ハルジオン
昔々あるところに一人の少年がいました。
その少年はお母さんにお使いを頼まれて街に買い物に向かうところだったのです。
しばらく歩き続けて、もう少しで街に入る所でどこからともなく、みゃ~みゃ~、とか細く震える声が降り注いできました。
一体なんなのだろう?
首をかしげた少年は疑問に思い、音がどこから聞こえてきているのか探し始めました。
どこだろう?
周りをさがしながら、ふと見上げてみたら、木の枝の上で震えている子猫がいたのです。
ああ、君が泣いていたんだね。今から助けるから待っててくれないか?
持っていた鞄を置いて、木を登り始めました。
一生懸命登り、子猫が震えている枝よりも一段低い枝にまで登れました。
あと少しで助けられる。
そう思って子猫の震えている枝に手をかけた時、大きく揺れた枝、ふるい落とされる子猫。
危ない!
足に力を目一杯込めて、飛びました。
指先に触れる柔らかい毛並み、手のひらで覆う柔らかさ、腕で抱え込んだ温もり。
子猫の身体が少年に抱き抱えました。
子猫は災難から逃れることができた、けれど変わりに少年へと悲劇が降りかかります。
飛び込んだ先は空中、選択肢などなく待ち受けているものは落下だけでした。
背中から地面へと打ち付けられる。
苦しくなる呼吸とともに、見えている景色が暗くなっていくのでした。
指先に何か暖かさを感じて目が覚めました。
ぼーっとしている頭で、その温もりを探してみたら、先ほど助けた子猫が、看病をしているみたいに、指を舐めていたのです。
無事だったんだね、よかった。
もう大丈夫だよ、と子猫の頭を撫でて感謝を伝えます。
ここは、どこなんだろう?
見たこのない部屋のベッドの上で寝かされていました。
聞こえてくる足音、開けられたドア、入ってくる少女。
それを見た瞬間、思わず走り出し、逃げ出してしまいました。
目が片方しかない!
少年の目にはそのように見えてしまったようです。
けれど本当は、入ってきた少女は眼帯をしていただけだったのです。
そして、その家から逃げ出してから思い出しました。
子猫は大丈夫かな、と。
子猫が心配になり、怖いけれど戻り、窓から部屋の中をこっそりと覗いてみると。そこにいたのは、子猫と楽しそうに戯れている少女の姿でした。
そしてその姿を見たときに、曇っていた頭が晴れて、ぽーっと暖かくなった気がしてきました。
もう一度会いたい、お礼を伝えたい。
どうしたいいのか考えて、走り出しました。
〝好きという気持ちが込められているお花だよ〟
お母さんが言っていたことを思い出して。
そのお花を求めて。
泥で服が汚れることも気にしないで、走って、走って、走ってようやく見つけました。
一輪だけを摘み取り、ドアを叩きます。
出てきたのは一つ眼の少女。
そして、ありがとう、という言葉とともに。
小さな白い花を渡すのでした。
好きという気持ちを込めて。




