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男女比1:1000の世界でも野球観戦がしたい  作者: げんずむ


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第9話 早朝ランニング事件

コケコッコー


「・・・・・・・・・・・・」


コケコッコー


ぱちり

目が覚める。

どうやらもう朝になったようだ。

なんだか夢を見ていた気がするが全く思い出せない。

外では鶏が滅茶苦茶鳴いている。


「鶏って本当にコケコッコーっていうんだな・・・」


何気に人生で初めて生コケコッコーを聞いたかもしれない。

しかし昨日の夜も思ったが、田舎って案外うるさい。夜中はカエルやら虫やらの鳴き声がずっとしていたし、朝は鶏に強制的に起こされる。

都会育ちには結構辛いかもしれない。


時間を確認しようとスマホを見る。電源が切れたままだった。昨日スマホの充電器を借りようとしたが、充電の差込口の形が合わず、充電することができなかった。こっちにもスマホに近いものはあったが、仕様が違うらしい。これも現代っ子にはかなり厳しいな。


コケコッコー


外からは引き続き鶏の鳴き声がする。

天気は快晴。窓を開けてみる。

山や森が多いせいだろうか?空気はとても澄んで清々しい朝だった。


「お!」


よく見るとすぐ近くに湖らしきものが見えた。結構大きい。そういえば美月が昨日ここは信州真田領の諏訪藩と言っていた気がする。とするとアレは諏訪湖か。

他に諏訪の湖って知らないし多分そうなんだろう。


「ふむ・・・」


ちょっとランニングに行きたくなってきた。この快晴の陽気で湖を走ったらさぞ気持ちがいいことだろう。幸い伊月さんから着替えのシャツとハーフパンツを貰った。お父さんのものかなって思ったけど、やはりこの家にお父さんはいないらしい。この服は美月が小学校4年生の時の服とのこと。


「・・・・・・・・・・・」



しゅるしゅる


シャツとハーフパンツに着替えてみる。ピッタリだった。胸の部分がやや伸び気味だが、まあそんなに気にならないだろう。

現在の俺の体格、小学校の美月と同じ。考えると切なくなってきた。あと中身36歳のオッサンが小学4年生女子の服を着ているという事実に目を逸らしたくなる。完全に事案だ。しかし慣れていかなくてはならない。元の日本に帰れない限りこういうことばっかりだろうから。今の俺は美少女アイドル。そのことを胸に置いて生活していかなくてはならないのだ。


コケコッコー


鶏の声が聞こえる。そんなに鳴いてよくも飽きないものだ。それにしても本当に良い天気。現役時代は早朝ランニングは欠かさず行っていた。走るのは身体を鍛える上で基本中の基本。プロ野球選手でもランニングを欠かす奴なんていない。

そうだせっかく若返ったことだし、どれくらい身体が動くか確かめてみようか。軽く屈伸をする。やはり若い身体は良い。社会人になって流石に現役の時ほど運動をしなくなってしまった。この身体であの湖畔を思い切り走ったらさぞ気持ちが良いことだろう。


「よし・・・」


そうと決まれば早速外に出よう。まだ早朝の5時半だから伊月さんも美月も寝ていることだろう。起こさないようにそっと出かける。鍵は・・・どうしよう。と思ったら玄関の鍵は普通に開いていた。流石田舎クオリティ。不用心だと思ったが、性犯罪の心配はほぼないのだろうから、こんなものか。それでも泥棒とか入るかもしれないし、危ないと思うんだけど。この辺は都会っ子の感覚との乖離を感じる。


お店の前に出て屈伸をする。

お店の看板には古めかしい文字で『大豊庵』と書かれていた。

その看板の下で一通りの準備運動を行う。


「おお!」


昨日は必死だったからあんまり気が付かなかったが、やっぱ身体が軽い!体重は36歳の時よりも10kgは軽いだろうか?思わず嬉しくなってぴょんぴょん飛び跳ねてしまう。もし元の日本に戻れたら筋トレして身体を絞ろうか。しかし元の日本に戻れたとして、この姿だったらどうしよう?ダイエットしてアンチエイジングしました、って言ったら職場の人は納得してくれるのだろうか?

そういえば今日は本当は出勤日のはずだ。会社に電話・・・しても無駄なんだろうなあ…。無断欠勤になってしまう。いやそれ以前に行方不明か。


「・・・・・・・・・・」


そんなことを考えているとお店の向かいの家の人と目が合った。どうやら鶏の世話をしにきたらしい。朝から聞こえた鶏の声はここの家のか。年は20台後半くらいだろうか?かなり油断した格好をしていて目のやり場に困る。あれはブラもしてないな。まあ、女性ばっかりの世界だしこんなもんなのかもしれない。っといかんいかんボーッしたまま固まってしまった。


「あ、おはようございます!」


笑顔で元気に挨拶してみる。人間第一印象が大切だ。


「・・・・・・・・・・・え、あ、はい分かりました!」


納得されてしまった。


「じゃなくて!お、おはようございます」

「はいおはようございます!いい陽気ですね」

「そ、そうですね・・・」


信じられないようなモノを見る目で俺を見てくる。エイリアンがラジオ体操をしている姿に遭遇したら俺も多分こんな顔をするのだろう。


「それでは!」


俺は笑顔で手を振ってランニングに向かった。朝の陽気が心地よい。それに身体は予想以上に快調だ。現役時代ってこんなに動けてただろうか?気付かぬうちに身体が衰えていたのだろう。反省反省。


「あ、おはようございます!朝早いですね!」

「!!!? え、あ、え?」


犬の散歩中の女性の方に挨拶を投げる。女性は茫然とした様子だった。湖から吹く風が顔に当たって心地よい。朝は早いが、諏訪湖の散歩道には犬の散歩中の女の人が結構いた。


「おはようございます!」

「ふぁっ!!?」


「おはようございます!」

「ふぉっ・・!?! え、男の人・・!??」

「おはようございます!」


「ふぁあああああああ!?!!!」


通り過ぎる人全員に挨拶を投げて行った。挨拶が帰ってくることはなかったけど、まあそれも仕方ないことだろう。


「それにしても・・」


意外と大きいな諏訪湖。10km以上ありそうだ。

一周走ってから帰ろうと思ってたんだけど、これは思ったより時間がかかりそうだ。

諏訪湖の湖畔を走る。水面に朝陽がキラキラと反射して綺麗だった。そういえば前に家族旅行に来た時は遊覧船なんかもあったと思うのだが、それらしきものが見当たらない。ボート小屋なかった。もしかしたらこっちの日本は技術の進歩は遅れているのだろうか?それにしてはスマホは普通にあるみたいだったし、蕎麦屋にあったテレビは液晶テレビだった気がする。技術が進んでいる分野と進んでいない分野に差があるのかもしれない。恐らく人工授精の技術は進んでいるのだろうな。そうでないと人口が維持できない。

そんな取り留めのないことを考えていると諏訪湖を一周できたようだった。時間は2時間程度。身体は全く疲れていない。諏訪湖は久しぶりに訪れたが、なんだか酷く懐かしく感じた。


俺はご機嫌で大豊庵に戻る。




大豊庵には4台のパトカーが止まっていた。



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