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男女比1:1000の世界でも野球観戦がしたい  作者: げんずむ


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58/106

第58話 死闘

「流石は国丸投手。やりますなあ」

「スズメーズ打線にあんなの打てるんですか?ご主人」

「い、一応おとといは4点取ったぞ?」


実は真田スズメーズ、打線はそこまで酷くない。

バッター全員が二割前半くらいだし、長打率も低いが、点はそこそこ取れるのだ。

ただ投手陣が壊滅的というか終わってるから全然勝てないだけで、得点数は最下位ながらもそこまで絶望的な数値ではなかったりする。

あとは投手陣を完備すればもうちょっと勝てるようになるだろう。


「おーほほほ!スズメーズでは国丸相手では手も足も出ないでしょう!?何せレベルが違いますからね!」

「うるさいなあ・・・」


だがさっきの回の投球で気付いたことがある。

国丸投手はどうやら内角の攻めを封印しているようだ。

それはそうだろう。

もし今日もデッドボールを当てたりしたら流石に言い訳ができない。

すっぽ抜けやすいスライダーは封印しているようだし、狙い球は絞りやすいだろう。

まあさっきの回はほぼストレートだけで抑えられてしまったけども。


「よーし次の回も行くぞー!タク見ててねー!」

「圭うるさい。試合中なんだから落ち着いて」


圭と美月のコンビは相変わらずの様子だった。


「よしよし・・・」


思った通り北条のバッターはまだ圭の投球に対応できていないな。

ぬるりとバットを躱すチェンジアップで面白いように空振りが取れている。


「・・・・・・・・・・・」


美月は相手のバッターを丁寧に観察しているようだ。

ボール球の使い方が上手い。

相手のここぞという気合いを察してストライクゾーンから外してくる。


「おっと・・・」


2アウトから6番バッターの打った球が初めて前に飛んだ。

セカンドゴロ。

だが対応されてきている。

やはり簡単にはいかないようだ。


国丸翔子vs黒田圭


今日は投手戦の様相だと誰もが思ったが、試合が動いたのは予想外に早かった。

3回のウラのことだった。

1アウトから8番バッター大豊美月。


「美月いけー!頑張ってこーい!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


恐らく俺の声は全く聞こえていない。

もはや集中とかゾーンとかそんな言葉すら生ぬるい。


バッターボックスに立つ美月からは殺気すら感じる。

元より身長190cmを超える巨体。

見た目の迫力は十分だ。


「・・・・・・・・・・・・・」


国丸投手もわずかに顔をしかめる。

一流のスラッガーの持つ威圧感。

大豊美月のそれは日本一の投手すら圧倒するほどであった。


国丸投手が投げた。

外スラを二球続けるが、美月はピクリとも動かない。

今日初めてスライダーを解禁した。

そうでもしないとこの打者は抑えられないと感じたのだろう。


「・・・・・・・・・・・・・・」


美月の眼が言っていた。


『逃げるな臆病者』


「ぐっ・・・」


国丸投手が投げる。

ワンバウンドのフォークボール。

それにもピクリとも動かない。

ノーストライク スリーボール。


ここで国丸投手が一息呼吸置く。

そして投げた直球は今日一番の球だった。


「・・・・・!!」


美月が全力でフルスイングをする。

ブオンという音がここまで聞こえるようだった。


完全に捉えた当たりだったがファール。

三塁線上を割った。


「きゃっ!」

「こわっ!!」


危うく三塁コーチャーを直撃するところだった。

あれどれくらいの速度出てたんだ。

あんなの当たったら誇張抜きで死ぬぞ。


九死に一生を得た三塁コーチャーはしゃがみこんで立てない。


「・・・・・・・・・・・」


美月は首を傾げると不満気に素振りしながらタイミングを合わせている。


『思ったより遅かった。おかげでタイミングが合わなかったじゃないか』


そう言いたげだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


舐めやがって。

これには流石の国丸投手の眼にも闘志が芽生える。

それはスタジアムの北条ファンも同じだった。

国丸投手もスタジアムの北条ファンもおとといの出来事を引きずっており、どこか遠慮が感じられた。

しかし大豊美月によりその遠慮が吹き飛ぶ。

遠慮なんてしていて抑えられる打者ではない。

彼女が今日初めて打席に立つ新人だなんて誰も思っていない。

このたった4球で彼女は一流と認められた。

世間からも投手からも。


「ふっ!!」


国丸投手が渾身のストレートを投げる。

高めに浮いた球を美月が思い切り空振った。

ボール球を見誤ったか?

否。

彼女はボール球だと見極めた上で空振りをした。

何故?

国丸投手にはハッキリと分かった。


『四球拒否。

 いいから打たせろ』


ここまでされて黙っている投手などいるものだろうか?

仮にここでボール球を投げたらもう二度と彼女とはまともに勝負できない気がしていた。


打たれても良い。

死ぬなら戦って死ぬ。


外角低め一杯に再度ストレートを投げる。

球速164km/h

コースも完璧打てるわけがない。

そう確信したストレートは美月に軽く打ち返された。

外角の球を逆らわずに流し、ライト線上の深い場所に落とした。

美月は足も速い。

あっという間に三塁を陥れるに至った。


「おー!美月いいぞー!」

「えへへ・・・」


先ほどまでの不遜な態度はどこへやら。

拓真の声援を浴びて美月はにへらと笑う。

大豊美月はバットを持つと性格が変わるタイプだった。


「おーし!私も頑張ってくるよー!見ててよタクー!」

「よっしゃーいいから集中しろこの野郎!」


9番黒田圭がバッターボックスに立つ。

打たれてやや茫然としていた国丸投手は頭を振ると気を取り直す。

ワンナウト3塁。


「・・・・・・・・・・・・」


さてどう攻めたものか?

まずは一球外す。

ボール。

余裕を持って見逃されてしまった。

何故彼女達はここまで余裕を持って私の球を見逃せるのだろう?

2球目はインコースの縦スラ。

ストライク。

思いっきり振ってきたがバットは空を切った。

完全に狙われていたように見えた。

投手のクセに良いスイングをしている。


よし次は直球でカウントを取ろう。

外角低めに直球を投げる。

私の生命線。

160km/hを超える直球。

打てるわけがない。

さっき打たれたけど。


が、ここで裏をかかれた。


スクイズ。


バントの構えをしたかと思うとあっという間に三塁ランナーに帰られてしまった。

上手く一塁線上に転がされた。

今日の一塁守備は打率は三割を超えるが守備は下手なタイプ。

慌ててダッシュしたが間に合わなかった。

完全にしてやられた。

勿論警戒はしていたのだが、ちょうど警戒がふっと解けた瞬間を狙われた。


「よっしゃー!オールセーフだよタクー!」

「よくやったぞ圭ー!」


真田スズメーズ先制。

今日入団の新人コンビ。

華々しいデビューとなった。




なお次のバッターは一球目でゲッツーだった。


「あんなの打てねえよ!」


一番バッターがやさぐれていた。

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― 新着の感想 ―
普通に野球の話として面白いです!
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