第60話 シーズン終了
真田スズメーズのシーズンが終了した。
結果はいつも通りのぶっちぎりの最下位。
他者を一切寄せ付けない圧倒的な数字だった。
11勝114敗
借金103。
こんな数字見たことない。
見るも無残な成績だ。
しかし得るものは多かった。
まず拓真の存在。
言うまでもないが、これは非常に大きい。
おかげで諏訪スタは連日1万5千人の満員御礼。
満員御礼はたった6日間だけだったが、諏訪に与えた経済効果はとても大きかった。
まずはホテル。
遠征に来たお客さんでホテルも満員御礼。
諏訪だけでは当然捌ききれないので上田や松本のホテルまで満員になる始末だった。
次に飲食店。
当然人が来れば食事だってする。
飲食店も大混雑でこちらも夜遅くまで大変賑わった。
諏訪にこれだけの人数が押し掛けたことはこれまで無かった。
人口わずか2万人の藩に1万人以上が押し寄せるのだから、その影響は凄まじい。
ホテル代や飲食代でなんだかんだ1人あたり2万円くらいは消費する。
2万円×1万人×7日間=14億円。
拓真1人の力で真田の収入が10億円以上も増えてしまった。
これによって諏訪の住民は気が付く。
「あれ?野球って案外儲かるのでは?」
儲かると分かれば話が早い。
今後更に観客を呼ぶための施策を打つことができる。
その土台ができた。
来シーズンからは更なる飛躍が望める。
そしてこの経済効果の実践以外にもう1つ大きな収穫があった。
それが・・・
「へーいみんなー!勝ったよー!!やったよー!!タク見てるー!?」
ヒロインインタビューではしゃいでいるこの女である。
「というわけで9回1失点の見事な投球!黒田圭選手に来て頂きました!今日は見事な投球でしたね!」
「はい!今は亡き山本先輩に捧げました」
どこからか生きてますよー、という声が聞こえる。
「山本先輩、本当は今日絶対に投げたかったと思うんです!だから私がビシッと投げて!勝てて満足です!先輩やったよー!」
どこからか別に投げたくなかったです。中1日ですし。という声が聞こえる。
「では集まったファンの方にメッセージをどうぞ!」
「来年は最初からチームに参加したいと思います!応援よろしくお願いします!タクー!!やったよー!」
「では本日先発の黒田圭選手にお話伺いました」
「・・・・・・・・・・・・・」
頭を抱える拓真。うん。ヒロインの受け方もキチンと練習しないといけないな。
「あのバカたれ・・・」
「でも会場は盛り上がってますわよ?いいことじゃないですか」
「それはそうなんだけどな・・・」
そんなことを言っていると圭がユニフォームのまま観客席の俺達のところに突っ込んできた。
「タクー!!!!!勝ったー!!!」
「おおー!おめでとー!!圭ー!!」
「タクー!!!」
「圭ーーーーー!!!もがぁ!」
思いっきりキスされる。
どうした。
何があった?
「んちゅ、うちゅ、くちゅ」
「んっちゅ・・ってやめい!」
引き剥がした。
「ああん。もっともっとー」
「いきなりどうしたお前!?」
どうやらテンションが上がり過ぎておかしくなっているようだった。
菊花は何してるんだろうこの人達みたいな顔でこっちを見ている。
いいのかお前。
護衛対象がキスされたんだぞ。
「はー・・・はー・・・・タクゥ・・タクゥ・・・」
目が血走っている圭がじりじり近付いてくる。
結構怖い。
「こら圭!まだロッカーの片づけとかあるから帰るよ!」
美月に連行されていく圭。
「もうちょっと!もうちょっとだけ!先っちょだけ!」
「いいから帰るよ・・・」
「あああー」
行ってしまった。
「なんなんですのあの子・・・」
「まあ楽しそうで何よりだ」
勝った真田も負けた北条も観客に挨拶をすると引き上げていく。
国丸投手は俺にひと言。
「また会おうね」
と言うと帰って行った。
その目は清々しく、昨日会った時の申し訳なさや、今日の試合開始時の悲痛な様子は全く見られない。
負けたはしたが投げた球に後悔はない。
そんな風に言っているように見えた。
真田の今期の戦いは終わったが、
彼女達はこれからまだ試合がある。
日本シリーズ。
これからの彼女達の戦いはテレビで見守ることにしよう。
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-side 黒田水蓮-
「何してんねんあのバカ娘!」
水蓮はテレビに向かって思わず叫んだ。
先ほどの拓真とのキスシーンが全国に流れた。
これで娘は確実に日本中の女性から嫉妬交じりのヘイトを受けるだろう。
娘の奇行に頭を抱えてしまった。
それにしても圭が先発で投げているのに気が付いた時には驚いた。
仕事終わりに拓真君でも見ようと思ってテレビで野球中継を見ていたらまさかの娘が先発。
なんでこういう大事なことを言わんのやあのバカ娘は!
圭は去年までプロ野球の選手になるつもりだった。
苦しんでいるチームを少しでも救いたいと。
だがウチはそれに反対した。
当然だ。
真田は圧倒的投手不足。
圭がどれだけ優秀な投手かは知っている。
だが、中1日や中2日で投げ続けていてはいつか肩を壊してしまうだろう。
それにそんな状態で試合に勝てるとも思えない。
苦しむ娘を見たくなかった。
だから娘のプロ入りを禁止して、藩主の仕事に専念させるようにした。
でもこうしてマウンドで楽しそうに投げている娘を見ているとやはりあの場所こそが彼女のいるべき場所のように思える。
「ホンマに・・・楽しそうに投げるなああの子は」
諏訪藩の藩主として、あの子には苦労ばかり掛けてきた。
こんな貧乏藩継いだってきっと苦しいことばかりだろう。
男性はたったの47人。そのうち40歳未満はたったの11人。
金もない。男もいない。先行き何もない土地。
だけどそんな時に唐突に現れた拓真君。
彼のおかげで諏訪は活気づいた。
使えるお金もグンと増えた。
これから間違いなく楽しいことが起こる。
そんな予感がしていた。
「ふふふ・・・ガラにも無く燃えてくるなあ」
来年は諏訪スタを使ってもっと儲けられるようにしなければ。
千幸様からも厳命されている。
『拓真君と協力して諏訪スタを盛り立てるように』
まずは観客席の増設。
食事メニューの改善、お手洗いの増設と改築、やることはいくらでもある。
「これから忙しくなるなあ」
でもこれからの未来を想像するのが楽しくて仕方がない。
プルルルルルルル
プルルルルルルル
電話が来たので画面を見る。
<<黒田圭>>
「お母さん勝ったよー!!!」
テンション高くはしゃぐ娘。
嬉しそうなところ水を差すのも少し悪いが、言わなければいけないことは言っておこう。
「アホか!!なんで先発するって言わんのや!!半分くらい見逃したやんけ!!」
アホな娘を持つと苦労する。
でもそんな娘が誇らしくて仕方がない水蓮だった。
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これにて第1章完です
明日からまたつづいて第2章にいきますのでよろしくお願いします!
またここまでお読み頂いた方にお願いです。
それではもうちっとだけ続きますので引き続きお願いします。




