⑯ 伯爵の夢
皆で少し談笑した後、ミケーネもバステト嬢も、本当に帰る事になったので、チーム・サン・ジェルマン全員は、見送りに地下駐車場まで降りた。
そこには、ミケーネのオレンジ色の宇宙船の隣に、同じ円盤型の、スカイブルーの宇宙船が停泊していた。ソレが黒猫の船だった。
「わあ、コッチのボディカラーも素敵ね?」
由理子がさり気なく褒める。
「でしょう?この色だけは譲れなかったのよ。」
バステト嬢も、まんざらでもないようだった。
「貴女、イイ娘ね?気に入ったわ。これからもウチのミケーネの事、よろしくね?」
「はい、もちろん。大切なお友だちですから。」
「100店満点の答えだわ。さあ、ミケーネ、帰りますよ。」
「は〜い。」
何だか元気の無いミケーネ。
正妻の長い出張が終わったのが、そんなに不味い事なのかな?鷹志は不思議に思った。
多分、そう思ったのは、この場で鷹志だけだったのだが…。
何はともあれ、2幾の円盤は無事に去って行った。
「これでまた、レギュラーのお客様が増えましたね。」
サン・ジェルマンが呟いた。
「貴方の夢なんでしょ?ここを、超時空の才能と個性が集まる、サロンにする事が…。」
隣で雪子が囁く。
「そうですね。"世界中のタレント&アビリティを名護屋へ"が私のライフワークのスローガンですから。」
「まあ、私も微力なから、協力させていただくわ。」
「それは大変助かります。」
「そう言う訳だから、もう少しシルバーのビートルを私に貸しといてね?」
「構わないですけど、また地下に行くんですか?」
「ええ、座標も大体分かったから、今度は直接ね?」
翌日、雪子は早朝からシルバーのビートルに乗り込むと、地下駐車場を出発し、早速、光学迷彩を掛けて空へと上がった。
フロントコンソールパネルに座標を打ち込むが、年月日はプレゼント・タイム…つまり"現在"だ。
目指すは蓼科山の七合目登山口。
今回は、空路を使う以外、通常のクルマのナビゲーション・システムと同じ扱いである。
「たまには、こういう乗り方も新鮮でイイわね。」
雪子はそんな独り言を言いながらビートルを飛ばした。
蓼科スカイライン沿いの、一の鳥居前駐車場に到着すると、雪子は光学迷彩を解き、クルマを降りた。
(さて、あれから600年以上経ってるけど、あの穴は無事に有るのかしら?)そんな事を考えながら、彼女はすぐそばの登山口から、山道に入って行ったのだった。




