蜂の針を防ぐには
さて。蜂蜜を採るためには、防護服が必要だ。
蜂に刺されるのは嫌。でも、蜂蜜は欲しい。
ならば――
「まずは服よね」
私は考える。
普通の服では駄目だ。蜂の針が布を突き抜けてしまったら意味がない。
「厚めの布を使えばいいかな?」
分厚い布を何枚か重ねる。
これなら、そう簡単には針も届かないだろう。
少なくとも普通の服よりはマシだ。
「手袋と靴は……」
これは革でいい。厚めの革を使えば、こちらもかなり防げるはず。
問題は――
「顔」
ここが一番重要だ。蜂に顔を刺されたら大変だ。特に目。
「目を守らないと」
私は腕を組んで考える。
前世で見た養蜂家は、顔の前に網みたいなものがあった。あれを作ればいい。
……でも。
「どうやって?」
透明なものがあれば簡単だ。
例えば――
「透明なプラスチック!」
思いついた。そして。
「……そんな物ないじゃん」
この世界にはない。
残念。
「じゃあ、ガラス?」
ガラスならある。透明だし向こうも見える。
蜂も入ってこない。
「……」
私は少し考える。
「駄目ね」
ガラスは割れる。しかも私は――
「たまに転ぶし」
転んで顔をガラスにぶつけたら大惨事だ。
割れたガラスが顔に刺さる。
「却下!」
安全のための防護服で、大怪我するなんて本末転倒だ。
では、どうする?
「……」
私はしばらく考える。
そして、ふと思った。
「別に、透明じゃなくてもいいんじゃない?」
向こうが見えればいい。
蜂が入ってこなくて、こちらから蜂の位置が確認できればいい。
なら――
「網?」
細い棒……いや。
細い竹を使って、細かな隙間を作る。
あるいは細い糸や紐を組み合わせてもいい。
とにかく、蜂の針が届かなければいい。
「そうだ」
蜂の針は、網を抜けてくるほど長くない。
なら、顔から少し離れた場所に細かい網を張ればいい。
「顔に直接付けなければいいんだ」
これなら、多少網目が細かくなくても、距離を取れば安全性は上がる。
もちろん、蜂が入ってこない程度の細かさは必要だけど。
「うん。これなら作れそう」
私は頭の中で形を考える。
頭から被り、顔の前には網。
首の部分も隙間を作らない。
服の襟とつなげれば、蜂が中に入る隙間も減らせる。
「……意外といけるかも」
問題は材料。
「まずは材料集めからだね」
厚めの布。革。細い竹。
それから、網に使えそうな細い糸。
必要なら木の枠もいる。
「よし」
私は立ち上がった。
「材料を集めよう!」
蜂蜜を採るための防護服。
そのための材料集め。
また一つ、領地に新しい仕事が増えた。
……でも。
「蜂蜜のためだもの」
私は蜂巣箱の方を見る。
ぶんぶんと蜂が飛んでいる。
「待ってなさいよ」
今度は刺されずに近づいてやる。
そして――
「絶対、蜂蜜を採ってやる!」
蜂は何も知らず、今日も元気に飛び回っていた。




