! ピコーン! ピコーン!』

 俺の脳内で、システム音が鼓膜を突き破らんばかりに連打された。


【S級ダンジョン・第一エリアの『完全環境再生』を検知しました】

【世界初:迷宮大掃除ボーナスが適用されます】

【清掃報酬:黄泉の魔石(特級神話レア)×5を自動回収しました】

【清掃報酬:オリハルコンの原石×10を自動回収しました】

【環境の劇的改善により、シークレット超越宝箱が出現します】


 ピカァァァァ! と、大理石の床が眩しく発光し、中央に見たこともない巨大な、クリスタル製の豪華な宝箱が出現した。


「……特級神話レアの魔石が5個に、オリハルコン。それに、超越宝箱、か」

 俺が平然とそれをリュックに回収する横で、ゴウとリンは恐怖すら覚えた表情で、腰を抜かしてその場にへたり込んでいた。

「おいおいおい……冗談だろ……? 換金所で1個3,000万は下らない黄泉の魔石が、掃除しただけで5個……? 一瞬で一億五千万以上の儲けだと……?」

「戦わずに……ただ床を磨いただけで、世界最高峰の資源がザクザク出てる……。この人、存在自体が国家予算レベルのバグじゃない……っ!」


 神城さんは、感動のあまりその美しい目に涙すら浮かべながら、俺の手を両手で強く握り締めてきた。

「素晴らしいです、入江様……! あなたは本物の天才、いや、この世界の救世主です! 我が『創世』は、あなたを一生離しません!」


 元所属ギルドの無能どもが、目先の利益に目を眩ませて俺を追放し、汚物の中で自滅していく中。

 俺は世界最強のギルドを後ろ盾に、一現場で数億円を稼ぎ出す、国家規模の『超・大富豪お掃除無双』へと、その歩みを進めていくのだった。


読んでいただきありがとうございます!

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