表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

プロゲーマー(?)海歌

 俺は一度家に戻ってから、荷物を整え、海歌の家に向かった。ワークや教科書もバッチリ持参して、夏休みの課題を少しでも進めておきたい。


 自宅から自転車を漕いで、海歌の住むアパートへ到着。

 

 いよいよ夏本番で、自転車に乗るのがツラい時期。汗をかいて、シャツがビショビショになってしまった。替えのシャツや汗拭きシートを持ってきておいてよかった。


「あ!陸翔くんだ!」


 そのとき、聞き覚えのある溌剌はつらつとした声が聞こえた。


 振り向くと、そこには、白いワンピース姿の空音がいた。ちょうど、タクシーから降りてきたところだった。


「やっほー、陸翔くん!」

「お、おう、空音さん。今日も暑いな」

「ね~なかなかオシャレ着できなくて、嫌になっちゃうよ!」


 俺と空音は、アパートの階段を上った。

 俺が先頭に立って、海歌の部屋のインターホンを押す。


「空いてるよー」


 部屋の中から海歌の低い声が聞こえた。

 俺と空音は「「お邪魔しまーす」」と声を揃えて入室した。

 部屋はクーラーが効いていて、ちょっと肌寒いくらいだった。


「お疲れ~」


 首もとにヘッドホンをかけた海歌が、部屋の奥からやってきた。


「やっほー、海ちゃん!今日は呼んでくれてありがとね!はい、これどーぞ!」


 空音は持参した紙袋を海歌に差し出した。


「なにこれ?」


「チョコクッキーだよ。駅前のお菓子屋さんで買ってきたんだ~みんなで食べよう!」


「これ、高いやつじゃなかったっけ?わざわざありがとう、空ちゃん」


 甘いもの好きの海歌は、ニヤリと笑いながら紙袋を受けとった。


 タクシーで来たり、オシャレなワンピースを着ていたり、お高めのチョコ菓子をお土産で買ってきたり……空音の一挙手一投足から【清楚なお嬢さま感】がにじみ出ていた。


「ごめん、海歌。俺、何にも買ってきてない……」

「いいよ、気にしないで」


 そう言って、海歌は部屋の奥へ。

 その後ろに空音が続いた。


 俺は一旦トイレを借りて、汗を拭き、着替えを済ませて部屋の奥へ。

 そこは、海歌がゲームをしたり、ベッドで寝たりする私用スペースだ。


「わお!これって、ゲーミングPCってやつ!?」

「うん。誕生日にママが買ってくれたんだ」

「すごい!ウチ、初めて見たかも!キーボードがピカピカ光ってる!」


 初めて見るゲーミングPCに、空音は大興奮。


 ラックの上に、ゴミ箱ほどの大きさのPC本体が載せられていて、ファンが勢いよく回っていた。その大きさ、画面の鮮やかさは、かなり高性能なパソコンと見える。


「最初は……まあ、出会い目的で始めたんだけど、けっこう上手いって気づいてからはガチ勢になったって感じ」


「ということは、海ちゃんはカレシを見つけるためにゲームを始めたってこと?」


「まあ、うん……」


「へぇ~イマドキだなぁ。ランクはいくつなの?」


「プラチナのB」


「ええ!?上位勢じゃん!将来プロゲーマーになれるんじゃない?」


「いやいや、プロは無理だって。私は、あくまでエンジョイ寄りだから」


「このゲーム、ウチもやってるよ!まだゴールドランクだけど、勉強の合間にコツコツやってるよ!【ゴミ麻呂】さんとか、【カメリア・佐紀音さきね】さんの動画、毎日見てる!」


「え、マジ?最推さいおしは誰?」


「【ゴミ麻呂】さん!雑談が面白いし、FPS全般が上手いし!」


「私も」


 海歌と空音はFPSゲーム好きという意外な共通点を見つけて、二人で盛り上がっていた。

 ふと、海歌がゲーム配信したら稼げるのではと思った。海歌、ゲーム上手いし、引きこもりで時間があるし、パソコンは高性能だし、あと、可愛いし。

 

 海歌は大きなゲーミングチェアに座り、ゲームの試合を始めた。


 俺と空音は、椅子の隣へ。

 試合の行方を固唾をのんで見守った。


 海歌は、巧みなマウスさばきを見せる。

 見事、遠くに見える米粒ほどの大きさの敵の頭を撃ち抜いた。


「よく見えるよな、あんな遠くの敵」


「まあ、慣れだよ。マップ覚えて、キャラの強みと武器の強み活かして、100試合ぐらいやれば、それなりに上手くなれる」


「俺はFPSやったことないから、イマイチ分からないなぁ……」


「陸翔は、普段何のゲームやってんの?」


「え、ああ、それは、えーと……最近は、美少女育成系のソシャゲかな」


「うお」


「冷笑するのやめてね」


「まあ、いいんじゃない。人それぞれ好きなゲームがあるだろうし」


 海歌に苦笑いされて、ひたすらに恥ずかしかった。

 空音に「ソシャゲって?」と聞かれて、さらに恥ずかしかった。


「ウチもやりたい!」


「ラックの一番下に、古いノートパソコンがあるから、それ使って」


「分かった!陸翔くんも、一試合ごとに交代でやろう!」


「ええ!?俺はいいよ。FPSやったことないし……」


「やってみたら意外とハマるかもよ?戦略性も問われるから、頭いい陸翔くんならきっと活躍できるよ!」


 クラス一番の天才である空音に「頭いい」と言われるなんて、おそれ多い……俺は、真面目な人間を演じるのが上手いだけだ。


 俺は、空音とノートパソコンを交代で使って、ひたすらゲームに夢中になった。歴戦の海歌がキャリーしてくれたので、負けなしの戦いばかり。

 空音も、日々の鬱憤や勉強の疲れを吹き飛ばすぐらい、ゲームにドハマりしていた。


 あっという間に時間が過ぎ去り、気がついたら、窓から見える空が茜色になっていて……


「なあ、海歌。俺と空音と勉強するために呼んでくれたんだろ?」


「え、そうだったけ?わかんない」


「勉強したくないからって、とぼけるな。せっかく教科書とかワークとか持ってきたから、みんなで勉強しようぜ」


「えー、ダルい」


 今回集まった本当の目的は、勉強するためだった。

 しかし、俺と空音を誘った当の海歌は、やる気ゼロ。

 ゲーミングチェアに深く座り、パソコンの画面に張り付いてSNSを見始めた。


「ウチらと一緒に頑張ろう、海ちゃん!ほら、今頑張っちゃえば、夏休みの課題も進むし、成績も上がるし、後でゲームできる時間も確保できるよ!」


 空音に腕をぐいーっと引っ張られた海歌は、渋々、パソコンの電源を切った。


 ゲームの後にやる勉強って、マジで面倒。

 順番を間違えたな……絶対、勉強してからゲームしたほうが良かった。



 ともあれ、俺と海歌と空音はゲームを中断して、勉強道具を揃え、3人でテーブルに座った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ