㉑ 伯爵への報告
「地底に行ったら、また他の種族から、ニンゲンの行ないに関して、お叱りの言葉をいただきました。」
雪子は、亜空間レストランに帰るなり、サン・ジェルマンにそう報告した。
「それはまた…お疲れ様でしたね。」
労う伯爵。
「それに、地下世界で勝手な事をした、犬王と猫王子の分まで、ついでに謝罪しておきましたよ。」
「…災難でしたね。」
「…そう、そう。貴方の仲間11名が、地下世界と100年前に接点が有った事も聞いたわよ。」
「ああ、それはまだ、私がメンバーに入る前のサン・ジェルマンズの活動ですよ。」
「今はメンバーの一員なのね?」
「ええ、まあ。一応は。」
「貴方には、まだまだ謎が多いみたいね?」
「ミステリアスな男、お好きでしょ?」
「まあね。地下世界については、大体納得したわ。一番不思議なのは、あの場所での時間の流れ。」
「…と、言いますと?」
「地上のどの時間から入っても、地下世界の時間が一定な事よ…というか、ものすごくユックリなのかしら?」
「…イイ線ですな、その解釈。」
「まるで地上の1000年が、地下の一年に当たるような…。」
「はたして、あの場所が、本当に地球の地下なのかも、怪しいですよね?」
「…なあんだ。貴方も知ってたんだ。」
「まあ、雪子さんより少しだけ以前にね?」
「へえ。まあ、イイわ。さあ次はどこの謎を、攻略しに行こうかしら…。」
「海底なんていかがです?」
「ビートルは、潜水能力無いんでしょ?」
「実は、京子さんの黄色い4号だけは、そういう仕様に改良してあるのですよ。」
「例によって、何故4号だけなのかは、分かるヒトには分かるのよね?」
「はい。往年の人形劇…スーパーマリオネーションにちなんで、そうしてあります。」
「…よく解らないけど、まあいいわ。それで…どこの海底がオススメなのかしら?」
「それは…バルト海ですよ。」
「…バルト海?」
「そうです。ちなみにコレが座標です。」
サン・ジェルマンはそう言って、雪子に以下のようなメモを渡した。
2011年に発見される謎の遺構
深さ90mの海底
直径60ft(18m)の円盤状の物体
海底を400m滑った跡有り
ボスニア湾の中央辺り
異常な電磁波を検知
北緯60度15分
東経19度40分
「…あら、珍しいわね?未来の日付じゃない?」
「ええ…公式にはね?」
「また、何か企んでいるのかしら?」
「いえ、いえ。私は別件で、ちょっと手が離せないので、雪子さんに、代わりに調べていただけると、大変助かるのですが…。」
「…まあ、いいわ。暇だし、行って来てあげる。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。はい、コレが黄色いビートルのキーです。」
そんな訳で、シャワーを浴び、軽食をとって少し休憩した後、雪子は海底探索に出かけたのである。




