㉕ 照和の研究所
"照和"の研究所に戻った雪子は、取り敢えずエレベーターで、二階に上がってみた。
すると中庭に面した喫茶コーナーで、ちょうどカグヤと成雪が、談笑しているところだった。
カグヤは水色のワンピース、成雪はピンク色のポロシャツにブルージーンズといった、寛いだ格好だ。
「あら雪子さん、お帰りなさい。昭和の時間軸の皆さんは、お元気でしたか?」
すぐにカグヤが気がついて、声を掛けて来た。
「ただいま。みんな息災だったわよ。」
雪子も気さくに答える。
二人は、時空を超えた親友になる運命なのだ。
「雪子さん。僕、気になる事が有るんですけど…。」
成雪が話しかけて来た。
珍しく積極的だ。
「成雪ったら、地球の歴史について勉強しているうちに、何か引っ掛かる事を感じたらしいんです。」
横からカグヤが補足する。
「なあに?お姉さんが聞いてあげるわ。」
優しく言う雪子。
成雪の見た目は立派な青年だが、つい最近産まれたばかりのクローン人間。つまり中身はまだまだ、子ども同然なのである。
「…ねえ、雪子さん。今の人類の文明は、地球の歴史上、"何周目"なの?」
なかなかの爆弾発言だった。
「…ああ貴方、そこに気がついてしまったのね?」
雪子は取り敢えず、そう返した。
「ソレは…難しいモンダイね。4周目という話を良く耳にするけど、諸説有るわね。」
「そう…なんですね?」
「…確かめたいの?」
「ええ、出来れば、後学のために…特にインドの伝説"マハーバーラタ"と"ラーマーヤナ"は、気になります。」
「ああ、それ?実は私、以前、時空サーフィンしてた時に、チラリ垣間見ちゃったのよねえ。」
「…?」
「真っ最中はアブナイから、直後に行きましょうか。ただし現場に行っても、電磁防壁は解除しないでね?」
「はあ…?」
成雪はよく解らないという顔で、返事をした。
その隣に居るカグヤは、何となく事情を察したようだった。
「じゃあ、チラ見だけだから、今から早速行きましょう。でもその前に、まずは貴女たちの部屋へ移動ね。」
そんな訳で三人はカグヤの自室に移動した。
そして、ソファーに二人を座らせると、雪子はテーブルの上で例のカバン…二名用ポータブルタイムマシンを開いて、コントロールパネルに目的地の座標を、以外のように入力した。
紀元前2000年4月25日
時刻8時00分
北緯27度20分
東経68度08分
「さあ、二人で仲良く肩を組んで…後はスイッチを押してね?私は自分の"お一人様用のリング"を使うから。」
雪子はそう言うと、ちゃちゃっとリングに入力して、パッと消えてしまった。
「じゃあ、行ってみようか?」
最後の意志確認をするカグヤ。
「はい。お願いします。」
無垢な顔で、返事をする成雪。
カグヤも覚悟を決めて、マシンのスイッチを入れたのだった。




