第44話 第一の犠牲者
「おおお・・・」
「こ、これは凄いね・・・」
俺と美月が動画を観ている間も再生数はみるみる伸びていく。
男が出ている動画なんて珍しくもないだろうって思って探してみたんだが、ほとんどなかった。やはり男は本能的に目立つのを嫌うらしい。
「でもどうしてこんなに急激に再生数が伸びたんだろ?」
「SNSとかで広がったみたいだね・・・。私もよく分からないんだけど」
SNSかあ。
そういえばこっちでは全然やっていなかったな。
まああっちでもほとんど更新しないで結局見る専になっちゃったんだけど。
コメント欄を読んでみる。
「きゃああああああ拓真君だあああ」
「拓真君こんなこともやってるんだ!すげー!」
「ふぉおおおおおおおたまらん!」
「ホントに諏訪の人だったんだね!諏訪の人羨ましー!!」
ほとんどの人が喜んで見てくれたようで安心した。
中にはやべーコメントもあるけど見なかったことにする。
「なんか凄いことになってるね・・・」
「そうだなー」
あ、このコメント課金までしてくれてる。
本当にありがたい限りだ。
「私と子作りして拓真くうううううん!!!!【10,000円】」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
いやこんなのどうしろと?
一万円も貰って申し訳ないが、流石にはいそれじゃあやりますとも言えない。
でも子作りかあ・・・。
そういえばまたしてもすっかり忘れていた。
そろそろ真面目に考えよう。逃げてはいけない問題だ。
学校に行く美月を見送ってから考える。
千幸様から自由にしていいとは言われているけど、俺も覚悟を決める時が来た。
むしろこの状況を考えれば遅すぎるくらいだ。
問題は相手が誰かということだが・・・。
まず美月や圭はダメ。流石に高校生で妊娠したのでは困ることもあるだろう。この世界では高校卒業してすぐ人工授精で妊娠する人もいるそうだが、彼女達はまだ子供だ。いや子供というにはあまりに成長が良すぎるが、それでも気が引ける。
となると・・・。
「・・・・・・・・・・・」
「あ、一応言っておきますが、ボクはダメですよ?ボクが妊娠したら誰がご主人を護衛するんですか」
「誰もそんなこと言っとらん」
ちなみに菊花は見張りも兼ねており、誰に種付けしたか逐一千幸様に報告する義務があるらしい。菊花からも早く覚悟を決めろとせっつかれている。
実はターゲットはすでに決まっている。
とてもお世話になった人だ。この世界の常識がまだよく分からない。ただ俺なんかとそういうことをすることが嬉しいのであるならば、いくらでもお相手する覚悟だ。その気持ちにウソはない。
「さて行くか・・・」
俺は着替えを済ませると階段を下りるのだった。
「あら拓真君?これからお出かけ?」
伊月さんは台所で蕎麦を打っていた。
俺がいない日でも蕎麦屋のお客は多いらしい。いつも忙しそうに蕎麦を打っている。
大豊伊月さん。
俺がこの世界に来てからお世話になっている人。ショートカットで可愛らしい女性だ。とても一児の母とは思えない。いや胸だけで言うなら5人くらい産んでてもおかしくないが、顔付きは高校生でも通じるしお肌はツヤツヤだ。またあまりにも無防備で、俺に蕎麦打ちを教える時は胸がぐいぐい当たってくる。わざとではないと思うのだが、正直辛抱たまらない。すでに俺の我慢は限界を迎えようとしていた。だがお世話になった人にそんな感情を向けること自体気が引けていた。
だが俺はやる。だって・・・
「伊月さん。大事なお話があります」
「? 何かしら?」
「実は俺、昨日の夜中に喉が渇いて目が覚めてしまったんですよ。水を飲もうと思ったら伊月さんの部屋の扉が少し開いていてそこから苦し気なうめき声が・・・」
限界を迎えていたのは俺だけではないのだから。俺は昨日の夜中に見たことを伊月さんに話した。伊月さんの顔は真っ赤になってから真っ青になり、最終的には紫色で落ち着いた。
「拓真君!ごめんなさい!!」
伊月さんはテーブルに突っ伏して謝罪した。ゴンッ!!という激しい音がして心配になる。
「ごめんなさい拓真君・・。私ふしだらなことをしてしまって・・・。ごめんなさい・・ごめんなさい・・・アナタに私の汚い欲望をぶつけるようなことを・・!ごめんなさい・・・」
伊月さんは泣いていた。
身体も小刻みに震えている。
自身の性欲を俺にぶつけたことで俺が傷付いているのだと本気で思っているようだ。
そんなの全然気にしないのに。
ちなみに昨日は結構な音量で『拓真くうぅうん♡ 拓真くぅぅぅううん♡』ってずっと聞こえていた。本当に隠す気あったのかこの人、と疑いたくなるレベルだ。
「ごめんなさい拓真君・・・」
「いいんです!伊月さん!俺嬉しかったから!」
伊月さんをガバッ!と抱きしめた。胸部の強大な装甲が俺の胸でむぎゅーっと潰れて大変なことになっている。
なんか自分が人妻モノのAVの男優になったような気分だ。まあ伊月さんに旦那はいないのだが。
「拓真君・・・?」
「伊月さん俺・・・!!俺・・・!」
「ああなんてこと!拓真君のバットがこんなに大き
以下略。
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4時間後。
結果として本日の大豊庵の営業は休業となった。もはや蕎麦を打つことができる人間などいない。
「ふむ・・・。自然交配ってこういう感じなんですか。初めて見ましたねえ」
菊花は横で興味深そうに見ていた。
正直邪魔で落ち着かなかったが、追い出す訳にもいかない。
「うへへへ・・拓真くぅうん♡拓真くぅううん♡」
伊月さんが痙攣しながら俺の名前を呼んでいる。口からはよだれがダラダラ垂れており、いつもの貞淑で優し気な雰囲気はどこにもない。結果から言うとこの人は結構なムッツリだった。元の日本の一般的な男性の性欲を軽く超えている。流石は男女比が狂った世界、女性の性欲が凄まじい。逆によく今まで襲われなかったな俺、と感心するレベルだった。この性欲が無ければ子孫を残せない時期があったのだろう。
「ふう・・・」
今回は上手くいってよかった。伊月さんは分かりやすく俺に性欲を向けてくれたから俺も遠慮なく行くことができた。
「拓真くうぅん♡好きぃ♡」
「俺も好きですよ。それじゃあお風呂に入ってから掃除しましょうか?」
部屋は物凄いことになっていた。あと5時間後にはまた今日もスズメーズの試合があるのだが、この片付け終わるだろうか?俺はちょっと心配になった。
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「それじゃあ行ってきます!」
時間は午後4時半。俺は諏訪スタへと向かった。
片付けはなんとか頑張って終わらせた。主に俺が。
伊月さんは今日は使い物にならない感じだったが、30分前くらいにはもういつもの伊月さんに戻っていた。
「拓真君ありがとう。今日のことは一生の思い出になったわ」
「こちらこそありがとうございました。ちなみに子供ができるまでしないといけないらしいので、またお願いするかもしれませんが、その際はお願いしますね」
「こ、子供を・・・」
ゴクリと唾を飲みこむ伊月さんの瞳に何かの炎が宿るのが見えた。
ちなみに子供についても了承してもらった。
元より自然交配での子作りは全女性憧れの的で、本来であれば七桁の金額が必要になるらしく、了承しない女などいないらしい。
養育費なんかもあると思うのだが、その辺はいくらでもどうにかなるらしい。大学への進学率が低く、大学4年間の一人暮らしの費用や学費を考慮しないため、養育費は元の日本よりずっと低い。それだけで半分以下だ。それに女性が1人で子供を育てることが前提の社会なので、子供を預けるための施設は元の日本よりずっと充実している。二十歳前後で人工授精で妊娠する女性が多いらしいので、三十歳半ばでの出産は目立つだろうが、全くいないわけではないので大丈夫とのことだった。
「よーし諏訪スタ着いたー!」
諏訪スタに到着した。やはり徒歩圏内に野球場があるというのはいいものだ。
「拓真くーん!!」
「きゃあああああ!!拓真君だー!!」
女子達が俺に近づこうと突撃してくる。
「喝ッ!!!!!!」
菊花が喝を入れると突撃系女子達の動きがピタッと止まる。
「い、威圧だと・・・・!?」
「バカな・・・!う、動けん・・!」
「キサマ我々に何をした!!」
「少し喝を入れさせて頂きました。しばらくしたら動けるようになるでしょう」
「お、おのれえ・・・」
「キサマヨクモ・・・」
「何やってるんだ君達は・・・」
このやりとりもいつものことだ。なんか楽しそうなので放置している。
「はい皆ごめんねー。今日は待ち合わせしてるからお相手できないんだわー。今日も応援頑張ろうなー!」
「「「「「はーい」」」」」
女子達はそう言うと道を空けてくれる。
さて今日は真田の人が俺にチケットを届けてくれることになっている。
待ち合わせは当日券売り場入り口前。当日券売り場はもう閉まっていて『当日券はありません』の貼り紙だけがしてあった。
さて真田の職員さんはもう到着しているだろうか?
「拓真さん♪お待たせしました♪」
肩口を指でつんつんされた。
「あ、いえ今着いたところ・・・」
そう言ったところで固まってしまった。
そこには白のワンピース姿の美しい女性が立っていた。絹のような黒髪をたなびかせている。
「お久しぶりです拓真さん。お会いしたかったですわ」
そこには真田領の当主。
真田千幸様が立っていたのだった。




