カタログに載る人
「他には……」
私はカタログをめくっていく。
食器。衣類。金属。鉱石。液体。
色々な商品が載っている。
「ん?」
そして――
「…………!?」
ページの端に、見覚えのある文字があった。
「奴隷!?」
思わず声が出る。
「いやいやいや!」
私はカタログを持ち上げる。
「カタログに!?」
人が?人間がカタログに載ってるの!?
私は慌てて深呼吸する。
「ふぅ……」
落ち着け。落ち着け私。お父様から聞いた。
この世界の奴隷は、借金を返すための制度。
犯罪者ではない。勝手に人を連れ去って奴隷にするのも犯罪。なら――
「このカタログは……」
私はゆっくりページを開く。
ペラ。
「…………」
そこには、何人もの人について書かれていた。
「男性、十八歳」
その横に値段。
「金貨三枚……」
そして――
「…………」
そのページには、赤いバツ印が付いていた。
「これ……」
私は首を傾げる。
「売れたってこと?」
さらに見る。
「女性、二十八歳。金貨五枚」
こちらにも――赤いバツ。
「…………」
また売れたのか。私は次のページを見る。
「男性、三十二歳。銀貨二枚」
その横には――
「戦傷者……」
そして、この人には――
「バツがない」
売れていない。私はしばらく、そのページを見つめる。
「…………」
十八歳。二十八歳。三十二歳。年齢。性別。
値段。そして、状態まで書かれている。
まるで――
「商品……」
人間なのに。
「…………」
胸の奥が、嫌な感じになる。
もちろん、この世界では奴隷という制度が存在する。それ自体は、父から聞いた。
借金を返すための制度。契約によって成立する。頭では分かっている。
でも――実際にこうして、カタログに並んでいるのを見ると。
「…………チィッ」
思わず舌打ちが出た。
「やっぱ胸糞悪いわね……」
私はカタログを閉じる。
「ふぅ……」
深呼吸。落ち着け。これはこの世界の制度。
私が今すぐどうこうできる話じゃない。
それに――お祖父様が契約したという二百人。
もしかすると、その中にはこういう人たちもいたのかもしれない。
働けない。借金を返せない。買い手もつかない。そんな人たちを――お祖父様は、わざわざ引き取ったのかもしれない。
「…………」
私は閉じたカタログを見る。
そして、小さく呟いた。
「……やっぱり、お祖父様って良い人なのかも」
さっきまで浮かれていた気分は、完全に消えていた。でも――一つだけこの世界について、また知らなかったことを知った。
「……さて」
私はカタログをもう一度開く。
「今度は、ちゃんと全部読もう」
この世界には――まだまだ知らないことが多すぎる。




