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男女比1:1000の世界でも野球観戦がしたい  作者: げんずむ


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第39話 越後へのお誘い

「慰謝料寄越せ」


俺がそう言った瞬間の部屋の空気は面白かった。


「何言ってんだこいつ」


全員が頭のおかしい人を見る目で俺を見てくる。

だが俺はおかしいことは言っていない。


「は、はあ?お前から突っ込んでおいて何を・・」

「タックルされた女の方が悪い、だろ?」

「はあ?アンタとうちのボクちゃんは別ザマス!」

「何がどう別なんだ?」

「それは・・・男ザマスし」

「俺も男だ」

「ぐうぅぅ」


ろくに答えられない。

それはそうだろう。

こいつらは男の権威を笠に着るのは得意だが、男の権威をかざされるのには慣れていない。

自分達がしてきた理不尽を返されても対処の方法が分からない。


「琥珀様」

「ん。なに?」

「まだこれからお時間ありますか?こちらの女性の調停が終わりましたら、今度は先ほどのタックルの件で俺が彼女に慰謝料請求したいと思います。まったく!男にタックルされるなんてとんでもない女だ。お前覚悟はできているんだろうな?」

「タクが無茶苦茶言い出した・・・」

「拓真君・・・」

「あはははは!こいつは最高ですねえ!ホラホラこの女性に慰謝料請求しても構いませんよ?そしたらこっちはその2倍請請求しますがね!」

「に、2倍って・・・な、なんで・・・」

「午後までにもう一発タックルかますからだ。今度は手加減しない」


ペンギンが青ざめた顔で後退る。さっきのタックル結構痛かったみたいだ。


「俺はどちらでも構わない。早く決めろ」

「ぐ、ぐぬぬうぅぅぅ・・・!ぐぬぬぬぬぬぬぬぅぅうううう!!」






一通り呻いたあとペンギンとアメンボは帰って行った。




「よし悪は去った」

「タク・・・流石に無茶し過ぎだよ・・・。下手したら傷害事件だよ」

「ごめんなんか腹立ったからつい」


流石にあの態度は看過できなかった。


「とりあえずこれでもうあいつらにアナタが訴えられることはないでしょう。今回は災難でしたね?」

「あ、はい・・・。あの・・この度はありがとうございました!」


女性は涙目ながらににこやかに笑うと帰って行った。

よかった。無事に済んで。

警察署を出ると外には大勢の女性達が心配そうに俺達を見ていた。


「拓真君大丈夫だった!?」

「心配したよ!?」

「大丈夫大丈夫。それよりもわざわざ来てもらってありがとうね?」


彼女達はあの騒動の際に近くにいた目撃証言者達だった。幸いリゾート街ということもあり、朝倉、長尾、今川、三好、伊達と全国各地から満遍なく人がいたため、来てもらっておいたのだ。中にはスマホで録画までしてくれてた人がいた。もし調停員にこちらの証拠がインチキ呼ばわりされたとしたら彼女達に来てもらうつもりだったのだが、無駄足になってしまって申し訳ない。

そんなことを考えていると女性の1人がやってきておずおずとお願いしてくる。


「あ、拓真君。あの・・できればサインと、握手と記念撮影を・・・」

「お、もちろんいいよー。もし他にも希望者の方がいたら言ってね?」


というわけで来てくれた10人ばかりと握手、サイン、記念撮影を行った。

彼女達は一昨日の諏訪スタの試合を見るために来てくれてそのまま滞在していたらしい。良い思い出になった~と喜ばれるとこちらも嬉しくなる。


「拓真君ありがとう!」

「おう!また諏訪スタで会おうな!」


ちょっと野球の話なんかもしつつ、彼女達と別れた。

せっかくの他領からのリゾート中なのに警察署に来てくれるんだからいい人達だ。


「ふう・・やっと全部終わった・・・」

「川相拓真さん」


色々終わって一安心していると後ろから声をかけられた。

するとそこには先ほどまで調停を担当していた長尾琥珀様が立ってらっしゃった。


「琥珀様。先ほどは公平な調停ありがとうございます。一時はどうなるかと」

「別に当然のことをしたまでだから。それに・・」


琥珀様は目を伏せて言う。


「アイツらには私も迷惑してた」

「迷惑?」

「そう。長尾でも似たようなことをしてたから」


どうやらアイツらは迷惑行為の常習犯だったらしい。

しかし相手が男というだけでなかなか強く出られない。

結局北条に抗議をして出禁になったそうな。


「これであいつらは北条以外全部出禁」

「それはやらかしまくってますね・・・」


多分今回のことで真田も出禁なのだろう。

もうあの親子に会うこともあるまい。


「そういえばあっちの女三人の方はどうなるんです?」


もしかして懲役になったり?


「あの三人は真田と拓真さんへの賠償金だけ。下手に養うのも面倒だろうし。そんな判断したら千幸に怒られる」

「お、千幸様とは仲が良いのですか?」


なんだかそんなニュアンスだ。


「ん。私達は三好の高校に通ってたんだけど、そこで仲良くなった。同級生だよ」


つまり千幸様と同じ22歳ということか。まだ20代そこそこなのに威厳があって凄い。やはり嫡子というのはそれだけの人物ということなのだろう。


「拓真さん」

「? はい?」

「来週は長尾の試合が諏訪であるんだけど・・・。拓真さんも来る?」

「それはもちろん!!」


行くに決まっている。諏訪スタの試合には全試合行く。これはもう決定事項だ。


「そう・・それは良かった。ウチの領の子達も楽しみにしてるから・・」

「お、そうでしたか!でもテレビ中継は無いんでしたっけ?」

「うん。だからラジオと・・あとは動画投稿サイトのスタッフが行って撮影するって」


なるほど。投稿サイトでのライブ撮影か。最近は地上波が無くてもこういう手段を取れるんだよな。良い時代になったものだ。


「それじゃあ楽しみにしてるよ拓真さん。あ、あと連絡先交換してもらってもいい?色々と相談したいかも・・・」

「あ、はいそれは勿論!俺なんかが役に立てるならいつでもメッセージを下さい」


美女に連絡先を聞かれることなんて滅多にないからつい即答してしまう。

菊花がジト目で俺をにらんでいた。

なんでこう無防備なんですかご主人は・・・とでも言いたげである。

でも仕方がないんだ。元の世界の感覚が全然抜けないんだ。


「それじゃあ私は千幸にひと言挨拶してから帰るから。今日はちょっと楽しかったよ?」

「あ、はいこちらこそ。またお会いしましょう」

「ん。いつか越後にも来てね拓真さん。歓迎するよ」


越後・・・新潟かあ。そういえば元の日本でも行ったことなかったかも。


「いいですね越後!是非行ってみたいです!」

「ん。春日山スタジアムも最近新しくなって綺麗だから。きっと楽しいと思う」


おお!それは是非行ってみたいな。


「ありがとうございます!あ、あとそうだ!」


新潟といえばあの場所に行ってみたい。

新潟の有名な観光地といえば?と聞かれた時に真っ先に答える場所。

せっかく琥珀さんが話をしてくれてるのだ。俺も少しでも話を広げたい。




それだけの気持ちだった。



だがここで。

俺はこの日本に来てから最大のやらかしをすることになる。

結果として悪いことにはならなかったのだが、つくづく自分の詰めの甘さを知ることになったひと言。

言い訳のしようがないあまりにもうかつなひと言が俺の口から放たれてしまった。





「越後に行ったら佐渡島の金山にも行ってみたいです!信州の金山には昔行ったことがありましたので!」

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