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「雪子の地底調査」(セーラー服と雪女 第23巻)  作者: サナダムシオ


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㉒ バルト海の遺物

 現場に到着した雪子は、黄色いビートルに光学迷彩を掛けまま、ユックリと海中に降下させた。深くなるにつれて、海水温が下がり、透明度も悪くなった。

 

 ビートルの潜水能力については、問題無いようだ。サン・ジェルマンによると、深度100mまでは余裕で潜れるらしい。どうせ、ガチの深海探査用には、また別の発明品が有るに決まっているのだが…。


 彼女がそんな事を考えているうちに、目的の深さ90mに達したようだった。雪子はヘッドライトを、海中用の強めの光のモノに切り替える。


 話に聞いていた通りの物体が、目の前に見えてきた。確かにソレは、直線的な幾何学模様の入った、円盤型の乗り物に見えた。


 しかし猫王子のモノとも、犬王のモノとも、爬虫類族のモノとも違う、雪子の知らないタイプの円盤だった。ただ彼女の記憶の中で、ナニか薄っすらと、心当たりがあるような気がしたのだ。


 円盤の中央辺りに、ドーム型の風防ガラスが見えた。多分あれは、操縦席ではなかろうか?そう推察した雪子は、ハンドルを操作して、そのドームを違う角度から見える場所に回り込み…ついにその中に座る男の姿を見た。


 操縦席の男はすっかりミイラ化していた。

 海底に不時着した後も、最後まで諦めず、何とかしてこの円盤を、飛ばそうとしたのだろう。


 未だに、ここから半径20m以内の海中に、恐らくは動力源からであろう、電磁波が出続けているのが、何よりもその証拠である。


 軍人としては、見上げた心掛けである。

 ただ一つ、彼の所属を度外視すればだが…。


 彼の軍服の袖には、ハーケンクロイツ…所謂「かぎ十字」のマークが入っていたのである。そう。彼はナチスドイツの一員だったのだ。


 そもそもこの海域は、古くから交易の要所であり、戦争の舞台でもあったため、数万隻とも言われる難破船や、墜落した航空機がが数多く沈んでいる、この円盤も、先の大戦で人知れず撃墜されたモノなのだろう。


 そう言えば、ウワサに聞いた事がある。

 第二次世界大戦中に、敵味方に別れて交戦中の、プロペラ機に混じって、"フーファイター"と呼ばれる、謎の円盤が居た事を。


 雪子はそんな事を思い出しながら、海中から再びユックリとビートルを浮上させて行ったのだった。


 サン・ジェルマンは、知っていたのかしら?

 少なくとも、見当はついていたのよね。

 それで、敢えて私に確かめに行かせたんだわ。


 多分アレの情報は2011年以降も、結局封印されてしまうわね。或いは、何処かの軍部に回収されてしまうのか…その時が見ものだわ。皮肉な笑顔を浮かべながら、雪子は帰路についたのである。

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