⑮ 彼女が正妻
もちろん雪子も、少なからず驚いたが、黒猫のこの動きは、ある程度予測の範囲内だった。
多分、自分のセーラー服のどこかに、猫族お得意の、蚤型発信機でも付けられたのだろう。
あの時点で、私が由理子の姉である事が、バステト嬢にバレていたのだ。彼女はそう思った。
「皆さん、はじめまして。私が、そこで仕事をサボって遊んでいる、ミケーネ王子の正妻のバステトです。以後、お見知り置きを。」
彼女はそう言うと、優雅に会釈した。
そうしていると、戦闘時とは別人のように、気品に満ちて見えるから不思議だ。
「私はサン・ジェルマン伯爵と申します。趣味で、歴史調査をやっております。どうぞよろしく。」
彼が真っ先に挨拶を返すと、黒猫から何時もの反応が有った。
「サン・ジェルマン…貴方があの…?」
「…そうですね。私がそのサン・ジェルマンです。」
彼も相手のこの反応に、そろそろ慣れっ子になっていた。
「僕は杉浦鷹志です。ここのスタッフとして働いてます。」
「あら、可愛らしいニンゲンの男ね。するとお隣に居るのが…?」
「真田由理子です。雪子さんの時空を超えた妹です。このレストランでメイドをしてます。どうぞよろしく!」
彼女はそんな感じに元気に挨拶した。
「ああ、貴女が由理子さんなの。へえ〜そうなの…。」
バステト嬢はまた、独特の反応を見せた。
「さあ、そろそろ僕は帰ろうかなっと…。」
猫王子がコソコソ動き出した。
「ちょっと待ちなさい!」
黒猫が、引き止める。
「貴方、ココに来る頻度が、少しばかり多すぎやしないかしら?」
「いやココに来る事も、大事な任務なんだよ。詳しく言えないけど…。」
「知ってるわよ。貴方と犬王が、大層このニンゲンの娘に、夢中だって事を。」
「ハイ。お二人とは仲良させていただいてます。」
由理子はそこに口を挟んだ。
「でも、ご安心下さい。皆さん、良き御友人ですよ。私には正式なパートナーとして、コチラの鷹志さんが居ますから…。」
彼女はそう言いながら、鷹志の腕を引っ張った。
「あら、そうなの?」
「はあ、まあ僕たちはもう、婚約してますので。」
鷹志がそう答えると、黒猫は何故か少し残念そうだった。
「ほら、そう言う訳だからね…何も心配無いのだよ。」
ミケーネも慌てて言い繕う。
「ふ〜ん。まあ、いいわ。今後は私も、コチラに時々顔を出す事にするから…皆さんよろしくね?」
バステト嬢はそう言うと、ニッコリ笑った。
何故かその後ろで、ミケーネが頭を抱えて居たのだった。




