第51話 vs北条ファルコンフォース
「ふう・・・なんか疲れた・・・」
「お疲れ様拓真くん… 大変だったね?」
おばさん2名の帰宅を見守った後、俺達は上田城で昼食を頂いていた。
あのおばさん達、圧が強かった。相手にすると疲れるので勘弁して欲しい。
「拓真君お疲れ様。立派でしたわよ?」
「せやせや。あの慈雲に睨まれて毅然とした態度を取れるのは大したもんや」
水蓮さんがうんうんと頷いて褒めてくれる。ちょっと嬉しい。
俺としてはあんなおばさんに求められても断るに決まっているのだが、この世界の男はついうっかり従ってしまう人もいるのかもしれない。
「拓真君どや?上田の料理は気に入ってくれた?」
「はいとても美味しいです」
水蓮さんは遠慮なくバクバク食べる俺をニッコニコで見守っている。
豪華絢爛な料理ではないのだが、口に合う。元の日本ではやはりレトルトが多くなりがちだったので、山菜とかキノコとかそういう料理が心に染みる。
食材はすべてこの辺りで採れたものらしい。
料理人さんもさっき挨拶に来てくれたが、随分張り切ってらっしゃった。
俺の動画も見てくれているらしい。感謝。
「今日はタマゴダケがたくさん採れたからソテーにしてもらったわ。拓真君はキノコはお好き?」
「はい!それはもう!」
千幸様も表情にこそ出さないがご機嫌なことが伝わってくる。
俺が北条に行くと心配していたのだろうか?
俺からするとありえないことなのだが、千幸様からすると俺の本物の母親が現れて・・・と言う可能性がなくはないのか?
それにしてもキノコ美味しいな!
料理長が真っ赤で毒々しいキノコを俺に見せてきた時は何事かと思ったが、これは美味しい食べられるキノコだそうだ。
「それはよかった。もう少ししたら秋キノコも一杯採れるから楽しみね」
「信州はキノコが採れるんですか?」
「よーさん採れるでー」
「なんせ山だらけだからね信州は!キノコの栽培所も一杯あるんだー」
「へー」
「よ、よかったら拓真君もキノコ狩りに行く・・・?」
「キノコ狩り?」
「この時期は毎年美月とキノコ狩りするんだよ♪タクも一緒に行こうよ!そして動画にしよう!」
「行きたいけど毒キノコとか大丈夫か?」
判別とかできるんだろうか?
「大丈夫だよ!慣れてるから!」
「うん。慣れてる」
「それは毒でも食べ慣れてるとかそういう話じゃないよな・・・?」
まあキノコ狩りは後で行くとして・・・
「それにしても北条は大丈夫でしょうか?なんかあのおばさん怒ってるように見えましたけど」
「ええ。ダメでしょうね」
ダメなのか!
「あの北条慈雲は気に入った男の子を手に入れるためなら何でもするわ」
「拓真君は随分気に入られてもうたみたいやな。完全にロックオンされとるでアレは」
「えー・・・」
女性に好かれたと聞いてここまで嬉しくないのも珍しい。
「だからご主人はボクから片時も離れないで下さいね?」
「うん・・・ちゃんと言うこと聞くようにする」
今も基本的に菊花の言うことは全部聞いてるけど。
「まあ流石に誘拐まではされないと思うから安心なさい」
「せやな。そんなことするんはよほどのバカくらいなもんや」
「他領の男子を無理やり奪ったなんて世間にバレたら日本中を敵に回すことになるからね」
それでも正直安心はできないな。まったく面倒なことになったもんだ。
できれば北条にはもう関わりたくない。
関東出身としては自分の住んでた辺りも見に行ってみたかったんだけど、そもそも北条には近づきにくくなってしまったなあ。
どうしたものやら。
「そういえば明日はまた試合ね。私は今回は一緒に行けないけど楽しんで来てね拓真君」
「今回はちゃーんとチケット用意せなあかんで?」
「あ、はい。明日の相手は・・・どこだっけ?」
「北条ファルコンフォースとの三連戦だね」
「今期の諏訪スタ最終戦だね・・・」
「相手は貯金54!こっちは借金102!まさに天王山だね!」
「78ゲーム差て」
聞いたことないわそんなん。
しかし北条との試合かあ。関わりたくないって思ったのに早速試合とはツイてない。
「何もなければいいなあ…」
たまには平和に野球観戦したいものだ。
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というわけでやってきましたいつもの諏訪スタ。今日も今日とて人が多い。
「はいというわけで諏訪チャンネル特別編!本日は諏訪スタジアムに来ておりまーす!タク今日もよろしく!」
「はいよろしくお願いします圭さん!」
今日はせっかくなので動画撮影をしつつ、野球観戦をしている。
テレビ中継もいいが、観客席からの生配信も元の日本ではよく観ていた。
観客席からの生のリアクションや応援歌を臨場感溢れる映像で観られる。
良い時代になったものだ。
我々撮影班の周りには人だかりができているが、接触してこようとする人はいない。
諏訪スタからも男子を見かけても接触しないようにアナウンスがあったそうだ。
別にハイタッチくらいならいいんだけど。
ただ抱きつかれたりするのは流石に困る。
さじ加減が難しい。
一応できる限り周りの女性にも手を振って愛想を振り撒く。
今日の俺は真田男子の代表であり、野球観戦男子の代表だ。
自分の振る舞いが真田男子の評判、諏訪の評判に繋がるのだから気を抜くことができない。
「さあ今日の席はここ!」
今日の席は一塁ベンチ真上の席だった。
一番最初に諏訪スタに来た時に座った席。
本当は真田領のお偉いさんが来るための席らしいのだが、急遽俺達の代わりに空けてもらったらしい。ちょっと申し訳ない。
「おおー なんだか久々な気がするな!」
「ホントにねえ!あ、動画ご視聴のみなさーん!私達はここにいますよー!」
「後ろの人達も!今日は盛り上がって行こうなー!」
いえーいと声が上がる。
それからは周りの人達と雑談しながら試合開始を待つ。
コメントを拾う?というのがうまくできない。
「ホラ!タクもコメント拾って拾って!」
「拾うってなに?」
「コメントを読んで気になるのがあったら答えればいいんだよ!」
「へー・・・なになに。『拓真君は宇宙人って信じますか?』うーんどうだろうなあ」
「なんつーコメント拾ってるの!?」
皆で楽しく過ごしていると試合開始の時間になった。
真田スズメーズの方々もこちらに手を振っている。
あ、北条の選手達も手を振ってきてるな。
昨日のこともあるからちょっと遠慮したいんだけど、無視するわけにもいかない。
笑顔で手を振り返しておいた。
時間は18時。
試合開始のサイレンが鳴る。
「よーし諏訪スタ今期最終カード!みんな頑張って応援するぞ!」
「「「「「おおー!!」」」」」
なおスズメーズは負けた。
スコアは
北条ファルコンフォース 33-4 真田スズメーズ。
かつてないほどの惨敗と言って良い結果となった。




