㉓ 由理子と鷹志
「ただいま。」
雪子が亜空間レストランに戻ると、サン・ジェルマンは不在で、代わりに杉浦鷹志と真田由理子が、暇そうにしていた。
「お帰りなさい!バルト海から帰って来たんですよね?」
由理子が元気に声を掛けて来る。
「そうよ。伯爵に聞いたの?」
「はい。きっと精神的に疲れてるから、労うようにって。」
「あらあら。それで、本人はどこへ?」
「なんかあ、他のフーファイターも確認しに行くって、出かけちゃいました。」
「へえ、そうなのね。」
「雪子さん。」
鷹志からも話し掛けられる。
「なあに?」
「フーファイターって、第二次世界大戦中の、謎の飛行物体の事ですよね?」
「そうよ。当時どの国も、知らぬ存ぜぬを通した円盤群。でもさっき海底で見た限りでは、ナチスドイツの秘密兵器って感じだったわ。」
「ああ、多分それは、軍の中でも一部の者しか知らない、トップシークレットだったんですね。」
「恐らく、そんなところでしょう。アラハバキの連中、中途半端な技術供与なんかするから、故障しても、ニンゲンには直せなかったみたいね。」
「成る程。じゃあ、アチラコチラの海底に、ナチスの円盤が沈んでいそうですね?」
「そうかもしれないわ…或いはもう、どこかの大国が、海洋調査と称して、サルベージしているかもね。」
「じゃあ、伯爵はそれを確かめに行ったわけだ。」
「その線が濃厚かな。」
「確か一番古い記録が、1941年の9月ですよね?インド洋に現れた、満月の半分くらいのサイズの、緑色に輝く球体だとか。」
「良く知ってるわね。」
「こう見えても、僕、UFOマニアなんですよ。」
「空飛ぶ円盤は、猫王子と犬王のせいで、見慣れちゃったけどね?」
「まあ、そうなんですけど…相変わらず、正体不明のモノも有りますから。」
「1942年の2月25日なんか、ロサンゼルスで空襲騒ぎになったのよね?」
「そうなんですよ。夜中の3時とか4時に、赤や銀色の飛行物体がたくさん現れて、それに向けての対空砲火で、1430発以上も撃ったらしいんです。」
「すっかりパニックね。1943年の10月14日には、ドイツを爆撃した帰りのB-17が、銀色の小さな円盤の編隊に、追い回されたって言うしね?」
「個人的に僕は、フーファイターの正体を、誰かのタイムマシンだと思ってたんですけどね…タイムトラベラーが、僕等以外に居ない方が不自然だし。」
「分からないわよ。案外そういうのも、混ざっているのかも…。」
雪子はそう言って、ニヤリと笑った。




