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幼なじみか、親友か、それとも……

 海歌が学校に来てくれるようになって、一緒に過ごす時間が長くなった。

 海歌は遅刻したり、保健室に引きこもったりなど、まだまだ学校生活に慣れていないみたいだけど。


 お昼ごはんは、毎回、例の5階の空き教室で二人きりで食べている。一緒に帰ることもしばしば。


 そんな日常に、ちょっとした波風が起こる。


 それは、期末テストが終わった後の、とても暑い日のことだった――



「ねーねー、海ちゃん!」

「テストの結果、どうだった?」


 掃除の時間、机に突っ伏している海歌に、空音と、その友達のミサキさんが、話しかけている。

 その様子を、俺は掃除をしながら、教室の後ろのほうから眺めていた。


「……ダメに決まってんじゃん。英語は50点ぐらい取れたと思うけど、数学と社会科の科目は20点に届いてなかった」


 海歌は、自分の腕に顔をうずめたまま答えた。


「2学期、3学期で巻き返さないと留年だって、先生に言われたわ……クソ」


「まあ、海ちゃんはここ最近まで学校来てなかったし、しょうがないよね……でも、頑張って学校に来てテスト受けられて、偉いね!」


「そういう空ちゃんはどうなの?やっぱ、オール100点?」


「オール100点は難しいけど、全部90点以上は取れてたよ!」


「お~さすが」


「空ちゃんはね、自分の好きな哲学の勉強と、塾の勉強を並行でやってたんだよ」


「え、マジ?……人工知能並みじゃん」


「えへへ、それほどでも~」


 空音は既に、大学進学のための勉強をしているらしく、国内最高峰の東大(東宮ひがしみや都立大学)への進学を志望している。彼女は心の底から、勉強が好きらしい。


 それと比べてしまうと、海歌の点数はより悲惨に見えてしまう。

 2学期と3学期で巻き返せるのだろうか……?

 それは、海歌次第だが。


「あと、海ちゃんに聞きたいことがあるんだけどね~」

「何か最近、海歌ちゃんって古谷ふるやくんと仲良いじゃん?幼なじみだから?友達だから?それとも……」


 空音とミサキさんが顔をそろえて、海歌に迫った。


「海ちゃんって、陸翔くんと付き合ってるの?」


 教室の後ろまで聞こえるぐらいの声量で、空音が尋ねた。

 海歌は顔を上げ、空音とミサキさんを順に見て答えた。


「――付き合ってるよ」

「「おお……!!」」


 生粋の恋バナ好きである空音とミサキさんが、目をキラキラと輝かせている。


 そんな一連の話を小耳に挟んでいた何人かのクラスメイトたちの視線が、海歌に、そして俺に注がれた。


 やめてくれ、(まさか、クラスで目立たないアイツが、不登校だった海歌と付き合ってる!?)みたいな奇異の目で俺を見るのは。

 俺は咄嗟とっさに目線を下げて、ほうきを動かし、掃除に集中していて聞こえなかったフリをした。


(な、なんで海歌は言っちゃうんだよ……)


 顔が、全身が熱かった。

 体を流れる血が、煮えたぎる溶岩のように熱を帯びていた。

 海歌は、俺のことを幼なじみではなく、一人の異性として見てくれているらしい……


 そんなことを色々と考えていたら、心臓が痛いぐらいにドキドキしてしまった。


「海ちゃんは、陸翔くんとどのくらい付き合ってるの?」


「まあ、ここ1か月ぐらい」


「おーイイね!1か月ってことは、もう手はつないだの?初めてのデートはした?」


「私と陸翔って、小学生からの幼なじみだから、手なんて何回も繋いだし、デートみたいなことも何回もしてるよ」


 俺の存在そっちのけで、海歌と空音、ミサキさんは恋バナで盛り上がっていた。


 今さら話に加わる勇気もなく、かといって今トイレに逃げ込むこともできず、究極的に気まずい……

 そんな地獄のような掃除の時間は終わり、担任の先生が来て、帰りの会が始まった。テスト終わりなので、午前中だけの授業だった。


(は、早く帰りたい……)


 コソコソと小声で話しているクラスメイトたちの声が、俺と海歌のことを話しているように聞こえてしまって、気が気でなかった。


 そのとき、カバンの中にしまっていたスマホが通知を受け取り、振動した。



―――チャット―――



海歌:このあと、うち来て


海歌:勉強教えてほしい


陸翔:いいよ。暇だし


海歌:さんきゅ


海歌:あと、空ちゃんも来るから


海歌:3人で勉強会みたいな感じになるかも


陸翔:わかった


陸翔:なんで俺と海歌のこと、空音さんに言っちゃうんだよ?


海歌:ほかの人を陸翔に寄せ付けないため


陸翔:ああ、そう・・・



―――――――――



 ということで、この後海歌の家に行くことになった。

 今回はなんと、空音も来るらしい。

 俺と空音が先生役をすれば、さすがに海歌の成績は上がるか……?


「またあとでね~海ちゃん、陸翔くん!」

「うん。またね」


 空音は海歌と俺に手を振って、一足先に教室を出た。

 海歌も、重い腰をあげて椅子から立ち上がった。


「今日も一緒に帰ろ、陸翔」

「あ、ああ、そうだな」


 そう言った海歌は、俺の隣を歩いて教室を出た。

 もはや、仲睦まじい関係をクラス中に見せつけているようなものだった。


 これって、幼なじみ?

 親友?



 それとも……

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