第34話 真田スズメーズの深刻な事態
「「「「「「「「すみませんでしたあああああああ!!!!」」」」」」」」
真田スズメーズナインは今日も俺に謝ってきた。
本日のスコアは< 三好 5-3 真田 >。
昨日に比べれば随分惜しかったが、やはり地力の違いが出た結果となった。
「7回のノーアウト満塁のとこなんとかしたかったねえ!」
「「「サーセンしたああああ!!!」」」
三者連続三振をかました3人が90°のお辞儀をかまして謝罪してくる。でもアレは相手リリーフが良すぎただけだったから仕方ない。一塁側から見ていたけどあんなの打てねえよってなったもの。ちなみに三好の玉造選手は今日も3打点の大活躍だった。
しょんぼりして帰っていく真田ナインを見送ってから俺達も帰路に着いた。途中の田んぼのあぜ道を歩く足取りもちょっと重い。今日も俺は電光掲示板にデカデカと映っていたため油断することができなかった。常に愛想を振りまいていたため、なんか普通の野球観戦の10倍疲れた。
「つっかれた~・・愛想振りまくの大変だったな~・・・」
「拓真君お疲れ様」
「はーあ・・タクも頑張って応援してくれてたのに。今日も負けちゃったね~」
圭は残念そうに呟いた。
「うーん・・・ 完全に力負けしてたよなあ」
「ホントそれ。なんで三好にはあんなに良いピッチャーがたくさんいるのよ~。こちとら先発2人と中継ぎ1人と抑え1人しかいないんだぞー!」
それはこっちが異常なだけだ。
「来年は選手の補強しないといけないな」
「うーん・・・。残念だけどそれは難しいかなー」
「? どうして?」
「ら、来年真田の学校を卒業の選手にプロに通じる人がいなくて・・・」
「私と美月が誘われるくらいだよ?学校卒業したらプロに来ないかって」
そりゃこの子らのポテンシャル凄いからな。俺でも誘うわ。
「流石に断ったけどねー」
「そういや圭はプロになる気はないんだっけ?」
「あはは・・ 私は諏訪藩の藩主のお仕事があるからね」
そうか水蓮さんの後継者か。一人っ子みたいだしこれは仕方なかろう。
「美月も蕎麦屋継がないとだもんねー」
「う、うん・・・。ごめんね拓真君?」
「将来を決めるのは自分だからな。こればっかりは仕方ないよ」
それに真田スズメーズの年俸ってかなり低いんじゃないだろうか?
ただでさえ不安定なのに現役時代の年俸まで低いんじゃ無理に勧めるなんてできない。逆にそんな条件でもプロ野球選手になって試合に出続けてる真田スズメーズの選手達には尊敬の念を禁じ得ない。
「なんとかしてあげたいな・・・」
俺にできることがあるだろうか?いやあるはずだ!昨日今日と球場に足を運んでみて収益改善の方法ならいくつも浮かんでいる。千幸様に相談してみようか?球団経営に関しては素人だが、まずは言ってみないと始まらない。
「よし!俺もスズメーズのためにできることをしよう!」
「おっとタク!その前にやるべきことがあるんじゃないかい?」
圭がちっちっちと指を振る。やるべきこと?
「配信活動!タク忘れてない?」
「そういやそんなんあったなあ・・」
野球観戦に夢中ですっかり忘れてた。
「明日は土曜日だし、動画撮ろうぜタク!」
「それはいいけど・・・ 練習は?」
「明日はお休み・・」
「元々私らは3年だからホントはもう引退だし」
「そっかー。よし!それなら行ってみるか!」
動画撮影なんて初めてだ!なんかワクワクする。
「で、明日は何を撮るんだ?」
「明日はね――」
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「というわけで!今日私達は諏訪大社にやってきました!」
翌日の午前8時。俺達撮影班一同は諏訪大社に来ていた。
ちなみにカメラを美月、音声兼雑用を菊花が担当している。
「まったく・・なんでボクまで・・・(ぶつぶつ)」
「ご、ごめんね・・・?」
「いいだろ別に。どうせ暇なんだから」
「暇じゃありませんよ!ボクは護衛で忙しいんです!」
プンプンしながらもちゃんと音声の仕事をしてくれる菊花。良いヤツだ。ちなみに菊花も現在大豊庵で暮らしている。最近じゃコイツが大豊庵に住み着いた座敷童に見えてきた。こいつは俺に幸運を運んでくれるんだろうか?
「はいはいそれじゃあ動画撮影始めるよー!」
美月が慣れた様子でカメラを回し始める。圭の身長にカメラを合わせるためにやや中腰になっているからキツそうだ。
ちなみに彼女達の動画は空き時間に全部観た。基本的に諏訪の有名処や観光地・お店などを紹介する番組で編集も込みでなかなかよくできていた。それなのに全体的に再生数が少ないのが悲しい。圭は今日も楽しそうにサイドポニーをぴょんぴょん揺らしながら跳ね回っている。
「3・2・1・・・アクション!」
「皆さんこんにちはー!諏訪ちゃんねるへようこそー!今日も諏訪の良いところを探してみましょうということで!本日はこちら!」
圭がバッと両腕を広げてカメラにドヤる。
「諏訪大社に来ております!!
・・・・・・・・え?前にも来たって?ちっちっち!前とは全然違いますよ!
なんと今回は特別ゲストをお呼びしております!」
キレのある動きでシュバババッ!!と俺の方に手を向けた。
「というわけで本日のゲストはこちら!川相拓真さんです!よろしくおねがいしまーす!」
「やーやー どうもどうも 圭さんおはようございます!」
「おはようございます!というわけで見ての通りこちらの川相拓馬さんは男性なんですよ!凄いですねえ!ウチの動画に男性が出てくれるなんてありえませんわよ!」
「はーい!ワケあって今諏訪にお世話になっておりまして!そのご縁で動画に出させてもらいましたー!」
「タクは諏訪に来てどれくらい経ちましたっけ?」
「まだ一週間くらいですかねえ。だから諏訪について何も知らないんです・・。
せっかく住んでいるところなんですからもっとよく知りたいんですけどねえ・・」
「それなら一緒に諏訪を見て回りましょう!私、諏訪は得意なので!良いところ一杯知ってるんですよ!」
「え、いいんですか!?それは助かります!」
「はい!というわけで今日も元気に!諏訪のちょっといいとこ見つけてみよー!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はーいカットー。ん、まあこんなもんじゃないですかね?ただ圭さんちょっと声量抑えてください。音割れする直前ですよ。あとご主人はカメラをもっと意識して自分が真ん中に立つようにしてください。せっかくの男性ゲストなんですから、端に寄ってどうするんですか」
本日初参加の音声担当からダメ出しが入る。
「サーセンした!」
「ありゃりゃ。それじゃあもう一回行く?タクはどうする?」
「こ、これくらいなら編集でなんとかなるから・・・」
「それよりも早く撮影済ませちゃいましょう。ご主人は有名人なんですから。あまり同じところに長時間いないようにしてください」
変なのが寄ってきますから、と菊花。
動画撮影は基本的に質より量だ。
とにかく毎日何かしらの動画を更新するのが良い。
動画編集するのも大変だけど、とにかくなんでもいいからコンテンツがなければならない。
「そういえば動画編集って誰がやってるんだ?」
「それは黒田の職員さんがやってくれてるよ。タクが動画に出るって言ったら張り切ってたよー?」
男の人が出る動画なんて滅多に編集できないからね、と圭は笑っていた。そんなに期待されているんじゃ仕方ない。それでは早速撮影に行こう。
諏訪大社は荘厳な雰囲気をまといただそこに佇んでいた。
なんだか背筋がヒュンとなってしまう。




