まずは書類を揃えよう
数日後。
「完成した?」
私は木工師さんに作ってもらった版画を見ていた。
「はい。ご指定通りに」
「うむ」
紙に押してみる。
ペタッ。
「……」
いい感じで、文字もちゃんと読める。
項目も揃っている。
「これなら使えるわね」
何度か試し刷りをしてみる。
どれも同じ位置に同じ文字が並んでいる。
「うむ。これで基本書類は統一できたか?」
今までは必要になるたびに手書きしていた。
それが版画を使えば、同じ書類を何枚でも作れる。これは便利だ。
「受け入れ用の書類も問題なし」
こちらも試しに刷って確認する。
名前。年齢。性別。健康状態。前職。家族構成。その他、必要になりそうな項目。これなら、送られてくる人達の情報をまとめられる。
「よし」
私は大量に刷ってもらった書類をまとめる。
「これをお祖父様のところへ送ってもらおう」
第三集落で受け取ることになるのだから、先に書類を渡しておいた方がいい。
それに――
「私からの手紙も添えてっと」
私は便箋を取り出す。
お祖父様とは、まだ直接お会いしたことがない。お父様から話は聞いているけど、私自身はまだ会ったことがない。
だから、少しだけ緊張する。
「えーっと……」
何を書こうか。考えてから、ペンを走らせる。
今回購入した人達について、受け入れをお願いしたいこと。健康状態や年齢、家族構成などを確認してほしいこと。それから、確認した内容をこちらへ送ってほしいこと。
難しいことを書く必要はない。
まずは情報が欲しい。
「……これでいいかな」
手紙を書き終える。
読み返してみる。
うん。
私が何を知りたいのかは、ちゃんと書けている。
「まだお会いしたことはないけど……」
お祖父様は、お父様のお父様だ。
そして、このパンパ領を最初に開拓した人でもある。きっと、この手紙を読んでくれれば理解してくれるはず。
「よろしくお願いします、お祖父様」
私は手紙と書類をまとめて、お父様の机の上に。
「こちらをお祖父様のところへお願いします」
「分かった。渡しておく」
これで準備は終わり。
あとは――
「奴隷さん達が来るのを待つだけね」
私は椅子に座る。まだ、私には何も分からない。何人来るのか。どんな人達なのか。
どんな仕事をしていたのか。
病気の人はどれくらいいるのか。
家族はいるのか。
「書類が揃って、私が確認すれば……」
何か見えてくるはず。
そこから考えればいい。
最初から全部決める必要なんてない。
「まずは知ること」
私はそう呟いて、机の上を眺めた。
受け入れ用の書類。生産記録。在庫記録。
そして、まだ何に使うのか決まっていない新しい紙の束。
「……なんだか、書類が増えてきたわね」
領地が発展している証拠なのかもしれない。
でも――手書きじゃなくて、本当に良かった。
版画を眺めながら、私はしみじみと思った。
これを思いつかなかったら、今頃全部手書きしていた……考えただけで嫌になる。
「木工師さん、ありがとう」
あとは、お祖父様からの返事を待つだけだ。




