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影の航空機━ノベライズ━  作者: 紫 和春


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第46話 艦ってことで

 福州市での空爆事件だが、中国の外交部、国防部、警察組織はもちろん、テレビでのニュースですらこの事件を取り上げることはなかった。

 その一方で、中国のみで利用できるSNSでは、今回の大惨事に関する情報がわんさか出てくる。その上グレート・ファイアーウォールを突破して、西側のSNSにまで情報が出てきてしまう。

 そのようなこともあって、各国は救援隊の派遣の打診を行ったのだが、中国政府はメンツを保つためなのか全ての救援隊の派遣を断った。


「こんな時でも救援を断るとは、隠蔽体質の中国共産党のやりそうなことだ」

「本当に大丈夫なんでしょうか?」


 中里のボヤキに、神崎が聞き返す。


「大丈夫だろうよ。かの国はいつもこんな調子だ。国家主席様のご機嫌を伺って、正しい情報を伝えられず、そうしてゆっくりと自身の首を絞めていく。そうやってあの国は滅ぶんだよ」

「そうなんですか……」

「まぁ、今すぐにでも爆散したら世界経済に大打撃を与える上に、内乱で戦国時代に逆戻りだな。今が影による緩やかな滅亡段階にいるだけ温情だよ」

「ひぇ……」


 あまり考えたくないものである。神崎は関わるのをやめたくなった。

 そんな中、山部島で進展があった。艦橋部の探索を行っていた研究チームが、残っていたわずかな文書や文字を元に情報を引き出し、艦橋での操作方法を確立したのだ。これにより、山部島を操縦することが可能になった。

 移動ができるようになった山部島だが、ここで防対本にいる法務省職員が疑問を投げかけた。


「住所が動くって法的にどう解釈すればいいんだ?」


 これには防対本の職員の半分が頭を悩ませた。住所が動くと言うのは聞いたことがない。しかし、すでに住所を割り当ててしまった。どうするか。

 そこに、海上自衛隊の護衛艦で勤務していた自衛官が一言言い放った。


「普通に護衛艦で住所登録してましたよ?」


 聞けば、営内で暮らしている自衛官の中でも護衛艦などで勤務している自衛官は、住所が艦名になっていたりするとのこと。

 そういうわけで山部島は、「東京都に編入された一つの船」という超法規的解釈を行うことになった。


「いやぁ、いよいよ超巨大不沈空母の(てい)を成してきたな……」

「防対本の狙い通りだろ。今更何言ってるんだ」

「というかですよ! 山部島で文字情報とかあったんですか!? そっちが重大でしょう!」


 文字などの情報があるということは、そこに人間に近い知的生命体がいたということになる。しかも人類の知識で解読できるほど、言語が似ているということでもあるし、知性や文明レベルも近いと言うことだ。

 閑話休題。

 そんな山部島は、現在小笠原諸島近辺にいる。この場所では本土から遠く、資材搬入で一苦労しているのだ。その問題を、移動できることで解決する。本土に近い場所に移動することで資材搬入や労働環境の改善を図れる上に、外洋特有のうねりなどが来ない場所へ移動できるのだ。もっとも、山部島くらいの大きさならうねりなど関係ないだろうが。

 こうして大改造のため、山部島を伊豆大島の近くまで移動させる。航行速度は最大で時速40km前後。台風が移動していると考えればいいだろう。

 移動している間も改造を施し続け、人間が最低限の文明的な生活を行える程度の施設一式が建築される。

 こうして山部島は、次第に自衛隊式の基地へと変化していく。

 余談であるが、山部島が伊豆大島近海に到着した頃、アメリカ軍は日本の真似をしてハワイの近くにいた人工島をあっさり拿捕するのだった。

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