19話
学食で注文した料理を高梨子と待っていた。
涼介は隣をちらりと見た。
今日の高梨子は、いつもより口数も少なく表情もやや硬い気がした。
「もしかして…キンチョーしてたり」
「やばい結構してるかも」
「大丈夫…。俺もいるし」
「涼介、かっこよ」
「行こ」
高梨子と頼んだ料理を手に待っている二人のもとへ行く。
ふんぞり返った姿勢の伊藤が高梨子に気づいて言った。
「どーも…いッ、…何すんだよ」
「すまん、根はそんなに悪くないんだ。こう見えて」
伊藤の頭を抑え与恵が言った。
二人の仲良しぶりを目の当たりにした高梨子が笑う。
「…っふ、」
「あ、何笑ってんだテメ」
「お前は少しくらい大人しく出来ないのか」
「どけ、アホ恵」
「なあ、とりあえず飯にしよ」
のんびり言うと涼介は高梨子を隣に座るよう促した。
「お邪魔します」と高梨子はトレーを置いて席に着いた。
お腹空いた…けどまずは高梨子だ
「…飯食う前に、紹介しとく。こないだ顔合わせたんだよな…?一応改めて与恵、伊藤……最近よく喋る高梨子」
隣を指さして言った。
「涼介何その紹介…まあいいや。…高梨子葵一人です。この前も言ったけど野田くんとは一緒の授業取ってて最近仲良くしてます、よろしく」
直後、与恵と伊藤が反応した。
「っ、ッ…ちょっと、高梨子」
「ぶっ、ぶあはは」
涼介も少しめんどい事になったと半目で高梨子を見た。
「……たかなし、何で…」
「え、変なこと言った…?」
理解が追いついていない高梨子の様子に与恵が早口に説明する。
「っ、すまん。……、この前は普通に『涼介』って呼んでたのにフェイントきたから…ッ」
そう言ってぶはッと笑い出した与恵。高梨子は高梨子で顎に手をあて自覚なく言ったような天然ぶりだ。
「あ、あー今そう言った…?ちょっと緊張してて…」
……ずるい…、そんなん。いや人の苗字言っただけで笑うこの二人が…
…でも逆の立場だったら俺も笑…わない……たぶん。
涼介がそんな事を考えていると笑い声が聞こえなくなった。
大人しくなったかと思えば涼介を見るなり伊藤が口をおさえた。
「野田くん、ぷっ…」
「俺も暫く初心に戻ってそう呼ぼうかな。な、野田くん」
…、与恵まで……いつまでこれ続くんだろ
落ち着くまでしばらくかかりそうだ。
「………涼介、ごめん」
空気を読んだ高梨子に、涼介は気にすんなとだけ返す。
とりあえず中断していた食事を再開しだした涼介。小さくいただきますと手を合わせてすうどんを啜っていると与恵が言った。
「な、高梨子連絡先交換しよ」
「…俺もしとこー。…ぶっは」
……こんにゃろ、
「まだ笑うか」
「味がするうちは。の、…のだくん…」
「声震えてるよ、伊藤くん……、高梨子こんな二人だけど、よろしく」
涼介がそう言って高梨子を見ると嬉しさを堪えたようにはにかんで頷いた。
―その後―
「涼介がさっきも言ったけど俺、道祖土与恵。与恵って呼ばれてるから良かったらそう呼んで。…おい、お前も…」
「……、伊藤だ」
「与恵と伊藤くんね、よろしく」
「あ…?何で俺だけくん付けなんだよ」
「あ、ごめん別に他意はないよ」
「嘘つきやがれ、」
「おい、くわないのか冷めるぞ」
「……くう」
「あ、俺もいただきます」
「ああ゛美味い…」
「ッ、涼介やば」
「のむ…?高梨子」
「いや、俺は…」
「じゃあハイ」
「何で俺だよ」
「まあまあ、そういわず」
いつものやり取り。高梨子は三人のコントをみて笑っていた。




