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海!!パート1

 夏休みに海に出かけた。

 ギラギラと輝く太陽の下、青い空と海がどこまでも広がっている。


「いやぁ、暑いな……」


 まだ海に入っていないのに、背中が汗でびしょ濡れだった。


 俺は、海パンを履いて、日焼け止めをたっぷり塗った上に、海歌に選んでもらったUVカット仕様のリネンシャツを羽織っている。日焼けはなんとか防げるだろうか。


 木の日陰でしばらく待っていると、水着に着替えた海歌と空音がやってきた。


「お待たせ~」

「どうかな陸翔くん? 今のウチら、最高にかわいいっしょ?」


 海歌は黒の水着の上に、フード付きのパーカーを羽織るスタイルだった。トップスとミニスカートの間から覗く腰のくびれとお腹がセクシーで、厚底のサンダルを履いているので脚が長く見える。

 紫外線カットのサングラスとスタイルの良さも相まって、海外のセレブのようだった。


 一方の空音は、海歌よりも露出が多いビキニスタイルで、フリルが付いた白の水着だった。


「いいね。最高に盛れてる!」


 俺は二人が並んで立つ写真をスマホにおさめた。


 さて、さっそく海に向かう。


 しかし……


「暑い、死ぬって……」

「暑くて干からびそう…動いてないのに暑いよ~…」


 熱された砂浜に行く手を阻まれる。

 まるで、熱されたフライパンの上を歩いているようだった。サンダルがないと火傷しそうだ。


 灼熱から逃れるように、俺たちは海の家に避難した。


 床も壁も天井も、すべて木材で組まれた海の家だった。

 店先では冷たいミストが流れていて、窓辺で色とりどりの風鈴が揺れ、周囲には南国風の木が植えられており、カウンターではかき氷やソフトクリームなどの冷たいものが売られている。


 まさに、五感で涼しさを感じられる場所だった。


「わあ、涼しい~♪」

「日陰で、風通しがよくて、景色も最高って良いこと尽くしだな」


 カウンターの裏からは、鉄板の上で焼けるソース焼きそばやフランクフルトの香りが漂ってくる。


 お昼ご飯は、この海の家で食べよう。


「私、ブルーハワイのかき氷で」

「ウチは抹茶アイス!あと、ラムネ!」


「はいはい、俺が買ってきますよ」


 俺たちは、海が見える窓際の席に座って、冷たいものを堪能した。

 空音はかき氷とジュースの写真を撮った。


「もうずっとここに居たい……」


 ブルーハワイ味のかき氷を食べる海歌の舌が、真っ青に染まっていた。


「海ちゃん、舌が真っ青だよ~」


 空音は面白がって、海歌の写真をパシャパシャ撮っている。


「せっかく海に来たのに、海の家の引きこもりになりそうだな」


「あと1時間ぐらいしたら雲が出てきて、北よりの風に変わるらしいよ。そうしたら、ちょっと涼しくなるんじゃない?」


 スマホで天気予報を調べる空音の言った通り、1時間ほど待っていると、太陽が雲に隠れた。

 水平線のあたりには、空高くにモクモクと育った入道雲が見える。実に夏らしい景色だ。


 そんな景色を楽しみながら海岸沿いの砂浜を歩く。

 鼻に、ツンと香る潮風が流れ込んでくる。


「見て見て!キレイな貝殻見つけたよ~」


 空音がピンク色に透き通った貝殻を発見。大きさは親指の爪ぐらいで、ガラス細工のような美しさだった。


「サクラ貝じゃん。あんまり見ない貝だから、空ちゃんラッキーだね」

「へぇ~レアものなんだね。お土産に持って帰ろ」


 拾った貝殻を、空音はティッシュに包み、プラスチック容器の中に入れた。集めた貝殻も、いい思い出になりそうだ。


 そんなことを考えていたら、突然、ビュンと強い風が吹いた。


 その風に乗って、麦わら帽子が飛ばされてきた。


「よっと!」


 腕を伸ばし、麦わら帽子を空中でキャッチした。


「お~」

「陸翔くん、ナイスキャッチ!」


 海歌と空音に拍手された。


「すみません……ありがとうございます」


 麦わら帽子の持ち主の女性が、砂浜に足を取られながら駆け寄ってきた。


 ポニーテールの形に結ばれた艶のある黒髪が印象的で、背丈は俺と同じぐらいだった。大学生ぐらいだろうか? スタイルは平均的だが、如何いかんせん、胸元の露出が多いビキニを着ていて、その豊かな双丘に目線を持っていかれた。


(おい陸翔!人と話すときは、相手の目を見るんだ!初対面の人の体をジロジロ見るなんて、失礼だぞ!)


 理性に怒られて、俺はその女性と目線を合わせ、麦わら帽子を手渡した。

 女性は柔らかな笑みを浮かべた。


「その、お礼と言っては何なんですが……今、お友達とバーベキューしているんですよ。もしよろしければ、お肉、食べていきませんか?」


「いえ、すみません……今日はカノジョと来ているので、遠慮させてもらいます」


「あ、カノジョさんと来てたんですね。失礼しました」


 女性は深々と頭を下げた。

 前を向くとき、再び胸がぽよんと揺れた。


「素敵ですね、夏にカノジョさんと海って。存分に、楽しんじゃってください」


「ええ。もう楽しんでますよ」


「それは良かった……それでは、私はこのへんで。どうも、ありがとうございました」


 女性は三度みたび頭を下げて、俺が手渡した麦わら帽子を被り、その場を去った。


 俺が戻ると、海歌と空音に拍手で迎えられた。


「遠くから見てたよ、陸翔」

「断り方がスマートでカッコいいね!」


 別に褒められることじゃないと思うが。


「まあ、今日は海歌と遊ぶために来たからな。――俺にとって海歌が一番だから」


 そんなことを言ったら、海歌の顔が赤くなる。

 耳元から鼻先まで、真っ赤だった。


「な、なに?急にそんなこと言いだして……」


「海ちゃん、顔真っ赤だよ〜」


「ん〜うるさい!」


 押しに弱い海歌を、空音がからかった。


「それはそうと、陸翔、あの女の人、スタイルいいなーとか思ってたでしょ! 私には分かる!目線が下に引っ張られてたもん」


「はい、思っていました!」


 嘘はつかないと海歌と約束したので、正直に言った。


「まあ、それが健全な男の子の反応なんだろうけど……む、ムカつく」


「だって、お互い正直に話すって約束しただろ?だから、思ったことを正直に言ったんだよ」


「そ、そうだった……やっぱり私のせいか……私が全部悪いんだ……」


 海歌は空をボーっと見上げる。


 一方の俺は、自分の発言を思い出して、顔が熱くなった。


――俺にとって海歌が一番だから


 まさか自分の口からそんな言葉が自然と飛び出すなんて思わなかった。


「陸翔くんのセリフ、カッコよかったね。海ちゃんがまた惚れちゃうよ~」

「うるせぇ……」


 俺の顔が赤くなっているのをわかっていて、発言を掘り返す空音。そんな空音につられて、俺も海歌も微笑んでいた。



 本当に、良い恋人と友人を持ったものだ。

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