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転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者: 稔


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金貨八十枚の使い道

「クルーク?」


「はい?」


「どうした?」


父が不思議そうに私を見る。


「いえ。何でもありません」


「そうか?」


「はい!」


私は笑って答える。

さっきまで読んでいたカタログのことは――まだ話さない。


「それで、どうだ?」


「はい?」


「何かヒントはあったか?」


私は頷く。


「はい! 色々とありました!」


磁石。酸。それ以外にも、知らない商品がいくつも載っていた。これはかなり参考になりそうだ。


「出来れば、商人さんと直接お話ししたいのですが」


「それなら、もう少ししたら来るはずだ」


「本当ですか?」


「ああ。ちょうど次の商品について話す予定になっている」


「それは良かった!」


私は思わず笑う。


「買いたいものがあります!」


「おー。そうか、そうか」


父も嬉しそうだ。


「クルークには頑張ってもらっているからな」


「はい!」


「好きな物を買っていいぞ」


「ありがとうございます!」


よし!これで――言質は取った!


◇


それからしばらくして。


「領主様。今回は、何がご入用で?」


商人がやって来た。父が私を見る。


「娘が欲しい物があるそうだ」


「はい!」


私は元気よく手を挙げる。


「欲しい物は、まず!」


商人が少し身構える。


「酸と磁石を、それぞれ数十個」


「ほう……」


「それと、銅線を三束」


「…………」


商人が首を傾げる。


「随分と変わった物を……」


「まだあります!」


「まだ?」


私は続ける。


「それから――」


一度、商人の顔を見る。


「奴隷を」


「…………」


「病人、怪我人、お年寄り、子供」


「…………」


「もし家族もいるのであれば、家族ごと」


「…………」


そして――


「金貨八十枚分で、買えるだけお願いします!」


「え!?」


商人の目が見開かれる。


「えーーー!?」


思わず大声を出した。


「何でそんなに驚くんですか?」


「いやいやいや!」


商人が慌てる。


「お嬢様! 奴隷を買うのですか!?」


「はい!」


「しかも……病人、怪我人やお年寄り、子供!?」


「はい!」


「…………」


商人が固まる。そして、チラッと父を見る。


「…………」


もう一度、私を見る。


「…………」


また父を見る。


「…………」


父は黙っている。

商人は困ったような顔をする。


「よろしいのでしょうか……?」


「はい!」


私は即答する。


「父から許可をいただきました!」


「…………」


商人がまた父を見る。


「……ストラグル様?」


「うむ」


父は頷いた。


「娘が欲しいと言うのなら、買ってやってくれ」


「…………」


商人はしばらく黙っていた。そして、私は頭の中で計算する。今までの売上。これまでに売れた商品。新商品の売上。


「ふふふ……」


「クルーク?」


「何でもありません!」


売上は、だいたい金貨九十六枚くらい。

そして今後は――新商品も売り始める。

もっと売上は増えるはず。


なら。


「金貨八十枚使っても……」


「十六枚は残る!」


私はニヤリと笑う。


「十分でしょ!」


父が苦笑する。

商人は――まだ困惑していた。


「本当に……八十枚分、よろしいので?」


「はい!」


「かなりの人数になりますが……」


「構いません!」


「…………」


商人は少し考える。

そして、もう一度ストラグルを見る。


「……分かりました」


「ありがとうございます!」


私は頭を下げる。


「準備が出来次第、パンパ領へお願いします!」


「はい」


「まずは第三集落で引き受けます」


「第三集落ですか?」


「はい!」


私は頷く。


「そこから先は、状況を見ながら考えます!」


第三集落なら、お祖父様のところにも近い。

それに、いきなり領館へ大勢を連れてくるよりいい。まずはそこで受け入れてもらおう。


「よろしくお願いします!」


「……承知しました」


商人はまだ困惑した顔をしている。

それもそうだろう。普通なら、もっと働ける人を選ぶ。若者。体力のある人。技術を持った人。それなのに私は――


「病人、怪我人やお年寄り、子供を優先して買ってくれ」


と言ったのだから。

でも――私は知っている。この人たちは、カタログの中ではただの「商品」だった。


値段を付けられ。売れた者には赤いバツが付けられる。そして、売れ残った者もいる。


「…………」


私は拳を握る。

だったら。パンパ領に来ればいい。

働けるなら、働いてもらえばいい。

働けないなら――それでも、暮らせる場所くらいあってもいいよね。


私は小さく呟いた。


そして――新たな領民を迎えるための準備が、始まった。

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