クルークは、次に何をする?
「……子供たちは、寝たか……」
ぽつりと、祖父が呟いた。
「これだけ、はしゃげば、疲れて寝てしまいますよ」
父が笑う。
さっきまで庭で騒いでいた子供たちは、もう部屋で眠っている。
ブレイもワイズもそしてクルークも。
庭には、まだバーベキューの名残が残っていた。
「しかし……」
お祖父様が、焼き場を見る。
「このバーベキューとやらは、クルークが言い出したんだったな」
「確かに言っていましたな」
リヒトも頷く。
「これは、これで堅苦しくもなく、気取った貴族の食事会より楽しいな」
「……野営とも違いますからね」
父様が苦笑する。
「肉を自分たちで焼いて食べるだけなのに、あれほど楽しめるとは思いませんでした」
「しかし……」
お祖父様が腕を組む。
「どこから、こんな発想が出てくるんじゃ?」
「我が家の謎ですなぁ」
父が苦笑した。
二人とも、同じことを考えている。
クルークは、時々とんでもないことを思いつく。それは今に始まったことではない。
固形炭。炭の筆記具。椿油。石鹸。椎茸。蜂蜜。紙。そして、今回のバーベキュー。
「この焼肉のタレってのも……」
お祖父様が思い出したように言う。
「リヒト!」
「はい?」
「これもクルークの指示か?」
「そうですよ」
リヒトが答える。
「しかも、ここで揃う材料だけで作れると言われました」
「ほう……」
「私も驚きましたよ」
リヒトが笑う。
「まさか、あんな味のタレを作れると言われるとは思いませんでした」
お祖父様が少し考える。
「これも商品になりそうじゃ」
「……確かに」
父も頷く。
肉を焼いて食べるためのタレ。
しかも、家にある材料で作れる。
肉料理だけじゃない。野菜にも使える。
「商品として売れるかもしれませんな」
リヒトが言う。
「また一つ増えたか……」
父が遠い目をする。
その顔を見て、祖父が笑った。
「クルークは……これから何をするんだか」
「さあ……」
父も苦笑する。
「私にも分かりません」
「ふふふ」
祖父が楽しそうに笑う。
「わしは楽しみじゃ」
「そのお陰で、こちらは振り回されますが……」
「それも領主の仕事じゃろう」
「そういう問題ですかね?」
父が苦笑する。
祖父は空になりかけた酒を一口飲む。
「しかし、まだまだ何かをやってくれそうだな」
「……そうでしょうね」
父も庭を見る。
今日だけでも、新しい食事の方法と焼肉のタレが生まれた。クルーク本人にとっては、ただ楽しむためのバーベキューだったのかもしれない。
だがパンパ領にとっては、それすら新しい商品になる可能性がある。
「……本当に、次は何をするんでしょうな」
父が呟く。
誰も答えられなかった。
ただ一人。すでに眠っているクルークだけが――明日の朝には、また何かを思いついているのかもしれない。




