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「雪子の地底調査」(セーラー服と雪女 第23巻)  作者: サナダムシオ


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⑪ サン・ジェルマン

「サン・ジェルマンだと!?まさか、"あの"…?」

 天狗殿は、顔色を変えた…んだと思う。何しろ、元々真っ赤な顔の上に、湯舟の中に居るから、正直、雪子にもよく分からなかったのだ。


「…ええ、そうよ。多分、"その"サン・ジェルマンよ。」

 そう言いながら、雪子は半ば呆れていた。


 サン・ジェルマン。試しに名前を出してみたけど…まさか地下世界にまで、その名が轟いていたなんて。相変わらず、どこまでも食えない男だわ。


「解ったら風呂からとっとと上がって、着替えて待っていなさい。後で私が、必ず迎えに来るから。」

「うむ。かたじけない。」


 そんな訳で、雪子はまず、先程の穴まで戻った。

 そこには約束通り、甲賀三郎と春日姫が、大人しく待っていた。


 彼女は二人を連れて、横穴が縦穴に変わるところまでやって来ると、チカラを使って、まず甲賀三郎を穴の外へ出した。


「じゃあ、甲賀さん、そこから手を伸ばして。」

 雪子はそう指示を出すと、次に春日姫をチカラで持ち上げた。

 すると彼は、上で妻を上手くキャッチしたようだった。


「何から何までかたじけない。」

「色々お世話になりました。」

 二人は穴の上から雪子に向かってお礼を言った。


「いいのよ、気にしないで。お二人とも、お幸せに!…あ、そうそう最後に三郎さん。」

「何です?」


「貴方の奥方様は器量良しだから、お兄様方の動きには、ご注意なさってね?」

 雪子は、老婆心から、つい言ってしまった。


 しかし、三郎は素直に「うん、よく覚えておこう。」と言って去って行った。

 多分、ナニか思い当たる事が有るのだろう。


 雪子は、この後の彼の運命を、知っていた。

 春日姫が、天狗の屋敷に、鏡を忘れて来た事にも気づいていた。


 そして、それを取りに帰ったせいで、三郎が兄の二郎にハメられて、地下世界にしばらく閉じ込められる事も。


 まあ、でも、その後ナンヤカンヤあって、13年後には地上に戻れる、ハッピーエンドなのだ。それで良しとしよう。何しろ、必要以上に歴史に干渉するのは、イケナイ事なのだから…。


 雪子は、そんな感じに自分を納得させると、一路天狗の屋敷へと戻った。

 天狗は大人しく、玄関で胡座をかいて彼女を待っていた。


「あら、お行儀良く待って居たのね。感心だわ。」

「…ワシは、先程、"真田雪子"という名についても、思い出した。貴殿も伝説のツワモノらしいな?」


「まあ、そこそこ強いわよ。完全体のカグヤ・イシュタルと、タメを張るぐらいにはね?(第17巻)でも私の知り合いは皆、バケモノ揃いだから…その中では大した事無いかもね?じゃあ、行きましょうか。」


 雪子はそう言うと、天狗殿を屋敷から連れ出した。

 まず目指すは、12世紀の英国に繋がる穴だ。

 そこでシルバーのビートルが、彼女の帰りを待っている。

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