⑤ トカゲの女王
その男が去るのを待って、雪子は彼女に声を掛けた。
「アナタが、トカゲの女王なのかしら?」
すると、その女が振り返りながら言った。
「その名は、地底世界で名乗っているわ。このウラル山脈では、銅山の女王アゾフカよ。突然やって来て、不躾な事を尋ねるアナタは誰?」
「私?私は超時空の魔女、真田雪子よ。アナタがアラハバキなら、名前くらい知っているのでは?」
すると、アゾフカの顔色が変わった。
そして「コチラへおいでなさい。」と言って、雪子を先程の王座の間まで案内した。
彼女は、王座に収まると、雪子に対して質問を続けた。
「それで…今日はワタシに何の御用なのかしら?」
「では、単刀直入に言うわね。私はこれ以上の貴女の行ないを、見逃す訳には行かないわ。」
「…私のナニがいけないと?」
「コチラの、ロシアでの女王様ごっこは、まあイイわ。男どもが、貴女のそのニセモノの、美しいニンゲンの皮に騙されて、嬉々として働くおバカさんたちって事だから。」
「そうね。ロシアの男たちは、皆、屈強なカラダで良く働くわ。だから時々、ワタシからもご褒美をあげて居るくらいよ。」
「それは与える財宝以外に、夜の伽のお相手も、含めるのよね?」
「…ご想像にお任せするわ。下等生物と交わるワタシの趣味を、とやかく言われる筋合いも無いしね。」
「ふん、どっちが下等だか!」
雪子は吐き捨てるように言った。
「…でも、地底人に対する貴女の振る舞いは許せないわ。」
「たがら、ナニが?」
「住人たちのカラダに、あんな恐ろしい改造を施して…女性も、小さな子どもまで、すっかり緑色じゃないの!」
「ああ、あれは…彼等のカラダが、余りにも労働力として脆弱だったから、少しでも使いモノになるように、改良して差し上げたのよ…それでも、すぐ死んでしまうのよ。ダメよねえ?」
アゾフカは、舌なめずりをしながらそう言った。
「あの緑色は、食事をしなくても、栄養補給が出来るように、光合成させるためなのだという話は、本当なのね?」
「そうよ。ワタシの独自開発した改造技術なの。素敵でしょ?それでも、どうしても食欲を抑えられない時には、豆を食べるように、食べ物の嗜好まで変えてあるのよ。完璧だと思わない?」
女王は嬉々として答える。
雪子は、そろそろ堪忍袋の緒が切れかかっていた。
「…もう…いいわ。」
「…は?」
「もう、貴女は喋らなくてもイイ…。」
「ナニよ。急にコワイ顔をして…どうかしたの?」




